私的評価
映画『市子』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
この映画はなんと言っても、主演の杉咲花さんの演技に尽きます。幼げな容姿の彼女ですが、この映画では幼少期に送った壮絶な過去を送った市子の人となりを、見ていて恐ろしささえ感じさせるほどに演じていました。
市子の行ってきた行為は決して正しいものではなく、あんなに嫌だった他人の名を語る生活に戻るという選択のため、また起こす許されない行為。しかし、そんな彼女にしてしまったのは決して彼女のせいではなく、選ぶことができない生まれ落ちた境遇なのです。観終わった後、いろいろと考えさせてくれる映画でした。
12月に公開された映画のようですが、強烈に夏を感じさせてくれます。
★★★★☆
作品概要
監督・原作戯曲は戸田彬弘。脚本は上村奈帆、戸田彬弘。
製作は亀山暢央。
主演は杉咲花、その他出演者に若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、宇野祥平、中村ゆりほか。
2023年12月8日に公開された日本の映画です。恋人と慎ましくも幸せな日々を送る市子は、恋人からのプロポーズを受けた翌日突如失踪、隠された市子の半生とは…。
作品の紹介・あらすじ
解説
劇団「チーズtheater」を主宰する戸田彬弘が、旗揚げ公演でもある舞台「川辺市子のために」を自ら映画化。プロポーズされた翌日に突如失踪した女性の壮絶な半生を描く。過酷な境遇に翻弄(ほんろう)されて生きてきた主人公を『湯を沸かすほどの熱い愛』などの杉咲花、彼女の行方を追う恋人を『街の上で』などの若葉竜也が演じるほか、森永悠希、倉悠貴、渡辺大知、宇野祥平らが共演。『書くが、まま』などの上村奈帆が戸田と共同で脚本を務め、戸田監督作『名前』などの茂野雅道が音楽を担当する。
あらすじ
3年間共に暮らしてきた恋人・長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズされた翌日、突如姿を消した川辺市子(杉咲花)。ぼうぜんとする義則の前に彼女を捜しているという刑事・後藤(宇野祥平)が現れ、信じ難い話を明かす。市子の行方を追って、義則は彼女と関わりのあった人々に話を聞くうち、彼女が名前や年齢を偽っていたことが明らかになっていく。さらに捜索を続ける義則は、市子が生きてきた壮絶な過去、そして衝撃的な事実を知る。
シネマトゥデイ
感想・その他
私が俳優・杉咲花さんの存在をはっきりと意識したのは、鈴木京香さん主演のテレビドラマ『夜行観覧車』でした。たしか、彼女が15、6歳の頃だったと思います。当時はまだ「これから出てくるかもしれない若手のひとり」といった印象でしたが、それでも何か光るものがあり、強く印象に残ったことを覚えています。ドラマの詳細なストーリーは、正直言って今となってはWikipediaを読んでも思い出せないほどなのですが──杉咲さんが演じていたのは、鈴木京香さん演じる主人公の娘役。家庭内での摩擦や学校でのいじめなど、複雑な感情を抱えた思春期の少女という、当時の彼女には難しいであろう役柄を、驚くほど自然に、そしてリアルに演じていたのが印象的でした。年齢に似つかわしくないほどの表現力と存在感に、「この子はただ者ではないかもしれない」と、密かに注目していました。
それからの彼女の活躍は、言わずもがな。着実にキャリアを積み重ね、数々のドラマや映画でその演技力を発揮し、今やNHKの朝ドラ主演を務める国民的女優へと成長しました。演技に対するひたむきな姿勢と、役ごとにまったく違う顔を見せる柔軟さは、もはや若手という枠を超えた“実力派”の域に達していると思います。
今回観た映画でも、杉咲花さんは曰くありげな過去を背負った、内に闇を抱えるような難しい役を演じていて、その演技の深さには改めて感心させられました。彼女の持つ独特の“影のある雰囲気”が、こうした役柄に実によくマッチしており、観る側の心を自然と引き込んでいきます。
とはいえ、個人的には、彼女が『99.9-刑事専門弁護士』で演じたような、ちょっと天然で、コミカルな動きや表情を見せるような役柄がとても好きです。真面目な中にもユーモアを忘れず、くるくると表情が変わるあの演技は、観ていて本当に楽しく、彼女の人柄の明るい面を垣間見るような気がして、自然と笑顔になってしまいます。
闇と光、シリアスとコミカル、弱さと強さ──そのどちらも演じ分けられる杉咲花という俳優は、まさに“変幻自在”の存在です。これからもさまざまなジャンルの作品で、彼女の新しい表情を見せてくれることを楽しみにしています。そして願わくば、またあの少しトボけた、でも芯の強いコミカルな役柄の彼女にも出会いたいと思うのです。
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