私的評価
WOWOWの連続ドラマ『片想い』を観ました。Amazonプライムビデオでの視聴です。
WOWOWのドラマはクオリティが高く、観ていてすごく面白い作品が多いと感じています。しかし、このドラマについては、いま一つ入り込めませんでした。扱っている題材が「性同一性障害」という難しい題材だったからでしょうか。そういう問題にも真摯に向き合って考えければいけないのでしょうが、やはりそういうことに実感が湧かないのです。
★★★☆☆
作品概要
監督は永田琴。原作は東野圭吾原作の『片想い』。
脚本は吉田紀子。
主演は中谷美紀、その他出演者には桐谷健太、国仲涼子、大谷亮平、鈴木浩介ほか。
2017年秋にWOWOWで放送されました。全6話。東野圭吾による“ジェンダー”を題材としたミステリー小説のドラマ化です。中谷美紀が“ジェンダー”という難しい役に挑戦します。
作品の紹介・あらすじ
あらすじ
スポーツライターの西脇哲朗(桐谷健太)は大学生時代に所属していたアメリカンフットボール部のマネジャー理沙子(国仲涼子)と結婚したが、夫婦仲はうまくいっていない。ある日、哲朗は早田幸弘(大谷亮平)、須貝誠(和田正人)ら男性チームメートと同窓会を開いた帰り、須貝と2人で忍び込んだ大学のグラウンドで部のマネジャーだった日浦美月(中谷美紀)に遭遇する。
異様な雰囲気を醸し出す美月の口からは「人を殺した」という衝撃の言葉が。さらに哲朗宅で美月は、哲朗、須貝、理沙子に対し自分が性同一性障害だと告白。男としてクラブでバーテンダーとして働く美月が、ホステスの佐伯香里(中村アン)につきまとう客を人目のない所で殺したというのだ。
最初は絶句した哲朗らだが、アメフト部の元部員で美月の元恋人、中尾功輔(鈴木浩介)も交え、美月を守ろうと決意する。そんな折、美月が失踪。哲朗は美月を捜すうちに、次々と苦悩に満ちた事実に直面する。
連続ドラマW
感想・その他
このドラマ『片想い』は、「性同一性障害(現在では性別違和とも呼ばれます)」という、非常に繊細で複雑なテーマを扱った作品です。自分のからだの性と心の性が一致しない――つまり、生まれ持った身体的な性別と、自分が自認している性別との間にズレがある人々の葛藤を描いています。今でこそこの概念は少しずつ社会に浸透しつつありますが、やはり“理解されにくい”という現実は残っており、そこに切り込んだこの作品はなかなか挑戦的だと感じました。その難しい役どころに挑んだのが中谷美紀さん。言わずと知れた演技派女優であり、知性と品格を備えた印象のある方です。聞くところによると、この役を演じるにあたり、役作りの一環として髪を短くカットし、体を絞るために筋トレまで行って臨んだそうです。その女優魂には頭が下がります。
ただ正直なところ、視聴者としての率直な印象を言えば、「どう見ても男には見えないな…」というのが本音です。やはり中谷美紀さん特有の柔らかな表情や繊細な佇まいがにじみ出ていて、どこまでいっても“中谷美紀”の存在感が強く、完全に男性の役柄に溶け込んでいたかというと疑問が残ります。劇中でも、周囲の人々が“なんとなく違和感を覚えている”という描写があるので、それを意図した演出かもしれませんが、視覚的な説得力という点ではやや苦しかったように思います。ただ、それでも視線や間合い、声のトーンなどで“男性であることを望む人物の苦悩”は確かに表現されており、やはり中谷さんの演技力は見どころのひとつです。ドラマなので多少のご都合主義はご愛敬ということで…。
もうひとり、強く印象に残ったのが桐谷健太さん。彼に関しては、やはりどうしても「auのCMで浦島太郎をやってる人」という印象が強すぎて、真面目な役を演じていても「どこかで笑いを取るんじゃないか?」とつい身構えてしまいます(笑)。それくらい、あのCMシリーズのインパクトはすごかったということなのでしょう。でも実際のところ、彼の演技には情熱と泥臭さがあり、このドラマでも“内に熱を秘めた男”をしっかりと演じていたと思います。ただ、やっぱり個人的には、どうしてもあのコミカルなイメージがチラついてしまう…。役者冥利に尽きるのか、はたまた呪縛なのか、難しいところですね。
そして最近やたらと見かけるようになったのが、大谷亮平さん。あの渋く整った顔立ちに髭、そして低くて落ち着いた声。テレビCMにも立て続けに出演しており、ここに来て一気にメジャー俳優の仲間入りを果たした感じです。今までなんとなく顔と名前が一致していなかったのですが、今回じっくりと彼の演技を見ることができ、「なるほど、これは人気出るわ」と納得しました。個性の強い顔ではないのに、画面に映ると目を引く。どこか安心感があり、理知的で、でも冷たくはない。まさに“品のあるイケメン”という言葉がぴったりです。
全体としてこの『片想い』は、重いテーマを真正面から描いた社会派ヒューマンドラマでありながら、キャスティングや演出がバランスよく仕上がっていて、最後まで見応えがありました。人の心の奥に潜む「違和感」や「孤独」を丁寧に描いており、一度観たらしばらく考えさせられるような、そんな余韻のある作品です。派手な展開を期待する人には物足りないかもしれませんが、“人間を見つめるドラマ”としてはかなり良作だと思います。
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