
ちょっと気になる町名——熱田区「夜寒町(よさむちょう)」。
初めてこの名前を目にしたとき、なんとも風情のある、少し物寂しくも詩的な響きだなと感じました。
「夜が寒い」と書いて「夜寒(よさむ)」、どこか秋の終わりや冬の入り口を思わせるような、静けさと切なさが漂う地名です。なんか、いい感じじゃありませんか。
実際にこのあたりを歩いてみると、その雰囲気に納得がいきます。熱田神宮の南方、住宅街の中にあるこの町は、地形的には緩やかな高台になっていて、「熱田台地」と呼ばれる場所にあたります。名古屋の平野部では珍しく、微妙な起伏がある地形で、古代から人が住みやすかったことが分かります。
特にこの熱田台地一帯では、弥生時代の住居跡や土器、石器といった遺物が数多く出土しており、まさに古代からの生活の痕跡が色濃く残る土地でもあります。熱田神宮が鎮座するあの荘厳な森も、この台地の上にあり、まさに名古屋における「聖なる高台」と言っても過言ではないでしょう。
そう考えると、この「夜寒町」という名前にも、単なる響き以上の意味が込められている気がしてきます。昔、夜寒の風が吹き抜けるこの高台に、人々が火を囲んで暮らしていたのかもしれません。あるいは、熱田の神域に隣接する場所として、静謐な夜を象徴するような意味があったのかもしれません。
いずれにせよ、「夜寒町」という地名には、土地の歴史と地形、そしてどこか情緒的な日本語の美しさが宿っているように思えてなりません。こういう名前に出会えるのも、歩いてこそ得られる小さな楽しみのひとつですね。
高倉の森の南部の高台で、地名発祥の年代は不明であるが、『類題若葉集』の「松岡や夜寒の里になれて住むつるは千歳を呼つぎのはま」、『堀川百首』の「袖交す人もなき身をいかんいせん夜寒の里あらし吹くなり」など古歌にすでに散見する。
この高台に立って遠く年魚市潟(あゆちがた)、呼続浜の眺望を賞したと伝えられる。
名古屋市:熱田区の地名

熱田神宮辺りで雨が落ちてきましたが、七里の渡し(宮宿)まで。
小雨が降ったり止んだりの程度で家まで帰れました。

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