宮内見著『トッケイは七度鳴く』を読んだ感想

2022年1月29日土曜日

小説 読書

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私的評価

宮内見著『トッケイは七度鳴く』をAmazonのPrime Readingで読みました。

まったく内容を気にせずに読み始めた一冊でした。きっかけは、本の帯に書かれていた「ラスト20ページの衝撃!!!」という言葉。その一文に惹かれ、思わず手に取ってしまったのです。まさか、慰安婦と日本兵との関係を描いた恋愛ミステリー小説だとは、予想もしていませんでした。

読み始めると、すぐに物語に引き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなりました。そして、帯に書かれていたとおり、ラスト20ページは本当に衝撃的。読み終えたときには、タイトルの『トッケイは七度鳴く』の意味にも深く納得できました。予想外の展開と余韻の残る結末に、心を揺さぶられた一冊でした。

★★★★☆

『トッケイは七度鳴く』とは

内容紹介
放送作家の誠太郎は、亡くなった祖父が戦時中のビルマで慰安婦の死に関与したと知る。真実を求めて奔走するが、見えざる力で歴史の闇に飲み込まれる…日韓問題の闇に迫る問題作!

著者紹介
宮内 見[ミヤウチ ミ]
本名:宮内基壮。1965年、神戸市長田区生まれ。同志社大学文学部卒。
放送作家の新野新(しんの・しん)に入門、見(み)と命名される。神戸のラジオ局・ラジオ関西で放送作家デビュー。テレビ朝日「スーパーJチャンネル」「ワイドスクランブル」など、情報系からバラエティまで、東京・大阪で4000本以上のテレビ・ラジオ番組の構成を担当。

紀伊國屋書店

感想・その他

この本の題名にもなっている「トッケイ」は、東南アジアに生息するヤモリの一種で、私が読み始めた当初に想像していた“鳥”ではありませんでした。私の頭の中では、「トッケイ」という響きから、どこか南国の派手な羽を持った鳥が浮かんでいたのですが、それはまったくの勘違い。実際には、トッケイは全長18~35cmにもなる比較的大型のヤモリで、その見た目も鳴き声もかなりインパクトのある生き物です。

この名前の由来がまた面白く、「トッケイ」という鳴き声にちなんで名づけられたとされています。特に「ケイ」という音の響きが「鶏(けい)」を連想させるせいか、私のようにニワトリ系の鳥を思い浮かべてしまう人もいるかもしれません。さらに、本書の中でも「トッケイって鶏じゃないの?」というような会話が後半に登場し、思わず苦笑い。地域によっては、このトッケイの鳴き声を7回連続で聞くと幸運が訪れるという言い伝えもあるようで、そういった要素が物語全体にほのかに幻想的な彩りを添えています。

さて、もう一人の主人公とも言えるのが、ビルマ戦線で戦った元日本兵、「神戸のべっさん」。彼が体験した「ミイトキーナの戦い」は、太平洋戦争の中でも極めて過酷な戦いのひとつとして知られています。相手は兵力・物資ともに圧倒的な連合国軍。その中で、日本軍は劣勢を強いられながらも約三か月間にわたって死闘を繰り広げました。

特に印象的だったのは、その撤退の描写。激しい雨季によって水かさを増したイラワジ川を、生き残った兵士たちがどうにかこうにか渡っていく場面です。ただでさえ過酷な戦闘の末に、自然環境という新たな敵が立ちはだかる。それは戦術や勇気だけではどうにもならない、まさに“生死の境”に立たされるような極限状態でした。

日本兵たちは、三か月ものあいだ“タコツボ”と呼ばれる、一人しか入れない小さな塹壕に身を潜め、雨や飢え、マラリアといった病とも闘いながら生き抜いていたといいます。その描写を読みながら、私はどうしても、海外ドラマ『バンド・オブ・ブラザーズ』の第7話「雪原の死闘」を思い出してしまいました。あの、ブリュレの森でアメリカ兵たちが雪と砲撃の中、極寒の塹壕でじっと耐え続けたシーン。あの時の緊張感と絶望感が、この本の描く“神戸のべっさん”の戦場体験ともどこか重なり、ページをめくる手がしばし止まってしまうほどでした。

戦争を描いた部分は非常にリアルで重いのですが、そこに“トッケイ”という不思議な存在が絡んでくることで、現実と幻想、記憶と神話のあわいを行き来するような独特の読後感がありました。読み進めるほどに、タイトルの意味が深まっていく、そんな一冊でした。



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1964年生まれ。糖尿病を患ってから、自転車と歩くことを趣味にしています。毎日クスリ飲んでます。

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