私的評価
映画『ギャング・オブ・アメリカ』を観ました。レンタルDVDでの鑑賞です。
題名に「ギャング」とあるので、物騒なシーンのオンパレードと思いきや、派手な演出はありません。実在の人物でギャングであり実業家のマイヤー・ランスキーの半生を、老いた主人公・マイヤー・ランスキーがインタビューを受ける形で映画は進みます。日本語吹き替えなのでちょっとしたニュアンスの違いもありそうですが、ランスキーの名言がいっぱい聞けます。実際にこのインタビューを基にした本が出版されたとしたら、かなりの名言集となっているはずで、男のバイブル本となっていたのではないでしょうか。
「この世界は白も黒もない、グレーの濃淡だ」
「自分をどう評価するか、大切な評価は一つしかない、愛する人の目に自分がどう映るかだ」
ギャングでもあるマイヤー・ランスキーですが、年間2500億ドルの経済効果、200万人の雇用を生み出した男でもあります。
★★★★☆
作品概要
監督・脚本・原案はエタン・ロッカウェイ。製作はロバート・オグデン・バーナム、エリック・ビンズ、リー・ブローダ、ジェフ・ホフマン。
主演はハーヴェイ・カイテル、その他出演者にサム・ワーシントン、アナソフィア・ロブ、ジャッキー・クルスほか。
2021年公開のアメリカのドラマ映画です。禁酒法時代から半世紀にわたりアメリカの暗黒街を支配し、実業家でもあったマイヤー・ランスキーの人生を描いた映画となります。
作品の紹介・あらすじ
解説
実在のマフィア、マイヤー・ランスキーの人生に迫ったクライムアクション。作家のインタビューを受ける老いたランスキーが、波瀾(はらん)万丈だった軌跡を語っていく。監督は『アンストッパブル』の製作総指揮を務めたエタン・ロッカウェイ。『バッドデイズ』などのハーヴェイ・カイテル、『ザ・ボディガード』などのサム・ワーシントン、『オーヴァーロード』などのジョン・マガロらが出演する。
あらすじ
1981年、マイアミ。作家のデヴィッド・ストーン(サム・ワーシントン)は、伝説のマフィアであるマイヤー・ランスキー(ハーヴェイ・カイテル)から「俺が生きているうちは、誰にも読ませるな」という条件と引き換えに伝記の執筆を許される。インタビューを進め、貧しい幼少時代や同じマフィアのラッキー・ルチアーノとの接点、暗殺者集団「マーダー・インク」結成などについて聞かされるデヴィッド。取材も終盤に差し掛かったころ、ランスキーの資産を捜査するFBIが彼に接近する。
シネマトゥデイ
感想・その他
この作品で、老年のギャング、マイヤー・ランスキーを演じていたのが、俳優ハーヴェイ・カイテルです。年老いたランスキーの内面にある孤独や葛藤を、静かに、しかし深く表現しており、とても渋くて印象的でした。カイテルの抑えた演技からは、キャリアを重ねた俳優ならではの重みと深みが感じられました。ハーヴェイ・カイテルについて少し調べてみると、過去にはロバート・デ・ニーロと数々の映画で共演していたことがわかりました。中でも、マーティン・スコセッシ監督の『ミーン・ストリート』ではカイテルが主演を務めていましたが、助演として出演したロバート・デ・ニーロの強烈な存在感に注目が集まり、彼はその作品をきっかけに一気にスターダムを駆け上がっていったようです。皮肉にも、主役のカイテルよりもデ・ニーロの方が注目されたというエピソードは、映画ファンの間でも有名です。
さらにカイテルは、名作『地獄の黙示録』の主役であるウィラード大尉役にも最初は抜擢されていたそうです。しかし、監督のフランシス・フォード・コッポラとの演技方針の違いや、制作会社との契約内容をめぐるトラブルなどが重なり、撮影開始からわずか数日で降板してしまったとのことです。この件をきっかけに、彼はしばらくハリウッドで干されてしまい、アメリカでの活動の場を失うこととなりました。
それでも彼は諦めず、活動の拠点をヨーロッパへと移します。そこでリドリー・スコット監督の『デュエリスト/決闘者』などに出演し、少しずつ俳優としての評価を取り戻していきました。そして1990年代に入ってからは、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』といった話題作に出演し、再びハリウッドでの存在感を取り戻すことになります。
ハーヴェイ・カイテルのキャリアは、順風満帆というよりも、むしろ幾度もの挫折と復活を経験した波乱に満ちたものでした。だからこそ、彼の演技にはどこか深い味わいやリアリティが感じられるのかもしれません。『ギャング・オブ・アメリカ』での彼の演技を観て、そのような歩みを知ると、より一層その存在が心に残るように思いました。
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