私的評価
NHKスペシャルドラマ『海の見える理髪店』を観ました。NHK BSプレミアムで2022年5月9日午後9時より放送されました。
ドラマの大部分は、柄本明さんと藤原季節さん二人が理髪店の中で語らう場面です。その合間合間に、理髪店店主の過去の語らいが映像として流れます。ちょっと若い時の役を演じるズラを被る柄本明さんには、ちょっと違和感を感じませしたが、その演技には確かなものをヒシヒトと感じました。
原作は直木賞作家・荻原浩による同名小説で、人生の終盤に差し掛かった理容師と、ある秘密を抱えて髪を切りに訪れた青年との、静かで深い対話が描かれる感動作です。セリフの一つひとつに重みがあり、余白の多い演出が心に沁みる、まさに“NHKらしい”作品でした。
★★★★☆
作品概要
原作は荻原浩の連作短編集。脚本は安達奈緒子。
制作統括は、後藤高久(NHKエンタープライズ)、訓覇圭(NHK)、榎本美華(東映)。
出演は柄本明、藤原季節、尾上寛之、片岡礼子、眞島秀和、水野美紀ほか。
海辺の小さな理髪店に訪れた若者。理髪店の老店主は調髪に取り掛かり、自らの人生を話し始めます。家業の床屋を10才から手伝い始めたことや、初めて髪を切る仕事は兵隊に行く常連客の丸刈りだったこと、順調だった継いだ店が傾き酒におぼれたこと、妻に暴力をふるって離婚されたことなど。そして店主は突然、「人を殺めたことがある」と告白をする…。
作品の紹介・あらすじ
海辺の理髪店に若い男が訪れた。「髪型はお任せします」というオーダーに老店主は嬉しそうに調髪に取り掛かり、問わず語りに自分の人生を語り出す。家業の床屋を10才から手伝い、初めて任された仕事は出兵する常連客をバリカンで丸刈りしたことだった。昭和30年代には順調だった店が傾き、店主は酒に溺れ、最初の妻に暴力をふるって離婚されたことも。そんな取り留めのない話をしながら、店主は見事な手さばきで調髪を続ける。だが突然、「人を殺めたことがある」と青年に告白する…。
――なぜ、青年は海辺の理髪店を訪れたのか?
――なぜ、老店主は自分の人生を語り始めるのか?
老店主の70年分の回想が織りなす奇妙なサスペンスから目が離せないまま、急転直下のラストでささやかな日常の謎が解けていく!
NHKドラマ
感想・その他
理髪店に訪れる謎めいた青年を演じていたのが、藤原季節(ふじわら・きせつ)という俳優さん。画面越しに彼の演技を見ていて、「どこかで見たことがあるような…でも思い出せない」とずっと引っかかっていたのですが、後で調べてみて納得。彼はこれまでにも『沈黙 -サイレンス-』(マーティン・スコセッシ監督の大作)や、『関ケ原』(原田眞人監督による歴史劇)、そして認知症をテーマにした感動作『長いお別れ』などに出演していたんですね。いずれも私が観たことのある作品ばかりでしたが、当時はまだ脇役や若手の一人としての印象だったのかもしれません。
ドラマの方では、NHK大河ドラマ『青天を衝け』にも出演していたようで、多分そのあたりで「どこかで見たような」感覚が残っていたのだと思います。画面に映る姿はどこか影を感じさせながらも繊細で、内面を静かに滲ませる演技が印象的でした。こういう役を自然に演じられる俳優さんって、なかなかいないものです。
勝手に20代前半くらいかと思っていたのですが、実際は29歳(2022年5月現在)。想像よりも少し上でしたが、それでもまだまだ“若手”と言える年齢で、これから脂が乗ってくる俳優さんだと思います。
Wikipediaで調べてみると、まだ「来歴・人物」の欄はあまり充実しておらず、出演作のリストも多いとは言えない状態。でも、それだけこれからが楽しみな存在ということでしょう。これからもっともっと経験を重ねて、静かに記憶に残る名優へと育っていくのではないか…そんな期待を抱かせてくれる役者さんでした。
また別の作品で彼の姿を見かけたとき、今回のこの青年の面影がふとよみがえる、そんな予感がしています。
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