私的評価
Amazonプライムオリジナルドラマ『ジャック リーチャー ~正義のアウトロー~』シーズン1を観ました。シーズン1は全8話、Amazonプライムビデオでの視聴です。
Amazonプライム・オリジナルドラマのファンとしては、新作が配信されるたびにかなりの期待を抱いてしまいます。今回も、待望の新作ということで、ワクワクしながら再生ボタンを押しました。Amazon制作というだけで「きっと面白いに違いない」と思わせてくれるブランド力があるからこそ、期待値も自然と高まってしまうんですよね。
ところが、いざ観始めてみると、どうにも最初から引っかかりを覚えたのが、主人公ジャック・リーチャーを演じるアラン・リッチソンの存在でした。とにかく体がデカすぎる。もちろん原作設定である「筋骨隆々の巨漢」に寄せた役作りなのは理解できますが、あまりに“筋肉推し”が強すぎて、逆に人間味や知性を感じにくい印象になってしまっているんです。正直なところ、感情移入しにくいキャラクターに映ってしまいました。
特に気になったのは、セリフの言い回しや演技のトーン。私が観たのは吹替え版だったのですが、これがまたセリフ回しがやや大仰で、陳腐に感じられてしまったのも残念なポイントでした。「そんな台詞、今どき言わないでしょ」と思ってしまうような場面もいくつかあり、せっかくの緊張感が台無しに。ひょっとすると、字幕で観ればもう少し違う印象だったのかもしれませんが、それにしても演出や脚本の“臭さ”は否めませんでした。
ストーリー自体も、ハラハラ・ドキドキするようなスリルをあまり感じられなかったのが正直な感想です。敵に囲まれたり、窮地に追い詰められたりする場面は確かに用意されているのですが、どうも緊張感が持続しない。その理由のひとつとして、主人公のリーチャーがあまりにも“無敵すぎる”という点が大きいと思います。肉体的にも精神的にも圧倒的に強く、敵をバッタバッタとなぎ倒していく様は爽快感こそあるものの、「この人、本当にピンチになることあるの?」という気持ちになってしまい、物語における緊迫感や高揚感がどうしても薄れてしまうのです。
もちろん、ヒーロー然とした主人公が活躍する作品というのは、それはそれで魅力があるのですが、やはり観る側としては「危機」や「葛藤」もある程度は必要だと思います。そうした人間味や弱さを見せる場面がほとんどないために、どこか淡々とした印象で終わってしまいました。
Amazonプライムには、これまで『ボッシュ』や『ジャック・ライアン』のような良作も多かっただけに、今回は少し物足りなさを感じてしまったのが率直なところです。次回作があるなら、もう少し人物像に奥行きがあり、物語にも緩急のある構成を期待したいですね。
★★★☆☆
作品概要
監督はリン・オーディング。原作はリー・チャイルドの小説シリーズ『キリング・フロアー』。
製作総指揮はリー・チャイルド、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソンほか。
製作はスカイダンス・テレビジョン、Amazonスタジオほか。
出演はアラン・リッチソン、マルコルム・グッドウィン、ウィラ・フィッツジェラルド、ブルース・マッギルほか。
2022年2月よりAmazonプライムビデオで配信された、アメリカの犯罪スリラードラマです。配信後すぐにシーズン2の製作が発表されました。元アメリカ陸軍憲兵隊捜査官で、鍛えあげられた肉体と類まれなる捜査能力を発揮するジャック・リーチャーの活躍を描きます。
作品の紹介・あらすじ
元陸軍捜査官で放浪者のジャック・リーチャーはアトランタ州の小さな町マーグレイヴを訪れ、殺人事件に巻き込まれる。国土安全保障省に勤めていた兄のジョーを始めとする多くの人が殺され、ベネズエラのギャングと町の実業者が組んだ大規模な偽札事件が背景にあることを知る。町長と警察、さらにFBIを含めた腐敗を知り、清廉な警官であるフィンリーとロスコ―を仲間にして、偽札の製造工場を壊滅させて殺人犯たちを皆殺しにしたのち、町を去る。
Wikipedia(ジャック・リーチャー -正義のアウトロー-)
感想・その他
筋肉ムキムキで、見るからにパワー系。そんな第一印象から、正直なところ「まるで知性を感じさせない筋肉野郎だなあ」と思ってしまい、思わず主役のアラン・リッチソンを木偶の坊(でくのぼう)呼ばわりしてしまいました。無骨で感情の乏しい表情、そして何よりもその圧倒的な体格が、スマートさや知性とは無縁に思えたのです。しかし、気になって後から調べてみると、痩せていた頃のアラン・リッチソンの写真がいくつか見つかりました。これがなかなかのイケメン。鍛え上げた現在の姿とはまるで別人のようで、シャープな顔立ちとスタイリッシュな佇まいには、思わず「おっ」と唸ってしまいました。特にアイキャッチ画像の彼と並べて見比べてみると、その差は歴然。やはり「人は見た目だけで判断してはいけない」と改めて思い知らされました。

もっとも、今回彼が演じているジャック・リーチャーというキャラクターは、原作の設定でも筋肉隆々で身長190cm超の巨漢。まさに「歩く戦車」のような存在だそうで、それに合わせて身体を作り上げたアランの努力と覚悟は、相当なものだったと思います。役に真摯に向き合い、徹底して肉体を作り込む姿勢には、俳優としてのプロ意識を感じますし、彼なりのリーチャー像を体現しようとした意気込みが伝わってきました。
ただ、やはりその大柄さゆえに、動きがどこかぎこちなく、特にアクションシーンではまるでロボコップのような「ドタドタ感」が否めません。もっとスムーズでスピーディな動きを期待していた分、少々物足りなさを感じたのも正直なところです。
一方、他のキャストにも目を引く俳優が登場しています。個人的に驚いたのは、悪役の町長を演じていたブルース・マッギル。『リゾーリ&アイルズ ヒロインたちの捜査線』でコーサック刑事役を演じていた彼です。あのときは温厚で包容力のある「良き相棒」といった雰囲気のキャラクターでしたが、今作ではまったくの真逆。狡猾で欲深く、冷徹な権力者という設定で、まるで別人のような悪人面になっていて、思わず二度見してしまいました。役柄によってここまで印象を変える演技力には感心せざるを得ません。
全体として、作品自体は骨太なサスペンスとアクションが楽しめる構成で、好みは分かれるかもしれませんが、ハードボイルドな世界観が好きな人には刺さる内容だったと思います。アラン・リッチソンの肉体派リーチャー像が今後どう深化していくのか、続編があるならぜひ期待したいところです。
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