私的評価
眞邊明人著『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を図書館で借りて読みました。新聞の広告記事で本作を知り、興味を持ってすぐに図書館で予約しました。かなり期待を込めて読み始めたのですが、最初の方はその期待に十分応えてくれる面白さでした。特に前半部分では、歴史上の有名な人物たちが現代の日本で活躍する様子が痛快に描かれていて、引き込まれました。
しかし、読み進めて後半に入ると、急にミステリー要素が加わり、私の好みから少し外れてしまったため、面白さが半減してしまいました。ミステリーとしての展開は興味深いものの、私はもっと歴史上の人物たちが活躍し、行き詰まった日本を再生していくドラマを期待していただけに、少し残念に感じました。
本書は「ビジネス小説」として紹介されていますが、私の感想では、どちらかと言えばエンターテインメント色の強い空想小説だと感じました。歴史の偉人たちが現代にタイムスリップして活躍するという設定は、歴史や政治に興味がある読者にとっては楽しめる要素ですが、ストーリーの軸がビジネスや政策に集中していないため、やや方向性が曖昧に感じられました。
総じて、歴史ファンや空想小説好きには一定の魅力がある作品だと思いますが、私としては後半の展開にもう少し工夫があれば、さらに満足度が高かったのではないかと思います。
★★★☆☆
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』とは
出版社はサンマーク出版、発売日は2021年3月。内容紹介
2020年。新型コロナの初期対応を誤った日本の首都官邸でクラスターが発生。あろうことか総理が感染し、死亡する。かつてないほどの混乱の極みに陥った日本政府はかねてから画策していたAIとホログラムにより偉人たちを復活させ、最強内閣をつくる計画を実行する。徳川家康を筆頭に日本の歴史に名を刻む錚々たるメンバーで構成された最強内閣は、迅速な意思決定で、日本初のロックダウン、50万円給付金、リモート万博など、大胆な政策を次々と実行していく。最初は「過去の人間に政治ができるのか」と半信半疑だった国民も、偉人たちのえげつない決断力と実行力に次第に歓喜し、酔いしれていくが―。果たして最強内閣は、日本を救えるのか!?そして、この国のリーダーに相応しいのは誰なのか!?ビジネス、歴史、政治、ミステリー、あらゆるジャンルと時代の垣根を超えた教養溢れる新感覚エンターテインメント!
著者紹介
眞邊明人[マナベ アキヒト]
1968年生まれ。同志社大学文学部卒。大日本印刷、吉本興業を経て独立。独自のコミュニケーションスキルを開発・体系化し、政治家のスピーチ指導や、一部上場企業を中心に年間100本近くのビジネス研修、組織改革プロジェクトに携わる。研修でのビジネスケーススタディを歴史の事象に喩えた話が人気を博す。尊敬する作家は柴田錬三郎。2019年7月には日テレHRアカデミアの理事に就任。また、演出家としてテレビ番組のプロデュースの他、最近では演劇、ロック、ダンス、プロレスを融合した「魔界」の脚本、総合演出をつとめる。
紀伊國屋書店
感想・その他
本書の前半、第1部「最強内閣、始動。」では、誰もが知る歴史上の偉人たちが現代に蘇り、それぞれの特技や個性を活かして現代の政治の場で“腕を振るう”という設定になっています。登場人物たちは、適材適所で活躍し、その描写は頼もしく、読んでいて非常に痛快でした。歴史上の人物が現代の課題に挑む様子は、なかなか新鮮で楽しく読めました。しかし一方で、登場する歴史上の人物たちのキャラクターは、これまで我々が一般的に知っている人物像とほとんど変わり映えしない印象を受けました。つまり、作者の推察や想像によって大胆にキャラクターを再構築し、「なるほど、そう来たか!」と読者を驚かせるような意外性や突飛な人物像があまり描かれていなかったのです。
もしも、歴史的なイメージに縛られず、もっと自由な発想で“もしも”の人物像を大胆に描いていれば、さらに読み応えが増し、読み物としての面白さも格段にアップしたのではないかと思います。例えば、徳川家康が現代の政治家としてどんな独自の手腕を発揮するのか、普段語られない性格の裏側や意外な一面などが描かれていたら、もっと魅力的な作品になったのではないでしょうか。
とはいえ、歴史上の偉人たちの個性が現代の政治に絡んで動くという設定自体はとても面白く、政治や歴史に興味がある人にとっては楽しめる要素が多い作品だと思います。今後、続編や関連作品でさらにキャラクターの深掘りや意外な設定が加われば、一層魅力的になることでしょう。
必要に応じて、作品の概要や具体的な登場人物についての解説も加えられます。お気軽にご依頼ください。
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