私的評価
池井戸潤著『BT’63』を図書館で借りて読みました。前回読んだ『百年の時効』(伏尾美紀著)もなかなかのボリュームでしたが、今回はそれを上回る600ページ超えの大作。普段のように平日のスキマ時間、1日30分ほどの読書ではとても読み切れる分量ではありません。ですが今回はゴールデンウィークの休みがあったおかげで、思い切ってまとまった時間を確保し、ほぼ丸一日かけて一気に読み終えました。
読み始めてすぐに物語に引き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなる感覚。先が気になって仕方がなく、「もう少しだけ」と思いながら読み進めているうちに、気がつけば最後まで走り切っていました。それだけのめり込める面白さがあり、読後の満足感もなかなかのものでした。
池井戸作品はこれで2作目。これまでに読んだのは『仇敵』で、こちらはいわゆる“池井戸作品らしさ”を強く感じる一冊でした。一方で本作『BT’63』は、これまで映画やドラマで触れてきた作品のイメージとも異なり、かなり毛色の違う印象です。同じ作家でもここまで作風が変わるのかと、少し驚かされました。
★★★★☆
『BT’63』とは
概要
著者の池井戸が「いつも心の中にある大切な小説です」と語る、1963年と2000年の世界を行き来する父と息子をめぐる感動長編。
『小説トリッパー』(朝日新聞出版)2000年夏季号から2001年春季号まで連載され、大幅な加筆のうえ2003年6月13日に同社より単行本が刊行された。2006年06月15日に上下巻に分冊のうえ講談社文庫版が刊行され、2023年5月16日には講談社文庫の新装版が刊行された。
2025年3月28日には講談社文庫新装版を底本としてハーパーコリンズ・ジャパンから単行本再刊された。
タイトルのBTは文庫本の表紙では「Bonnet Truck」のルビがふられ、文庫本新装版公式ページでは「Back To」の略称であることが示唆される作品解説がなされている(Back To 1963)。
wikipedia
内容紹介
東京オリンピック前夜の1963年。羽田空港近くの運送会社でトラック運転手たちが相次ぎ惨たらしい死を遂げる。彼らは皆「BT21号」と呼ばれるトラックに乗車していた―父の遺品に紛れていた古い鍵をきっかけに40年前の“呪われたトラック”の真相を調べ始めた息子は、高度成長期に隠された深く昏い闇の中で、想像を絶する真実に辿り着くが…。昭和の闇を抉ったミステリーが豪華ハードカバーで復刊!
著者紹介
池井戸潤[イケイドジュン]
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。1998年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、2011年『下町ロケット』で直木三十五賞、2020年野間出版文化賞、2023年『ハヤブサ消防団』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) ※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
紀伊國屋書店
感想・その他
作品中で何度も出てくる「デコンプレバーを引け」という言葉。これ、私はすぐにピンときました。というのも、昔スズキのオフロードバイクDR250SHに乗っていたからです。このバイク、今どきのようにセルモーターが付いておらず、エンジンの始動はキックのみ。特に大排気量の4ストロークエンジンになると、キックアームを踏み下ろすのにかなりの力が必要で、下手をすると強烈な反発をくらって足を痛めることもありました。いわゆる「ケッチンをくらう」というやつです。
そこで活躍するのがデコンプレバー。これを引くことで、エンジンの圧縮を一時的に抜き、踏み込み時の重さを和らげてくれる仕組みです。具体的には圧縮行程で排気バルブをわずかに開き、シリンダー内の圧力を逃がすことで、キックの負担を軽減してくれます。
DR250にも(確かクラッチ側だったと思いますが)このレバーが付いていて、始動時には毎回お世話になっていました。当時はそんな仕組みのことなどまったく知らず、ただ「こういうものだから」と当たり前のように使っていただけでしたが、今回あらためて意味を知って妙に納得。こうして昔の記憶と結びつく瞬間というのは、ちょっと嬉しいものですね。
正直なところ、今となってはほとんど使うことのない知識ではありますが、こういう小さな発見があるのも読書の面白さだと感じました。

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