私的評価
伏尾美紀著『百年の時効』を図書館で借りて読みました。500ページを超える分厚い小説で、ページの隅々まで文字がぎっしり。手に取った瞬間から「これは読み応えがありそうだ」と感じました。普段は会社の昼休みの30分を読書タイムにしているのですが、このボリュームでは返却期限の2週間(実質10日)では到底読み切れないと悟り、思い切って休日に自宅へ持ち帰りました。休みの日を利用して一気に3分の2ほど読み進め、ようやく完読。久しぶりに「読破した」と言える体験でした。
物語は、昭和・平成・令和という三つの時代をまたいでひとつの事件を追う警察官たちの執念と奮闘を描いています。世代を超えて引き継がれる正義と想い、それぞれの時代背景の描写がリアルで、最初の数ページからぐっと引き込まれました。重厚でありながらテンポよく展開するストーリーで、読み終えたあともしばらく余韻が残る一冊です。
★★★★★
『今日未明』とは
出版社内容情報
刑事たちの昭和は終わらない。
真犯人が見つかる、その日まで。
1974年に起きた一家惨殺事件。
未解決のまま50年――。
アパートで見つかった、一体の死体によって事件の針は再び動き出す。
嵐の夜、夫婦とその娘が殺された。現場には四人の実行犯がいたとされるが、捕まったのは、たった一人。策略、テロ、宗教問題……警察は犯人グループを追い詰めながらも、罠や時代的な要因に阻まれて、決定的な証拠を掴み切れずにいた。50年後、この事件の容疑者の一人が、変死体で発見される。
現場に臨場した藤森菜摘は、半世紀にも及ぶ捜査資料を託されることに。上層部から許された捜査期間は一年。真相解明に足りない最後の一ピースとは何か? 刑事たちの矜持を賭けた、最終捜査の行方は――。
感動、スリル、どんでん返し……。エンタメの妙味が全て詰まった、超ド級の警察サスペンス
内容紹介
嵐の夜、夫婦とその娘が殺された。現場には四人の実行犯がいたと思われるが、捕まったのは、たった一人。謀略、テロ、宗教問題…警察は犯人グループを追い詰めながらも、罠や時代的な要因に阻まれて、決定的な証拠を掴み切れずにいた。五十年後、この事件の容疑者の一人が、変死体で発見される。現場に臨場した藤森菜摘は、半世紀にも及ぶ捜査資料を託されることに。上層部から許された捜査期間は一年。二〇二五年、昭和が始まって百年にあたるこの年までに犯人を捕らえることはできるのか?真相解明に足りない最後の一ピースとは何か?頭脳派の鑑識志望、敵の多いマル暴、閑職に追いやられた捜査員、新米の女性刑事。昭和、平成、令和。四人の警察官が三つの時代で捜査を繋ぎ、一つの真実を追い求める。
著者紹介
伏尾美紀[フシオミキ]
1967年北海道生まれ。2021年、第67回江戸川乱歩賞受賞作『北緯43度のコールドケース』(受賞時タイトル「センパーファイ―常に忠誠を―」)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
紀伊國屋書店
感想・その他
百年の時効は、伏尾美紀による警察小説で、昭和・平成・令和という三つの時代をまたぎながら、一つの事件の真相を丹念に追いかけていく作品です。単なる未解決事件の再捜査にとどまらず、時代ごとに異なる刑事たちが登場し、それぞれの価値観と捜査手法で“捜査のバトン”を受け継いでいく点が大きな魅力となっています。昭和の刑事は地道な聞き込みや足で稼ぐ捜査を重視し、平成では社会情勢や人間関係の変化が事件の輪郭に影響を与え、そして令和に至ってはDNA鑑定などの科学捜査が新たな光を当てていきます。時代の移り変わりとともに、同じ事件でありながら見え方が少しずつ変化していく構成は非常に巧みで、読者に多角的な視点を与えてくれます。
さらに本作では、事件の背後に戦後の混乱期や社会の変遷が色濃く絡み合っており、単なるミステリーの枠を超えた重厚な人間ドラマが描かれています。時間の経過とともに埋もれていった真実や感情が少しずつ掘り起こされていく過程は、まるで歴史の断層を丁寧に読み解いていくような読み応えがあります。
読み進めるほどに過去と現在が有機的につながり、点と点が線へと変わっていく感覚が生まれます。終盤に向けて明らかになる真相は深い余韻を残し、ページをめくる手が止まらなくなる一冊です。ミステリーとしての面白さはもちろん、人の生きた時間そのものに思いを巡らせたくなる作品といえるでしょう。

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