私的評価
リーアム・ニーソン主演、映画『プロフェッショナル』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
既視感のあるストーリーで、アクションは控えめ。どちらかといえば、重厚な人間ドラマでした。
近年のリーアム・ニーソンといえば、「現役を引退し、静かに暮らす凄腕の殺し屋」といった役どころが定番ですが、この作品も例に漏れず、まさにそのパターンです。 1970年代の雰囲気を漂わせる街並みや衣装、車などの演出は非常に雰囲気があり、アイルランドの海辺の田舎町の荒涼とした風景が哀愁を感じさせ、物語の内容ともよくマッチしていました。
原題は「In the Land of Saints and Sinners」。直訳すると「聖人と罪人の土地で」となり、作品の世界観を端的に表しています。
★★★☆☆
作品概要
監督はロバート・ロレンツ。脚本はテリー・ローン、マーク・マイケル・マクナリー。
製作はフィリップ・リー、マーカス・バーメットラーほか。 主演はリーアム・ニーソン、その他出演者にはケリー・コンドン、ジャック・グリーソン、キアラン・ハインズ、デズモンド・イーストウッドほか。
2024年製作のアイルランドのアクション映画です。1970年代の北アイルランドが舞台で、過去を捨て去りたいと願う暗殺者フィンバー・マーフィーは、正体を隠して田舎町で静かに暮らしていた。しかし、引退を決意した矢先、凄惨な爆破事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派が町に逃げ込んでくる。ある出来事がきっかけで、そのメンバーの一人をを殺害してしまうフィンバー。そして、過激派に追われることになったフィンバーは最後の戦いに・・・。
作品の紹介・あらすじ
解説
『バッド・デイ・ドライブ』などのリーアム・ニーソンが主演を務めるアクション。殺し屋の過去を隠して暮らす男が、ある少女を虐待から救ったことをきっかけにアイルランド共和軍の過激派グループと戦うことになる。監督は『マークスマン』でもニーソンと組んだロバート・ロレンツ。『イニシェリン島の精霊』などのケリー・コンドン、ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのジャック・グリーソン、『聖なる証』などのキアラン・ハインズのほか、デズモンド・イーストウッド、コルム・ミーニイらが出演する。
あらすじ
1970年代の北アイルランド。暗殺者だったフィンバー・マーフィー(リーアム・ニーソン)は、その過去を隠しながら、海辺の田舎町グレン・コルム・キルでひっそりと暮らしていた。そこへ、ベルファストで爆破事件を起こして逃走するアイルランド共和軍(IRA)の過激派グループがやってくる。グループの一人が町の少女を虐待したことを知ったマーフィーは、加害者を打ちのめして少女を救う。過激派グループはマーフィーへの復讐(ふくしゅう)に燃え、両者の対立は激しさを増していく。
シネマトゥデイ
感想・その他
フィンバーが最後に対峙するのは、IRA(アイルランド共和軍)のメンバーです。 私がまだ若かった頃、新聞やニュースでIRAによる爆弾テロや銃撃事件の報道を頻繁に目にした記憶があります。当時は「北アイルランド解放戦線」などと呼ばれていた記憶もありますが、正式にはIRA(Irish Republican Army)――アイルランド共和軍という名称で、英国の統治下にある北アイルランドの独立、あるいはアイルランド共和国との統一を目指す武装組織でした。この問題の根底には、長年にわたるアイルランドとイギリスの複雑な歴史があります。16世紀以降、アイルランドは徐々にイングランドの支配下に置かれ、1921年の英愛条約によって南部26州が「アイルランド自由国」として独立しましたが、北部6州――現在の北アイルランド――はそのまま英国領として残りました。カトリック系住民を多く抱えるアイルランド側にとっては、この状況は「分断」であったのです。
IRAは、そうした政治的・宗教的な対立を背景に活動していた組織であり、その手段として暴力を用いたことで多くの犠牲者を出しました。特に1960年代後半から90年代末まで続いた「北アイルランド紛争(The Troubles)」は、カトリック系のナショナリストとプロテスタント系のユニオニスト、そして英国政府との間で深刻な対立を生み出しました。
この映画では、そうした歴史的背景が物語の下地となっており、単なるアクション作品ではなく、深い社会的・歴史的テーマを内包しています。アイルランドの荒涼とした風景の中で、過去の因縁と暴力の連鎖に立ち向かおうとする主人公の姿は、どこか重く、静かに観る者の胸に迫ります。
ふと考えるのは、こうした「分断」は決して遠い国の出来事ではないということです。たとえば私たちの日本においても、歴史の選択や外的な要因によっては、北海道や沖縄、あるいは九州や四国といった地域が、異なる運命をたどっていた可能性があるのではないか――そんな想像も決して荒唐無稽とは言えません。
地政学的な安定や国としての一体性がいかに脆く、同時に貴重なものであるかを、改めて考えさせられました。
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