私的評価
井沢元彦著『真・日本の歴史』を図書館で借りて読みました。本書は日本の歴史を、日本人が潜在的に持っている宗教感(言霊、和、怨霊、穢れ)の観点から読み解く興味深い内容でした。従来の歴史観にとらわれず、日本の成り立ちや出来事を別の角度から考えるきっかけを与えてくれます。歴史好きな方はもちろん、教科書的な歴史に疑問を持っている人にもおすすめです。
ただ、井沢氏の日本史観は独自性が強く、学界の定説とは異なる部分も多くあります。井沢氏自身も、自らを異端視されていると述べています。そのため、本書の内容を鵜呑みにするのではなく、「こういう考え方もあるのだ」と受け止めながら読むことが大切だと感じました。
★★★★☆
『真・日本の歴史』とは
井沢元彦著、2024年7月に幻冬舎から発刊されました。世界との「比較」と日本人の「宗教観」から、著者が考える真実の日本の「歴史の流れ」が書かれています。出版社内容情報
日本とはこんな国だったのか
日本人の行動原理はここにあったのか
あなたの知っている日本の歴史がひっくり返る!
目からウロコ 衝撃の面白さ
ゼロから学び直す真(シン)・日本史!
教科書も学者も教えてくれない「歴史の流れ」がわかる! 謎が解ける!
「比較」と「宗教」の視点を持てば、日本史ほどユニークで面白い歴史はない。
シリーズ累計580万部突破『逆説の日本史』著者による、30年の歴史研究のエッセンス。
内容説明
ゼロから学び直す日本史。日本とはこんな国だったのか。日本人の行動原理はここにあったのか。目からウロコ。衝撃の面白さ。あなたの知っている日本の歴史がひっくり返る!
目次
第一部 「比較」から日本史を読み解く
第一章 「世界と日本」はこんなにも違う
第二章 「長期の時間軸」で見ると歴史はわかる
第二部 「宗教」から日本史を読み解く
第三章 日本人の宗教の原点は「穢れ(ケガレ)」
第四章 日本人はなぜ「怨霊」を神として祀るのか
第五章 日本人はなぜ「和」を一番大切にするのか
第六章 「言霊」に縛られる日本人は不吉なことを口にできない
第七章 「穢れ」忌避信仰が武士を誕生させた
第八章 「朱子学」という外来宗教が日本にもたらした毒
著者等紹介
井沢元彦[イザワモトヒコ]
作家。1954年、愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第二六回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
紀伊國屋書店
感想・その他
井沢元彦氏の著書「逆説の日本史」シリーズの存在は、以前から名前だけは知っていました。書店でもよく見かける有名な作品ですし、歴史好きの友人たちから話題にのぼることもありました。ただ、私はこれまで一度も手に取ったことがありませんでした。というのも、恥ずかしながら、私はずっと「逆説」という言葉を「IF(もしも)」の意味だと、勝手に解釈していたのです。「逆説=もしもこうだったら」という仮想の歴史、いわば「歴史のifストーリー」なのだと思い込んでいて、どうも現実の歴史とは距離があるものと感じていました。そのため、興味はありつつも、「それなら他の史実に基づいた本を読もう」と、敬遠してしまっていたのです。
ところが今回、ひょんなきっかけから井沢氏の「真・日本の歴史」を読む機会を得て、自分の誤解にようやく気づきました。この本を通じて、「逆説」とは単なる空想や仮定の話ではなく、むしろ「定説とされている歴史に対して、別の角度から光を当てて真実をあぶり出す」という、非常に知的な問いかけであることを知りました。
特に印象的だったのは、井沢氏が日本人の宗教観――すなわち「言霊」「和」「怨霊」「穢れ」といった概念――を通して、日本史の流れを読み解こうとしている点です。私たちが普段あまり意識しない、けれど文化や価値観の根底に確かに息づいているこれらの思想を手がかりに、歴史的な出来事や人物の行動に新たな意味を与えていく手法は、非常に新鮮で刺激的でした。
このように、「逆説シリーズ」は単なる歴史の再解釈ではなく、日本人の無意識に刻まれた宗教観や精神性にまで踏み込んで、本当の意味での「なぜ」を解き明かそうとする試みなのだと感じました。読んでいくうちに、自分の中で歴史の見え方が少しずつ変わっていくのを実感し、「歴史とは、語られ方によってこんなにも印象が変わるのか」と、目から鱗が落ちる思いでした。
また、調べてみるとこの「逆説の日本史」にはコミック版もあるとのことで、文章が苦手な方や、歴史にあまり馴染みのない方にも入りやすい入り口が用意されているようです。私も今度はコミック版を手に取り、よりビジュアルに近い形でこの世界観を楽しんでみたいと思っています。
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