私的評価
井上夢人著『プラスティック』を図書館で借りて読みました。いきなり「ワープロ」や「フロッピーディスク」という単語が文中に出てきて何事かと思いましたが、この本は30年前の1994年発刊の古い本でした。物語自体はそれぞれを「パソコン」と「USBメモリー」に置き換えれば、なんら違和感なく現代風に読むことができ、古さを感じさせません。
さて内容の方ですが、最初から「なにが起きているんだ?」とぞくぞくさせる感じで話が進んで行き、少し怖ささえ覚えました。途中からはなんとなく謎の部分が分かってきますが、謎は私の想像以上でした。最初の導入部からすると、物足らない終わり方に感じました。
★★★☆☆
『プラスティック』とは
井上夢人著、1994年5月に双葉社から発刊されました。2004年9月に講談社文庫より文庫本が刊行。2024年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選出されました。内容説明
2024年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選出されて続々重版中!
「フロッピーディスクやワープロなど、令和の時代ではピンとこない人達もいるであろう
単語が並ぶ作品ですが、謎が謎を呼ぶその展開は、今読んでもガツンと脳みそに
突き刺さる衝撃がありました。(推薦者・ページ薬局 尼子慎太さん)
54個の文書ファイルが収められたフロッピイがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドが展開するサスペンスミステリー
著者等紹介
井上夢人[イノウエユメヒト]
1950年生まれ。'82年、徳山諄一との共作筆名・岡嶋二人として『焦茶色のパステル』で第28回江戸川乱歩賞を受賞。'86年、日本推理作家協会賞、'89年、吉川英治文学新人賞受賞後、同年、『クラインの壷』刊行と同時にコンビを解消する。'92年、『ダレカガナカニイル…』でソロとして再デビュー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
講談社BOOK倶楽部
感想・その他
この本を読んでみようと思ったきっかけは、たしか中日新聞の「私の3冊」という読書紹介コーナーだったか、あるいは広告記事だったと思います。はっきりとした記憶は曖昧ですが、紙面に載っていたその本の紹介文に心を惹かれたのは確かで、「これは読んでみたい」と素直に思ったのを覚えています。最近の私の読書傾向を振り返ってみると、新聞の記事や書評欄、あるいは広告から興味を持った本を手に取ることがほとんどになりました。以前は書店に足を運んで、棚を眺めながら偶然の出会いを楽しんでいたのですが、今では新聞が私にとっての「書店」のような存在になっています。
実際に本を入手する際は、まず図書館で所蔵があるかを確認し、あればすぐに予約します。最近は購入するにしても、ほとんどが電子書籍になってしまい、紙の本を買う機会はずいぶん減りました。持ち歩きやすさや保管の手間を考えると、つい電子の方を選んでしまうのです。
新聞記事で紹介されたばかりの本を、すぐに図書館で予約すれば、かなりの確率で短期間のうちに借りることができます。悪くても数人待ち程度で済みます。しかし、うっかり数日出遅れると、一気に予約待ちの人数が跳ね上がり、100人以上の長蛇の列になることも珍しくありません。特に蔵書数が限られている本の場合は、半年待ちということもざらにあります。
こうした経験を通して実感するのは、新聞の影響力の大きさです。私だけでなく、多くの人が新聞記事や書評を通じて本を選んでいるのだと分かります。同じ記事を読んだ誰かが、同じように心を動かされ、図書館に予約を入れている――そんな想像をすると、読書を通じた小さなつながりのようなものを感じて、ちょっと嬉しくなります。
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