私的評価
NHKプレミアムドラマ『今度生まれたら』を観ました。放送期間は2022年5月8日から6月19日で、全7話が放送されました。
松坂慶子に風間杜夫、そして平田満なら映画『蒲田行進曲』を思い出さずにはいられません。出演者を見て、勝手に想像した内容とはちょっと違いましたが、いろいろと考えさせられるドラマでした。
主人公は70歳になった主婦で、ふと今までの人生を考えてしまい、今後のことをあれこれ考え、自分の生きがいを見つけようと奮闘する姿が描かれます。
人生の ”IF” は誰しも考えてしまうと思います。あの時、転職しなければとか、結婚していなければとか…。そんな考えても仕方ないことを、考えることは無駄なことですが、これからの自分を考えることはとても重要なことだと思いました。
★★★★☆
作品概要
原作は内館牧子の『今度生まれたら』。脚本は真辺克彦、小嶋健作、大島まり菜。
制作統括は遠藤日登思(アミューズ)、小松昌代(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)。
出演は松坂慶子、風間杜夫、藤田弓子、平田満、小倉一郎、余貴美子、山中崇、毎熊克哉、風吹ジュンほか。
70歳になった夏江はつぶやいた。「今度生まれたら、この人とは結婚しない」と…。これまでの人生の節目を考え、今をどう生きるかを考え始める夏江と、夏江をとりまく人々を優しく描く、内館牧子原作のドラマです。
作品の紹介・あらすじ
第1話
佐川夏江(松坂慶子)は、自分が70歳になったことに激しく動揺する。一流企業のOL時代、エリート社員だった和幸(風間杜夫)と結婚し、二人の息子を立派に育てた。専業主婦として幸せな人生を送ってきたつもりだったが、退職後にすっかりケチになった夫の寝顔を見ながら「今度生まれたら、この人とは結婚しない」とつぶやく。そしてテレビ番組に目を奪われた。世界的園芸家・山賀は、結婚前に夏江がフッた元後輩だったのだ。
第2話
夏江(松坂慶子)は、姉の信子と一緒に人気弁護士・高梨公子(風吹ジュン)の講演会に出かける。同年代ながら迷いなく「老後の生き方」を語る高梨に、大勢の観客の前で思わず反論してしまう。そして悩んだ末出世した後輩の山賀に会いに行く。自分にも仕事ができないかと相談しようと思ったのだ。しかし、山賀の妻・佐保子とも出会い、第一線で活躍する彼女を目の当たりにして、自分の平凡さを思い知らされる。その帰り道…
第3話
夏江(松坂慶子)は、尾行した夫・和幸(風間杜夫)が公園で長男・剛と会っているのを目撃する。剛は妻の理沙に無視され帰宅恐怖症となり、毎晩公園で時間を潰していたのだ。夏江は理沙に会いに行く。理沙には夢があったが、夫の反対で諦めていた。それで夫婦仲がぎくしゃくしていたのだった。「やりたいことがあるなら離婚してでもやればいい」と言い放つ夏江だが、自分も思い切ってある人に電話を…
第4話
夏江(松坂慶子)は元同僚だった山賀に仕事をさせて欲しいと依頼する。山賀は快諾するが、キスをして欲しいとせがまれ、夏江は拒絶する。後日、山賀の心からの謝罪を受け入れ、園芸の仕事を手伝い始める。日々やりがいを感じる夏江に、夫の和幸(風間杜夫)が謝罪の言葉を口にした。エリート街道から外れ、会社を辞めることになったことを一度も妻に詫びずにいたのだった。夫婦で旅行に行こうという言葉を嬉しく思う夏江だったが…
第5話
講演会で夏江(松坂慶子)の反撃にあった弁護士の高梨公子(風吹ジュン)は、娘の由紀と一緒に、元恋人で由紀の父親・荻野が入院する病院に出かける。荻野は余命いくばくもないという。結婚を選ばなかった自分の選択が間違っていなかった、それを娘の前で荻野に伝える機会でもあった。夏江の言葉が公子にはひっかかっていたのだ。一方、夏江の姉・信子夫婦がまさかの事態に直面していた。あの夫の芳彦が…
第6話
夏江(松坂慶子)の姉・信子(藤田弓子)の家から夫が出て行った。直接バンビ(ジュディ・オング)に会って離婚届を突きつけようと信子は息巻く。一人の男の老後を申し送りするように、二人の女が対峙する。一方、夏江の夫・和幸(風間杜夫)は顔面蒼白になっている。老後の資金をつぎ込んで買った仮想通貨が大暴落していたのだ。どうしていいか分からず書き置きをして家出をする和幸だったが、向かった先は…
第7話
夏江(松坂慶子)は和幸(風間杜夫)の家出をきっかけに、長年夫婦の間で口にしてこなかったわだかまりが噴出。そんな折、児童養護施設建設反対運動で旗振り役になって欲しいと頼まれる。戸惑いながらも説明会に出かける夏江。施設側の弁護士として壇上に登場したのは、あの高梨(風吹ジュン)だった。忖度の連続だった人生で初めて、自分の意見を通そうとする夏江だが…そして和幸は…
NHKドラマ
感想・その他
「松坂慶子に風間杜夫、そして平田満」と聞けば、すぐに思い浮かぶのが映画『蒲田行進曲』。名作と呼ばれるにふさわしいこの作品が公開されたのは1982年。私がちょうど18歳の時でした。どういう経緯だったのか、正直もう思い出せませんが、この映画は映画館で観た記憶があります。きっかけは何だったのか、誰と観に行ったのか、そうしたことはすっかり曖昧になってしまったものの、内容の面白さだけははっきりと心に残っています。とにかく夢中になってスクリーンを見つめていたこと、観終わったあとに「あれはすごい映画だった」と興奮しながら劇場を出たこと、今でも覚えています。
その衝撃がきっかけとなって、私はつかこうへいという作家に強く惹かれるようになりました。情熱的で、独特のテンポと台詞回し、そしてどこか破滅的で人間臭い登場人物たち。映画で心をつかまれた勢いそのままに、つか作品の書籍を次々と買いあさり、むさぼるように読みふけった青春の記憶があります。
それから40年。時は流れ、2022年。あの頃スクリーンで眩しく輝いていた俳優たちも、すっかり年を重ねました。
風間杜夫さん。当時はとにかくカッコよくて、登場した瞬間、思わず「こんなにハンサムな人がいるのか」と息を呑んだほど。あの鋭さと男臭さが同居するルックスと声、そして存在感。まさに“銀ちゃん”そのものでした。
そして松坂慶子さん。「愛の水中花」がヒットしていたのが1979年で、当時26歳だった彼女はまさに絶世の美女。スッと伸びた背筋に、しなやかな体のライン、そして華やかさと儚さが同居するような独特の雰囲気……。スクリーン越しに見ても、その美しさは圧倒的でした。
しかし、時の流れは残酷であり、同時に平等でもあります。気がつけば、私自身もあの頃10代だった少年から、もうすぐ還暦を迎える年齢に。鏡に映る自分の姿も、当時とはまるで別人。人のことを言える立場ではないと自覚していますが、それでもテレビや雑誌で今の風間さんや松坂さんを見ると、やはり「あの頃の姿は、もうどこにもないのだな」と、寂しさにも似た気持ちが込み上げてきます。
風間杜夫さんのお腹まわりも、すっかり貫禄がつき、松坂慶子さんも“美魔女”を超えて、ふくよかな“おばちゃん体形”になられました。それでもどこかに、若き日のあの輝きの残像が、ふとした表情や所作に垣間見えると、何とも言えない懐かしさがこみ上げてくるのです。
あの頃、映画館で『蒲田行進曲』を観て、何か熱いものを心に受け取ったあの日。40年という時の流れを経ても、あの感動はまだ胸の奥に確かに息づいています。そして思うのです。あの映画をリアルタイムで観られたこと、それ自体がひとつの幸運だったのだと。
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