私的評価
Amazonプライムオリジナルドラマ『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』シーズン2を観ました。全8話、Amazonプライムビデオでの視聴です。
シーズン1は、壮大なスケール感と緻密なストーリー展開が見事に融合していて、まさにスリリングなスパイアクションの醍醐味を味わえる素晴らしい作品でした。主人公ジャック・ライアンの成長や内面の葛藤も丁寧に描かれ、観る者を引き込む力が強かったのを覚えています。
一方、今回のシーズン2は、正直なところシーズン1と比べるとスケールダウンやややパワーダウンした印象を受けました。物語の広がりや緊迫感が少し控えめになり、全体の迫力がやや抑えられていたように感じます。それでも、サスペンスやアクション、キャラクター同士の絡みは健在で、決してつまらないわけではありません。むしろ、シーズン1があまりに完成度が高く面白かったために、その差が際立ってしまったのかもしれません。
ただ、シーズン2ならではの人間ドラマや心理戦がより強調されている面もあり、じっくりとキャラクターの内面に迫る部分は好感が持てました。今後の展開に期待を持たせる終わり方だったのも好印象です。
ちなみに、すでにシーズン3の製作も発表されており、ファンとしてはシーズン1を超えるようなスケールと面白さを心待ちにしています。より壮大で緊張感溢れるストーリー、そしてジャック・ライアンのさらなる活躍に期待が高まるばかりです。
★★★☆☆
作品概要
原作はトム・クランシーの小説シリーズです。原案・製作総指揮はカールトン・キューズほか。
主演はジョン・クラシンスキー、共演者にはアビー・コーニッシュ、ウェンデル・ピアースほか。
2019年秋にAmazonプライムで配信開始されました。『トム・クランシー/ CIA分析官 ジャック・ライアン』は、アメリカ合衆国のアクション・スリラー・テレビドラマシリーズで、トム・クランシーの創作した小説シリーズのキャラクターであるジャック・ライアンを主人公としています。
作品の紹介・あらすじ
あらすじ
武器の搬入を疑って政情不安のベネズエラに入ったライアンは目の前で旧知のアメリカ議員を殺され、心臓病を抱えてロシアから異動したグリーアに再会する。ドイツ情報部員の助けを得て、議員暗殺の陰謀を調査し、殺し屋を倒す。ベネズエラに運び込まれた荷物は貴重なタンタル鉱山の採掘機械であることがわかり、暗殺の陰には大統領がいることがわかる。ライアンは退去命令を無視して収容所から政治犯を解放し、大統領の失脚を招く。鉱山開発と議員暗殺の背後にはアメリカ有力議員がいることを突き止める。
Wikipedia(ジャック・ライアン (テレビドラマ))
感想・その他
ベネズエラの大統領による数々の陰謀や国家規模の犯罪行為を、CIA分析官であるジャック・ライアンが次々と暴き、最終的に解決へと導いていく──それが今シリーズの中心となる物語です。舞台は南米ベネズエラ。石油をめぐる利権、経済制裁の影響、民衆の不満、そして大統領ニコラス・レイエスによる強権的な支配体制と、それに対抗する民主化勢力との対立が描かれます。しかし、正直なところ、シーズン1で感じたあの冷静沈着で優れた頭脳と、分析官ならではの論理的思考を駆使していたジャック・ライアン像は、今作ではすっかり影をひそめています。もはや分析官というよりも、完全に現場の突撃部隊。まるで「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアーばりの強引な行動力を見せるのですが、その過剰さにはやや現実味を欠く場面も多く、違和感を抱かずにはいられませんでした。
特に衝撃だったのは、ベネズエラの大統領府に乗り込んでの銃撃戦。これはさすがにやりすぎではないかと目を疑いました。主権国家の象徴である大統領府に、アメリカのCIA工作員が堂々と乗り込み、銃火器で交戦するなどというのは、現実にはまず考えられない展開です。
また、この作品を観ながら、ふと映画『ブラックホーク・ダウン』を思い出しました。あの映画でも感じたのですが、アメリカ人以外の登場人物、とくに第三世界の人々がまるでモブキャラのように雑に扱われている描写が目につきます。命の重さに対する描き方が、あまりにもバランスを欠いているのです。他国の主権や国民感情を軽視し、「アメリカが正義」という前提で物語が進むあたりに、アメリカ的価値観の傲慢さや自己正当化の偽善を感じずにはいられませんでした。ドラマであると割り切ってはいても、観ていて不快さが残るのも事実です。
それでも物語の最後には、悪政を敷いていたレイエス政権が倒れ、民主化勢力によって新たな政権が樹立されるという、いわゆる「ハッピーエンド」が描かれます。正義が勝ち、平和が訪れるという終わり方は、観終わった後の気分をスッキリさせてくれるものではありました。ただ、その一方で、あまりにも予定調和的で、もう少し予想を裏切るような展開や、複雑な余韻を残すような結末が欲しかったという気持ちも残ります。
最後に、この作品の中で密かに注目していた俳優がいます。CIAの秘密工作部隊のリーダーであるマティスを演じたジョン・フージナッカー(John Hoogenakker)です。彼の存在感は抜群で、登場するたびに画面が引き締まるような渋さと、どこか悲哀を帯びた男の哀愁が漂っていました。まさに“縁の下の力持ち”といった役どころながら、主役を喰うほどの演技力とカリスマ性があったと思います。しかしながら、意外にもこの俳優について日本語での情報は非常に乏しく、検索しても詳しいプロフィールや出演作がほとんどヒットしませんでした。個人的には今後の活躍に大いに期待したい俳優のひとりです。
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