シュテファン・ゴルスキー主演、映画『ある一生』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『ある人生』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

映画『ある一生』は、母の義兄に引き取られた孤児の主人公が、静かに、しかし容赦なく試され続ける一生を追った作品です。華やかなドラマ性よりも、ひとりの人間が「生き切る」ことの重さと尊さを、じわじわと胸に染み込ませてきます。

幼い頃に引き取られた血のつながらないおじさん(母の義兄)は、彼にとって保護者ではなく支配者そのものです。奴隷のようにこき使われ、理不尽な折檻を受け、ついには死ぬまで足を引きずることになるような骨折さえ負わされる。その痛みは身体だけでなく、彼の心にも深い影を落とします。

そんな過酷な日々の中で、唯一の救いとなるのが、一緒に暮らす老婆の存在です。彼女がどんな素性の人なのか、最後まで明かされることはありませんが、寡黙なぬくもりだけが彼をかろうじて人間らしさにつなぎとめているように感じられます。その老婆が亡くなったとき、彼はおじさんの家を出て、ようやく自分の足で立つ決意をします。

やがて彼は働いて小さな借家を持ち、結婚し、ささやかな幸福に触れます。しかし、そのささやかな幸せさえも長くは続きません。妻を失い、さらに戦争へと駆り出され、捕虜となる過酷な運命に翻弄されていきます。それでも彼は、怒りや嘆きに溺れるのではなく、目の前の「今日」を生きることだけを選び続けます。

なかでも心に残るのが、亡き妻の横に彼が埋葬される場面です。妻の棺から、彼が生前の妻に宛てて書き続けていた手紙が、ぽとり、ぽとりと落ちてくる。その一通一通には決して届くことのない思いが込められていて、その紙片が土の上に落ちていく光景は、言葉にならない切なさで胸を締め付けます。

毎日をただ生き、苦難があってもそれをただ単に受け止めていく主人公。彼が人生の最後に口にする「まんざらでも人生だった」という一言は、静かに、しかし強く心に響きます。壮大な感動作というよりも、観る者に自分自身の人生をそっと振り返らせる、滋味深い一本だと感じました。

★★★★☆

作品概要

監督はハンス・シュタインビッヒラー。
脚本はウルリッヒ・リマー。
原作はローベルト・ゼーターラーの同名小説。 製作はヤーコプ・ポホラトコ、ディエター・ポホラトコ、ティム・オーバーヴェラントほか。
主演はシュテファン・ゴルスキー、その他の出演者にアウグスト・ツィルナー、イヴァン・グスタフィク、アンドレアス・ルスト、ユリア・フランツ・リヒターほか。

本作は、2023年制作のドイツ・オーストリア合作のヒューマンドラマ映画です。舞台は1900年頃のオーストリア・アルプスで、孤児のため奴隷のような扱いを受けて育った少年アンドレアス・エッガーの一生を、美しいアルプスの自然と共に描いた作品です。

作品の紹介・あらすじ

解説
1900年ごろのオーストリア・アルプス。渓谷に住む遠い親戚の農場へとやって来た身寄りのない少年アンドレアス・エッガーの心の支えは、高齢の女性アーンルだけだった。彼女が亡くなり、農場を出た彼は日雇い労働者として生計を立て、その後ロープウエーの建設作業員となり、マリーという女性と出会って山奥の小屋で結婚生活を送る。やがて第2次世界大戦が始まり、召集されたエッガーはソ連軍の捕虜となり、何年もの後、ようやく渓谷へと戻って来る。

あらすじ
深夜の街でゴミ回収車を走らせる、クリーン(エイドリアン・ブロディ)と呼ばれる男。廃品や廃屋の修繕修理を趣味にする寡黙な彼だが、その正体はすご腕の殺し屋だった。あるとき、心を通わせる少女ディアンダが麻薬ギャングに連れ去られ、彼女の救出に向かったクリーンはギャングを徹底的に痛めつける。しかし、その中にギャングを率いるマイケルの息子がいたことから、一転して追われる身に。警察とも癒着するマイケルの組織に追い詰められたクリーンは、銃を手に反撃に挑む。

シネマトゥデイ

感想・その他

主人公が暮らすことになるのは、オーストリアのアルプス地方。その雄大な自然の風景は、まるでアニメ『アルプスの少女ハイジ』に登場する世界そのものです。実際、このアニメの制作前には主要スタッフが現地を訪れて綿密な取材を行ったそうで、映像が本物そっくりなのも納得です。

『ハイジ』が放送されていた当時、母方の祖父母の家へ行くと、決まっていとこたちとのチャンネル争いが勃発しました。男子陣は『宇宙戦艦ヤマト』を観たくて、女子陣は『ハイジ』を譲らない。今のようにビデオデッキもTVerもない時代だったので、見逃せば次にいつ観られるかわからない、まさに一度きりの勝負でした(もちろん再放送はありましたが、それもいつになるか分かりません)。

そんな懐かしい記憶を胸に、この映画を鑑賞しました。そして改めて気づいたのです。あれほどチャンネル争いをしていた私が、いつの間にか『ハイジ』の大ファンになっていたことに。今でも何度も繰り返し観るほどで、なかでもフランクフルトからアルムの山へ戻るシーンは、いつ観ても胸が熱くなります。都会の喧騒を離れ、自然の中で再び笑顔を取り戻すハイジの姿に、何度でも励まされるのです。

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