私的評価
映画『特捜部Q 檻の中の女』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
このシリーズは第4作目の「カルテ番号64」から観てしまい、映画の中で出てくるそれまでの経緯が分かりませんでした。この第1作目である「檻の中の女」を観て、刑事カールがどうして特捜部Qに配属され、アサドがどのようにこの部署に加入されたのか分かりました。とは言え、第4作目までにはあと2作あり、そこらへんでカールとアサドの関係がいろいろとあるんでしょう。
映画の方と言えば、「カルテ番号64」よりもこちらの方がよかったです。なんと言っても失踪した女性議員(檻の中の女)が、どうしてそのような羽目になったのか。その原因となった出来事の映像が、なんだかとてもキレイで衝撃的でした。
★★★★☆
作品概要
監督はミケル・ノルガード。脚本はニコライ・アーセル。
原作はユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズ。
製作はルイーズ・ベス、ピーター・オールベック・イェンセン。
主演はニコライ・リー・カース、その他出演者にファレス・ファレス、ミケル・ボー・フォルスゴー、ソニア・リクターほか。
2013年製作のデンマークのサスペンス映画です。北欧ミステリーの代表作として、欧米や日本でも大人気の「特捜部Q」シリーズ。その記念すべき第1作目の映画です。
作品の紹介・あらすじ
解説・あらすじ
世界的に人気を集めるユッシ・エーズラ・オールスン原作のミステリー小説「特捜部Q」シリーズの第1作「檻の中の女」を、本国デンマークで映画化。「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニコライ・アーセルが脚本を手がけた。コペンハーゲン警察殺人課の刑事カールは、新設されたばかりの未解決事件班「特捜部Q」に左遷させられてしまう。捜査終了と判断された事件の資料を整理するだけの仕事にやる気を見出せないカールだったが、資料の中から5年前に世間を騒がせた美人議員失踪事件の捜査ファイルを発見し、その捜査結果に違和感を抱く。助手アサドと共に調査に乗り出したカールは、やがて議員がまだ生きている可能性にたどり着く。主人公カール役を「天使と悪魔」のニコライ・リー・カース、助手アサド役を「ゼロ・ダーク・サーティ」のファレス・ファレス、失踪した議員役を「しあわせな孤独」のソニア・リクターが演じた。
映画.com
感想・その他
この作品は、ユッシ・エーズラ・オールスン原作の小説を映画化したもので、「特捜部Q」シリーズの記念すべき第1作です。デンマークを舞台に、未解決事件を専門に扱う特別捜査チーム“特捜部Q”が立ち上げられ、警部カール・マークと助手アサドが、過去に失踪した女性議員の謎に迫る――という重厚なサスペンスドラマです。観てまず感じたのは、やはりその映像の“陰”の美しさ。北欧系のドラマや映画に共通する特徴として、映像のトーンが非常に抑えられていて、どこか陰鬱で薄暗い雰囲気がありますが、本作も例外ではありません。全編を通して、明るく晴れ渡る青空が映し出されることはおそらく一度もなく、曇天、雨、モノトーンの室内…と、光を意図的に抑えた構図が続きます。それがかえって、作品の緊張感や重苦しさ、不安定な人間心理を強調しており、非常に効果的でした。

そんな空気感が根底に流れているのは、舞台となっているデンマークという国の自然や気候も影響しているのかもしれません。地図で見ても一見“北欧っぽさ”は感じにくいのですが、確かにヨーロッパ大陸の北側に位置し、スカンジナビア文化圏の一角を担う国家です。ユトランド半島と、シェラン島やフュン島など多くの島々からなり、面積は日本のおよそ1/9。人口は約580万人で、これは愛知県(約750万人)よりも少ない規模です。
さらに、デンマークは自治領としてグリーンランドとフェロー諸島を擁しており、これらを含めて“デンマーク王国”という一つの枠組みを構成しています。気候はイギリスに似た海洋性で、冬は比較的温暖ですが雨が多く、夏は涼しく乾燥気味。こうした自然環境が、独特の曇りがちで静かな映像世界をつくり出す要素となっているのかもしれません。
私自身、Amazonプライムビデオなどでデンマークのドラマや映画をよく観るようになりましたが、この国の作品群には他の欧米作品にはない“静けさ”と“奥深さ”があり、その魅力にどんどん惹きつけられています。派手なアクションや過剰な演出がなく、淡々としているけれど、どこかヒリヒリとする緊張感。そして人間の弱さや闇を丁寧に描く姿勢。これが、私が北欧作品――とくにデンマーク発のドラマや映画――を好きになった理由です。
『特捜部Q 檻の中の女』もその例に漏れず、登場人物の抱える心の傷や社会の冷たさが、淡々とした映像と静かな演出によってじわじわと浮き彫りになっていきます。正義や信頼、孤独といったテーマに深く踏み込んだストーリーは、単なるサスペンスを超えた「人間ドラマ」として、強く印象に残る作品でした。
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