私的評価
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』を観ました。レンタルDVDでの鑑賞です。
シリアスな復讐劇かと思いきや、主人公以外の出演者は誰しもコミカルで、顛末と言えばブラックコメディ映画と言っても過言ではありません。それでいて、この映画の登場人物にはそれぞれなにかしらの「過去」があり、悩める現代社会の問題点が描写されていたりします。
映画の最初と最後に流れる本筋とは関係のないエピソードがありますが、人間は偶然の連続で生きているんだなとつくづく考えさせられました。後味の悪くない、面白い映画でした。
★★★★☆
作品概要
監督・脚本はアナス・トマス・イェンセン。製作はシーセ・グラウム・ヨルゲンセン、シーゼル・ヒブシュマン。
主演はマッツ・ミケルセン、その他出演者にニコライ・リー・カース、アンドレア・ハイク・ガデベルグ、ラーシュ・ブリグマンほか。
2022年1月に公開されたデンマーク、スウェーデン、フィンランド合作のアクション映画です。軍人の主人公は列車事故で妻を失うが、その事故には犯罪組織が関わっているとの情報で、主人公のマークスが復讐のため暴れまわる…。
作品の紹介・あらすじ
解説
『アナザーラウンド』などのマッツ・ミケルセン主演によるアクション。妻が犯罪組織による暗殺に巻き込まれて命を落としたことを知った軍人が、数学者らの協力を得て復讐(ふくしゅう)に挑む。メガホンを取るのは『メン&チキン』などのアナス・トマス・イェンセン。『特捜部Q』シリーズなどのニコライ・リー・コス、ドラマ「犯罪ジャーナリスト ディクテ」などのラーシュ・ブリグマン、『アントボーイ』などのニコラス・ブロのほか、アンドレア・ヘイク・ゲーゼベウ、グスタフ・リンドらが出演する。
あらすじ
アフガニスタンで任務に就いていた軍人マークスは、妻が列車事故で亡くなったという報せを受けて急きょ帰国する。娘と共に悲しみに暮れる彼の前に現れた数学者のオットーらは、事故は犯罪組織“ライダーズ・オブ・ジャスティス”が殺人事件の重要な証人をほうむるために起こしたものだと告げる。怒りに燃えたマークスは、オットーたちの協力を得ながら復讐(ふくしゅう)を誓うが、事態は予想していなかった方向に進む。
シネマトゥデイ
感想・その他
主演のマッツ・ミケルセンは、映画『残された者 -北の極地-』でも触れたように、デンマーク出身の実力派俳優です。冷たくも知的な雰囲気をまとい、どこか影のあるキャラクターを演じさせたら右に出る者はいないのではないか、と思わせるような存在感を放っています。国際的にも活躍しており、『007 カジノ・ロワイヤル』や『ドクター・ストレンジ』などのハリウッド作品にも出演していますが、やはり彼の本領が発揮されるのは、こうした北欧系映画の中で見せる、静けさの中に狂気や哀しみを秘めた演技だと思います。この映画もデンマーク、スウェーデン、フィンランドの北欧三カ国による合作で、いかにも“北欧らしい空気感”が全編に漂っています。最近ではAmazonプライムをはじめとした配信サービスで、各国の映画やドラマが気軽に観られるようになり、映画好きにとっては本当にありがたい時代になりました。中でも、この“北欧物”と呼ばれるジャンルには、独特の静謐さや緊張感、そして人間の内面に深く切り込むような作風が多く、他の国の作品とは一線を画していると感じます。
このブログでもいくつか紹介していますが、たとえば…
・映画『湿地』では、重く湿った空気の中にあるミステリーと人間関係の不穏さが際立っていました。
・映画『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』は、一見風変わりなタイトルながらも、復讐劇と人間の孤独が交錯する異色の作品でした。
・映画『幸せなひとりぼっち』は、頑固で偏屈な老人の人生を通じて、失われた愛や再生の希望を描く感動作です。
・映画『ある戦争』は、現代の兵士が直面する倫理的ジレンマを問いかけ、戦争映画でありながらも法廷劇のような緊張感がありました。
・映画『ヒトラーのわすれもの』は、戦後のデンマークにおける“隠された戦争の後始末”という題材を通じて、戦争の非情さと人間の赦しを描いています。
そして記事にはしていませんが、テレビドラマでは『THE BRIDGE/ブリッジ』が印象的でした。デンマークとスウェーデンの国境にまたがる橋で発見された死体をきっかけに、両国の刑事が協力しながら事件を追うサスペンス。この作品も、ただの推理劇に留まらず、登場人物の心理や社会的な背景、文化の違いまでも描き出す深みがあります。
こうした北欧作品は、アメリカ映画にありがちな“カタルシスのある終わり方”とは違い、どこか余韻を残すようなラストだったり、あえて答えを提示しないまま終わったりするものも多く、見る側の感情や思考を揺さぶるものがあります。
また、映像美も秀逸で、曇り空や雪景色、静かな湖や広大な森など、北欧ならではの自然風景が物語に奥行きを与えています。登場人物の少なさ、台詞の少なさも相まって、沈黙が語る世界──そんな印象を受けることもしばしばです。
たまにはこのような北欧映画やドラマを観て、普段とはひと味違った空気を感じてみるのも良いものです。心のどこかに引っかかる感覚、それが北欧作品の魅力なのかもしれません。
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