マーク・ウォールバーグ主演、映画『バーニング・オーシャン』のあらすじ・感 想など

私的評価

映画『バーニング・オーシャン』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

監督のピーター・バーグと主演のマーク・ウォールバーグのタッグ作は、私にとっては『マイル22』、『パトリオット・デイズ』に続く三作目。どちらも緊張感とエンタメ性を兼ね備えた作品でしたが、今作『バーニング・オーシャン』は少し趣が異なります。ハリウッド的なド派手なアクションや派手な演出は控えめで、物語はあくまでも「事実に基づく惨事」の再現に重きを置いている印象でした。

舞台となるのは、メキシコ湾に浮かぶ巨大な海上石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」。2010年に実際に発生した爆発事故と、その後の大規模原油流出をモチーフにしています。世界最悪級とも言われるこの環境災害を、現場で働く人々の目線から描いているため、脱出劇はスリリングでありながらも、非常にリアルで重苦しい雰囲気を漂わせています。

映画前半は、石油掘削の工程や作業員たちの人間関係が淡々と描かれ、一見すると盛り上がりに欠けるように思えるかもしれません。しかし、この「日常」の積み重ねがあるからこそ、後半の爆発シーンや崩壊する施設からの脱出が強烈に迫ってきます。火の手が上がり、鉄骨が軋み、人々が逃げ惑う場面はまさに地獄絵図。けれども、演出は決して過剰にならず、あくまで現実に即した描写に留めているのが逆に恐ろしいほどでした。

『パトリオット・デイズ』同様、ピーター・バーグ監督は「実際に起きた悲劇をどう映像化し、どう伝えるか」という点に真摯に取り組んでいるように感じます。単なるアクション映画としてではなく、犠牲になった人々や生還者たちへの敬意を込めた作品――それが『バーニング・オーシャン』でした。

★★★☆☆

作品概要

監督はピーター・バーグ。
脚本・原案はマシュー・サンド。
製作はロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラほか。
出演はマーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチほか。

2016年制作のアメリカ合衆国のパニック映画です。

作品の紹介・あらすじ

解説
『ローン・サバイバー』のピーター・バーグ監督とマーク・ウォールバーグが再びタッグを組んだパニックムービー。2010年に実際にメキシコ湾沖で起きた事故を題材に、石油掘削施設内に取り残された作業員たちの脱出劇をドラマチックに描写する。『ヘイトフル・エイト』などのカート・ラッセルや『RED』シリーズなどのジョン・マルコヴィッチらが共演。臨場感たっぷりの手に汗握る展開に引き込まれる。

あらすじ
メキシコ湾沖80キロメートルにある石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で、海底油田からの逆流によって上昇した天然ガスへの引火が原因で大爆発が発生。現場で働いていた作業員126人が施設内で足止めを食らう。事故により多数の行方不明者と負傷者を出す大惨事となり……。

シネマトゥデイ

感想・その他

石油会社BPの社員役を演じていたのは、独特の存在感を放つジョン・マルコヴィッチ。私の中では、やはりクリント・イーストウッド主演の映画『ザ・シークレット・サービス』の印象が強烈に残っています。あの作品は何度もテレビで放送されており、彼の鋭い目つきと不気味な雰囲気が重なって、完全に「悪役専門」のようなイメージが刷り込まれてしまいました。本作でもその印象は健在で、経費削減を優先する冷酷なBP社員として登場。安全確認を軽視した結果、取り返しのつかない大事故を招いてしまうという、まさに“憎まれ役”としての適役ぶりを発揮していました。観客の感情を逆なでするような存在感は、さすがベテラン俳優です。

一方で、現場責任者として奮闘するのがカート・ラッセル。名前と顔はよく知られている俳優ですが、個人的には彼の出演作をほとんど観ておらず、唯一記憶にあるのは1991年の映画『バックドラフト』。しかも映画館で鑑賞したことを覚えています。ただ、30年以上も前のことなので、どうして劇場で観ることになったのか細かな経緯はもう思い出せません。あの消防士たちの熱き人間ドラマは印象に残っているのですが、今作『バーニング・オーシャン』での彼は、当時のイメージとあまりにも違っていました。69歳となり、すっかり年齢を重ねた姿に「これがカート・ラッセルだ」と言われなければ気づかないほど。しかしその分、長年現場を仕切ってきたベテラン責任者の説得力を漂わせ、静かな存在感で物語を支えていました。

この映画が扱っているのは、2010年にメキシコ湾で実際に発生した「ディープウォーター・ホライゾン爆発事故」。死者11人を出し、その後、史上最悪規模の原油流出事故へと発展していきます。ただし本作が描くのは、あくまで爆発から施設脱出までのわずかな時間に焦点を当てており、その後の環境汚染や社会的影響については一切触れられていません。だからこそ、派手な“ヒーロー映画”ではなく、事故当日の現場で必死に生き延びようとした作業員たちの姿をリアルに切り取った作品になっています。

物語はテンポよく進み、専門知識がなくても理解できる構成なので、107分の上映時間はあっという間。劇的なカタルシスや勧善懲悪の爽快感を求めると少し物足りなさを感じるかもしれませんが、クライマックスの大爆発シーンは圧倒的な迫力でした。炎が立ち上り、鉄骨が崩れ落ちる映像は息を呑むリアリティで、「もし自分がその場にいたら」と考えるだけで背筋が寒くなるほどです。

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