リン(猫)のおねだり



会社から帰ると、決まってリンが玄関まで駆けてきます。
尻尾をピンと立てて「早く!早く!」とばかりに鳴きながら、外へ出してほしいとおねだり。
仕方なく抱っこして少しの時間だけ外に出してやると、風の匂いを嗅いで満足そうに目を細めます。
ひとしきり気が済むと、今度は何事もなかったかのように家の奥へ駆け去っていくのです。

その日、たまたま玄関にキイもいて、「じゃあ一緒に」と抱き上げて外へ出してみたところ――。
次の瞬間、耳を伏せて目を見開き、パニックを起こして暴れ出しました。
必死の抵抗で爪を立てられ、こちらも思わず「痛っ!」と声を上げるほど。

よくよく考えてみれば、キイは子猫の頃に保護されてからずっと家の中だけで暮らしてきました。
だから外の空気や音は、彼にとって未知の恐怖でしかないのでしょう。
同じ猫でも、リンのように外を恋しがる子もいれば、キイのように「家の中こそ安全」と感じている子もいる。
その違いがまた面白く、愛おしいなと思わされる出来事でした。

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