私的評価
映画『シャイロックの子供たち』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
池井戸作品にハズレはないだろうと言うことで、有料で視聴した映画です。それなりに最後まで楽しめましたが、観終わった後にはそれほどの爽快感がありませんでした。全体的にサラっとした印象で、池井戸作品にありがちなジメっとした陰湿な悪巧みがなく、そのため最後の倍返しがあっても爽快感に乏しかったように思います。
シリアスな物語の中、主演の阿部サダヲがイメージ通りの阿部サダヲで、柄本明と二人はどこかコミカルで、それはそれで楽しませてくれました。
★★★☆☆
作品概要
監督は本木克英。脚本はツバキミチオ。
原作は池井戸潤の同名小説。
製作は映画「シャイロックの子供たち」製作委員会。
主演は阿部サダヲ、その他出演者に上戸彩、柳葉敏郎、杉本哲太、玉森裕太、渡辺いっけい、佐藤隆太、佐々木蔵之介、橋爪功、柄本明ほか。
2023年11月公開の日本のミステリー映画です。原作は 池井戸潤の人気小説『シャイロックの子供たち』で、とある銀行の支店で起こった現金紛失の事件をきっかけに浮かび上がる人間模様を描く映画です。
作品の紹介・あらすじ
解説
池井戸潤の小説を原作に、とある銀行の支店で発生した現金紛失事件を描くミステリー。事件をきっかけに、複雑に絡み合う人々の思惑や欲望が浮き彫りになっていく。メガホンを取るのは『空飛ぶタイヤ』でも池井戸作品を映画化した本木克英。『アイ・アム まきもと』などの阿部サダヲ、『昼顔』などの上戸彩、『パラレルワールド・ラブストーリー』などの玉森裕太のほか、柳葉敏郎、杉本哲太、佐々木蔵之介らがキャストに名を連ねる。
あらすじ
ある日、東京第一銀行の小さな支店で、現金が紛失する事件が起きる。ベテランお客様係の西木(阿部サダヲ)は、同じ支店に勤める愛理(上戸彩)や田端(玉森裕太)と協力して事件の真相を探る。この支店には、出世コースから外れた支店長の九条(柳葉敏郎)、超パワハラ副支店長・古川(杉本哲太)、嫌われ者の本店検査部の黒田(佐々木蔵之介)らがいた。
シネマトゥデイ
感想・その他
映画の題名に使われている「シャイロック」とは一体何なのか。正直、最初にタイトルを見たときは、何かの固有名詞なのだろうという程度の認識しかなく、特に深く考えることもありませんでした。しかし、映画を観終わってからふと気になり、調べてみることにしました。「シャイロック」とは、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場する登場人物の名前で、作中ではユダヤ人の金貸しとして描かれています。彼は執拗に借金の返済を求め、「返せなければ借主の肉1ポンドをもらう」と契約に書かせるほど、冷酷で強欲な人物。あまりに強烈なキャラクターゆえに、いつの間にか「シャイロック」という名前自体が「強欲な金貸し」の代名詞のように使われるようになったのだとか。
『ヴェニスの商人』というタイトル自体は、学生時代に聞いたことがある程度で、内容についてはまったく知りませんでした。今回、Wikipediaなどであらすじを読んでみると、想像以上に重く、複雑なテーマを含んだ物語であることに驚かされました。人間の欲望、差別、そして契約という冷酷な制度と、それを逆手に取る知恵比べ——そうした要素が詰まっていて、今さらながら興味をそそられます。
舞台はイタリアのヴェニス(ヴェネツィア)。バサーニオは富豪の娘で相続人のポーシャと結婚するために先立つものが欲しい。そこで、友人のアントーニオから金を借りようとするが、アントーニオの財産は航海中の商船にあり、金を貸すことができない。アントーニオは悪名高い高利貸しのシャイロックに金を借りに行く。アントーニオは金を借りるために、指定された日付までにシャイロックに借りた金を返すことが出来なければ、シャイロックに彼の肉1ポンドを与えなければいけないという条件に合意する。
アントーニオは簡単に金を返す事が出来るつもりであったが、船は難破し、彼は全財産を失ってしまう。シャイロックは、自分の強欲な商売を邪魔されて恨みを募らせていたアントーニオに復讐できる機会を得た事を喜ぶ。一方、シャイロックの娘ジェシカは純真で心が美しく、父の冷酷非道を嫌ってロレンゾと駆け落ちしてしまう。
その頃、バサーニオは、ポーシャと結婚するためにベルモントに向かう。ポーシャの父親は金、銀、鉛の3個の小箱から正しい鉛の箱を選んだ者と結婚するよう遺言を残していた。バサーニオはポーシャの巧妙なヒントによって正しい箱を選択する。バサーニオはポーシャから貰った結婚指輪を絶対はずさないと誓う。しかし、バサーニオの元にアントーニオがシャイロックに借金返済が出来なくなったという報せが届く。バサーニオはポーシャから金を受け取りヴェニスへと戻る。一方、ポーシャも侍女のネリッサを連れて密かにベルモンテを離れる。
シャイロックはバサーニオから頑として金を受け取らない。どれだけ積まれても受け取らない理由はアントーニオが嫌いだからだという。
「好きになれなきゃ殺す、人間ってそんなものか?」
「憎けりゃ殺したくなる、人間ってそんなもんだろう?」
シャイロックは裁判に訴え、契約通りアントーニオの肉1ポンドを要求する。若い法学者に扮したポーシャがこの件を担当する事になる。ポーシャはシャイロックに慈悲の心を見せるように促す。しかし、シャイロックは譲らないため、ポーシャは肉を切り取っても良いという判決を下す。
シャイロックは「名判官ダニエル様の再来だ…年はお若いが名判官だ』(小田島雄志訳)と喜んで肉を切り取ろうとするがポーシャは続ける、「肉は切り取っても良いが、契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」。仕方なく肉を切り取る事を諦めたシャイロックは、それならばと金を要求するが一度金を受け取る事を拒否していた事から認められず、しかも、アントーニオの命を奪おうとした罪により財産は没収となる。アントーニオはキリスト教徒としての慈悲を見せ、シャイロックの財産没収を免ずる事、財産の半分をシャイロックの娘ジェシカに与える事を求める。そして、本来死刑になるべきシャイロックは、刑を免除される代わりにキリスト教に改宗させられる事になる。
バサーニオはポーシャの変装に気付かずに、お礼をしたいと申し出る。バサーニオを困らせようと結婚指輪を要求するポーシャに、バサーニオは初めは拒んだが、結局指輪を渡してしまう。
ベルモンテに戻ったバサーニオは、指輪を失った事をポーシャに責められる。謝罪し許しを請うバサーニオに、ポーシャはあの指輪を見せる。驚くバサーニオにポーシャは全てを告白する。また、アントーニオの船も難破しておらず、無事であった事がわかり、大団円を迎える。
さて、映画に登場する悪党たちはというと、まさにその「シャイロック」を体現したような存在です。金と権力に取り憑かれた彼らの姿は、現代の“シャイロックの子供たち”とでも呼ぶべきでしょう。そう考えると、映画の題名『シャイロックの子供たち』は非常に的を射た、皮肉の効いたタイトルだと感じました。
この映画を観たことによって、単に物語を楽しんだだけでなく、自分の中の教養の引き出しが一つ増えたような、ちょっと得をしたような気分にもなりました。こんなふうに、一つの映画がきっかけで、思いがけず古典文学に触れられるのも面白いものです。年を重ねても、まだまだ知らないことはたくさんある——そんなことを実感させられた作品でした。
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