私的評価
磯田道史著『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』を図書館で借りて読みました。日本は、特に自然災害が多発する国です。ここ数年、数年に一度の大洪水が毎年のように発生しており、大地震も頻発していることから、まるで地震活動期に突入したかのような状況です。さらに、南海トラフを震源とする巨大地震の発生が予測され、これからはスーパー台風の頻発も懸念されています。私たち日本人の前には、常に多種多様な自然災害という脅威が立ちはだかっています。
この本は、古文書を読み解き、先人たちが経験した過去の災害から学び、それを現代の防災に役立てようとする内容です。歴史的背景と絡めて書かれているため、堅苦しい印象はなく、非常に読みやすく仕上がっています。
★★★★☆
『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災』とは
磯田道史著、2014年11月に中央公論新社より刊行されました。内容説明
豊臣政権を揺るがした二度の大地震、一七〇七年の宝永地震が招いた富士山噴火、佐賀藩を「軍事大国」に変えた台風、森繁久彌が遭遇した大津波―。史料に残された「災い」の記録をひもとくと、「もう一つの日本史」が見えてくる。富士山の火山灰はどれほど降るのか、土砂崩れを知らせる「臭い」、そして津波から助かるための鉄則とは。東日本大震災後に津波常襲地に移住した著者が伝える、災害から命を守る先人の知恵。
目次
第1章 秀吉と二つの地震
第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
第4章 災害が変えた幕末史
第5章 津波から生きのびる知恵
第6章 東日本大震災の教訓
著者等紹介
磯田道史[イソダミチフミ]
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年、国際日本文化研究センター准教授、21年より同教授。18年、伊丹十三賞受賞。著書『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
紀伊国屋書店
感想・その他
本を開いて、まず何よりも驚いたのがその「見た目」でした。文字がやたらと大きく、文字と文字の間にはゆったりとした余白が取られていて、まるで小学校低学年向けの教科書を手にしたような印象。思わず「えっ、これって本当に予約したやつ?」と目を疑ってしまいました。私が今回読んだのは、埼玉福祉会が出版している「バリアフリー大活字本シリーズ」の一冊でした。図書館のWEB予約で検索した際、同じタイトルの本が2冊出てきたため、単純に発刊が新しい方を選んだところ、それがたまたま大活字版だったというわけです。まったく意識せずに選んだ結果でしたが、まさかここまで見た目が違うとは想像していませんでした。
とはいえ、ページをめくって読み始めてみると、その印象はガラリと変わりました。何と言っても、文字が大きくてとにかく読みやすい。老眼が進み、最近では本を長く読むと目の奥がじんわりと痛くなったり、文字がぼやけたりしていた私にとって、この大活字本はまさに救世主のような存在でした。ページ全体にゆとりがあるため、目で文字を追うのがとても楽で、読み進めるのにまったくストレスを感じません。読書が“快適”だと思える時間を久しぶりに味わった気がします。
もちろんデメリットもあります。通常の書籍に比べてページ数が増える分、本のサイズも大きく、厚みもあります。そのため、どうしても重くなってしまい、持ち運びには少々不便です。寝転がって読むには少し手首に負担がかかるかもしれません。それでも、この読みやすさと快適さを考えれば、十分に許容できる範囲だと感じました。
大活字本とは、視力の弱い方や、高齢で文字が読みづらくなった方にも読みやすいように、文字の大きさや行間等を調整し、大きな活字で組みなおした本です。大活字図書、大活字版とも呼ばれています。
一般的な文庫本の文字の大きさは9~10ポイント程度ですが、大活字本では、12~22ポイントの文字を使用しています。書体も出版社によって異なり、明朝体・ゴシック体を採用しています。
また、黒い紙に白い文字の印刷で読みやすくした白黒反転本や、リングで綴じてめくりやすく工夫された大活字本も出版されています。 埼玉福祉会の大活字本シリーズは、14ポイントの明朝体(5ミリ角)を使用しております。文字と文字の間隔を1ポイントあけ、行間は活字と同じ14ポイントあけた形にして、読みやすさに留意した体裁にしております。
社会福祉法人 埼玉福祉会
世の中にこんな素晴らしい本があるなんて、これまでまったく知りませんでした。高齢者や視力が低下してきた方、あるいは文字を読むのが苦手な人にとって、こうした“読むことのハードルを下げる工夫”は、単なる読書体験を超えた意味を持つと思います。「読む楽しみ」を取り戻せるきっかけとして、もっと広く知られるべき存在ではないでしょうか。
これからは図書館で本を予約するとき、内容だけでなく「大活字本かどうか」も選択肢の一つとして意識するようになりそうです。読書に対する向き合い方を、静かに変えてくれる出会いでした。
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