トム・ハンクス主演、映画『オットーという男』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『オットーという男』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

冒頭の5分ほどで、この映画がリメイク版であることに気付きました。しかし、オリジナルのタイトルが思い出せないまま、最後まで観てしまいました。ストーリー自体は大体予想がつく展開だったものの、やはり名優トム・ハンクスが演じるだけで映画の印象がまったく違います。いや、正確には「魅せてくれた気がします」という表現がぴったりかもしれません。彼の持つ温かみと安心感のある演技によって、観ているこちらも自然と映画に引き込まれてしまうのです。

トム・ハンクスの存在感は、それだけで映画全体の価値を底上げしており、特別な大事件や派手な演出がなくとも、「いい映画」と思わせる力を持っています。実際、スウェーデン版の『幸せのひとりぼっち』と比べても遜色なく、心温まる人間ドラマとして十分に楽しめました。2時間という上映時間も短く感じられ、観終わった後にはほっこりとした満足感が残ります。

総じて、『オットーという男』はオリジナル版を知っている人も、初めて観る人も楽しめる秀逸なリメイク作品です。トム・ハンクスの演技を中心に、温かくユーモラスな日常ドラマを堪能できる、心に残る映画でした。

★★★★☆

作品概要

監督はマーク・フォースター。
原作はフレドリック・バックマンの「幸せなひとりぼっち」。
脚本はデヴィッド・マギー。
製作はリタ・ウィルソン、トム・ハンクスほか。
主演はトム・ハンクス、その他出演者にマリアナ・トレビーニョ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、レイチェル・ケラーほか。

2022年制作のアメリカのハートフル・コメディドラマ映画です。フレドリック・バックマンの小説「幸せなひとりぼっち」を原作とした2015年のスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』のハリウッドリメイクとなります。

作品の紹介・あらすじ

解説
フレドリック・バックマンの小説を原作にしたスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』を、『幸せへのまわり道』などのトム・ハンクス主演でリメイク。町で一番の嫌われ者だった男の人生が、向かいに暮らす一家との交流を通じて変化する姿を描く。監督は『プーと大人になった僕』などのマーク・フォースター。ドラマシリーズ「クラブ・デ・クエルボス」などのマリアナ・トレビーニョ、『スイートガール』などのマヌエル・ガルシア=ルルフォのほか、レイチェル・ケラーらが共演する。

あらすじ
オットー(トム・ハンクス)は、近所を散策して少しでもルールを破った者を見つければ説教するなど、不機嫌な態度や厳格すぎる言動で町の人々に嫌われていた。しかし実はオットーは、妻に先立たれ、仕事も失い、孤独と絶望にさいなまれていたのだった。自ら命を絶とうとするオットーだが、そのたびに向かいの家に越してきたマリソル一家の邪魔が入り、思いを遂げることができない。マリソルから小さい娘たちの子守や車の運転を頼まれたオットーは、彼らとのやりとりを通してある変化を感じる。

シネマトゥデイ

感想・その他

トム・ハンクス演じる主人公・オットーの頑固だけどどこか憎めない人間味や、人生に失望しながらも周囲との交流の中で少しずつ変わっていく様子に、心がじんわりと温まるような作品でした。物語の中では、オットーの“若き日”の姿も回想シーンとしてたびたび描かれるのですが、そこでふと思ったことがあります。

「この若きオットー役、せっかくならトム・ハンクスの息子が演じればよかったのに」と。
私は以前から、トム・ハンクスに俳優として活動している息子がいることを知っていたので、てっきりその彼が出演しているものと思い込んでいました。特に思い浮かべたのが、ドラマ『バンド・オブ・ブラザーズ』などにも出演していたコリン・ハンクス。トムの長男で、落ち着いた演技力にも定評があります。

しかし、冷静に考えるとコリンは2022年時点で45歳。若き日のオットーを演じるには、少し年齢が上すぎるかもしれないなと思い直しました。

ところが、です。
エンドロールを見て「えっ!」と驚きました。若きオットーを演じていたのは、コリンではなく、なんとトム・ハンクスの三男・トルーマン・ハンクスだったのです。彼の年齢は27歳。まさに役にぴったりの世代で、まったく違和感なく“若きトム”を演じていました。

言われてみれば、あの横顔、あの瞳の奥に宿る不器用さと誠実さは、どこかトム・ハンクス本人の若い頃と重なるものがありました。親子だからこそ出せる“空気感”なのかもしれませんね。

アメリカの映画業界でも、いわゆる「二世俳優」「親の七光り」と言われる存在は少なくないようで、今回のような起用にも賛否はあるかもしれません。でも、トルーマンの演技は自然体で、過剰な感情表現もなく、物語の中にうまく溶け込んでいました。個人的には好印象でした。

ちなみに、トム・ハンクスにはもう一人、コリンともトルーマンとも異なる息子がいますが、どうやらこちらはちょっと“問題児”との噂もあり、トムにとっては少々頭痛の種となっているようです。何かと話題に事欠かないハンクス家ですが、今回の『オットーという男』では、父と息子の連携がしっかりと映画の質に貢献していたように思います。

血のつながりが、スクリーンの中にもしっかりと息づいていた、そんな一本でした。

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