ダニエル・カルーヤ主演、映画『NOPE/ノープ』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『NOPE/ノープ』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

個人的に最も印象的で怖かったのは、チンパンジーが人を襲って殺すシーンでした。しかし、このシーンが映画全体の中で何を象徴しているのか、私には理解できませんでした。全編を通して、ひとつひとつのシーンにはいわくありげな空気が漂い、何か秘密や深い意味が隠されているのだろうと漠然と感じることはできますが、その正体や意図をつかむことはできませんでした。

最後の飛行物体との対決シーンについても、期待したほどの迫力やカタルシスはなく、少し物足りなさを感じました。それでも、映画全体に漂うノスタルジックな映像美や独特の色彩感、静かに張り詰めた不安感は魅力的で、映像作品としての完成度は高く感じます。特に、郊外の広大な空や夕暮れの光景など、どこか懐かしさを覚える映像表現には惹き込まれました。

総じて、『NOPE/ノープ』は明快なストーリーや答えを求めるタイプの映画ではなく、謎や不気味さを楽しむタイプの作品です。観終わった後も、何を伝えたかったのかを考えさせられる余韻があり、ホラーやSF、心理的スリルが好きな方には独特の魅力を感じられる映画と言えるでしょう。

★★★☆☆

作品概要

監督・脚本はジョーダン・ピール。
製作はイアン・クーパー、ジョーダン・ピール。
主演はダニエル・カルーヤ、その他出演者にキキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、ブランドン・ペレア、マイケル・ウィンコットほか。

2022年のアメリカのSF・スリラー映画です。『ゲット・アウト』『アス』などのジョーダン・ピールが監督、脚本、製作を務めています。

作品の紹介・あらすじ

解説
田舎町の上空に現れた謎の飛行物体をカメラに収めようと挑む兄妹が、思わぬ事態に直面する。『ゲット・アウト』でもピール監督と組んだダニエル・カルーヤ、『ハスラーズ』などのキキ・パーマー、『ミナリ』などのスティーヴン・ユァンのほか、マイケル・ウィンコット、ブランドン・ペレアらが出演する。

あらすじ
田舎町に暮らし、広大な牧場を経営する一家。家業を放って町に繰り出す妹にあきれる長男が父親と会話をしていると、突然空から異物が降り注ぎ、止んだときには父親は亡くなっていた。死の直前、父親が雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目にしていたと兄は妹に話し、彼らはその飛行物体の動画を公開しようと思いつく。撮影技術者に声を掛けてカメラに収めようとするが、想像もしていなかった事態が彼らに降りかかる。

シネマトゥデイ

感想・その他



ジョーダン・ピール監督による話題作『NOPE/ノープ』を観ました。独特な空気感と、ジャンルの枠に収まりきらない不穏さ、そして“見ること”そのものがテーマとなった構成に、最後まで緊張感を持って引き込まれました。

中でも印象的だった登場人物のひとりが、かつて人気子役だった男で、今は西部劇風のテーマパークを経営するジュープというキャラクター。この男、過去に出演していたシットコムの撮影中、共演していたチンパンジーが突如暴走し、スタッフや出演者を襲い、複数を死に至らしめるという惨劇に巻き込まれた――その現場で奇跡的に生き残ったという重い過去を背負っています。

このジュープを演じていたのが、スティーヴン・ユァン。韓国系アメリカ人俳優で、私を含め多くの人が、彼を『ウォーキング・デッド』のグレン・リー役として記憶しているのではないでしょうか。

私自身、かつては『ウォーキング・デッド』を楽しみにしていた熱心な視聴者でした。グレンはその中でも特に好感の持てるキャラクターで、誠実で勇敢で、時にコミカルな面も持ち合わせた“いいやつ”でした。だからこそ、あのシーズン7冒頭での残酷な最期には、ただただショックを受けました。バットで何度も殴られるあのシーン――過剰なまでに暴力的で、演出としてのリアリティを越えていると感じ、目を背けたくなったのをよく覚えています。あれ以降、私の中で『ウォーキング・デッド』への情熱は急速に冷め、以後のストーリーにもあまり心が動かなくなってしまいました。

だから今回、『NOPE』を観ながら「この俳優、どこかで見たことがあるな」と思いつつ、名前を確認するまでグレンと結びつけられませんでした。

彼の演じたジュープというキャラクターは、トラウマを無理やり笑いに変換し、自身の過去を“見せ物”にして生きる人物。虚構と現実、過去と現在がねじれたその人物像に、スティーヴン・ユァンの静かな表現力が見事にマッチしていました。

この記事を書くにあたってようやく彼が『ウォーキング・デッド』のスティーヴン・ユァンであることに気づいたわけですが、知った今ではもう一度『NOPE』を見返したくなっています。彼の演技を、あのシーンを、今度は“グレン”としてではなく、一人の実力派俳優としてじっくり味わいたい。そう思わせてくれる作品でした。

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