トニー・アイカー著『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》 の真相』を読んだ感想

2023年3月1日水曜日

ノンフィクション 読書

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私的評価

トニー・アイカー著・安原和見訳『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』を読みました。
図書館でたまたま見つけ面白そうなので借りました。

遭難者の日記などから、遭難した学生らの出発前から事故前日までがリアルに書かれています。著者が導き出した原因は私を納得させるものでした。しかし、現地での実験は無理でしょうが、なんらかの方法でそれを証明することが必要だったのではないでしょうか。
やはり翻訳本は苦手です。もう読み難くて仕方ありません。
とは言え、この奇妙な遭難事故の原因は何なのか。一つの仮説を導いてくれる最後まで、私を飽きさせることはありませんでした。

★★★★☆

『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』とは

単行本として河出書房新社より、2018年8月に出版されました。

内容説明
冷戦下ソヴィエトで起きた未解決遭難怪死事件。上着や靴を脱ぎ、3人は骨が砕け1人は舌を喪失、放射線検出。ネットで話題となった事件に米国人ジャーナリストが挑む! 『奇界遺産』の佐藤健寿氏大推薦!
世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》──
その全貌と真相を描く衝撃のノンフィクション! 1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事故。
登山チーム九名はテントから一キロ半ほども離れた場所で、この世のものとは思えない凄惨な死に様で発見された。
氷点下の中で衣服をろくに着けておらず、全員が靴を履いていない。
三人は頭蓋骨折などの重傷、女性メンバーの一人は舌を喪失。
遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出された。
最終報告書は「未知の不可抗力によって死亡」と語るのみ――。
地元住民に「死に山」と名づけられ、事件から50年を経てもなお
インターネットを席巻、われわれを翻弄しつづけるこの事件に、アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が挑む。
彼が到達した驚くべき結末とは…!

著者紹介
ドニー・アイカー
フロリダ生まれ。映画・テレビの監督・製作で知られる。新しいところでは、MTVの画期的なドキュメンタリー・シリーズ『The Buried Life』を製作。カリフォルニア州マリブ在住。

安原和見[ヤスハラ カズミ]
翻訳者。フィクション、ノンフィクションに多数の訳書があり。マティザック作品邦訳の多くを手がけている。他訳書に『B.C.1177』『ベリングキャット』『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズなど多数。

河出書房新社

感想・その他

もう少しこのディアトロフ峠事件について説明しましょう。
ディアトロフ峠事件(ディアトロフとうげじけん)とは、1959年2月2日の夜、当時のソ連領ウラル山脈北部で雪山登山をしていた男女9人が不可解な死を遂げたことで知られる事件である。事件は、ホラート・シャフイル山(マンシ語で「死の山」の意)の東斜面で起こった。事件があった峠は一行のリーダーであったイーゴリ・ディアトロフの名前から、ディアトロフ峠)と呼ばれるようになった。
当時の調査では、一行は摂氏マイナス30度の極寒の中、テントを内側から引き裂いて裸足で外に飛び出した(矛盾脱衣)とされた。遺体には争った形跡はなかったが、2体に頭蓋骨骨折が見られ、別の2体は肋骨を損傷、1体は眼球および舌を失っていた。さらに何人かの犠牲者の衣服から、高い線量の放射性物質が検出された。
事件は人里から隔絶した山奥で発生し生還者も存在しないため、いまだに全容が解明されず、不明な点が残されている。当時のソ連の捜査当局は「抗いがたい自然の力」によって9人が死に至ったとし、事件後3年間にわたって、スキー客や探検家などが事件の発生した地域へ立ち入ることを禁じた。
ソ連を引き継いだロシア連邦の最高検察庁は2020年7月13日、雪崩が原因との見解を示した。

Wikipedia

これだけの情報を読むだけでも、ディアトロフ峠事件がいかに常軌を逸した、謎に満ちた遭難事件であるかが伝わってきます。まさに“不可解”という言葉がぴったりで、読み進めるうちにこちらの想像力までかき立てられずにはいられません。

なかでも強烈に印象に残るのが、「1体は眼球および舌を失っていた」という記述です。単なる遭難では説明しきれない異常な状況であり、まるでホラー映画のワンシーンのような不気味さがあります。さらに追い打ちをかけるように、「犠牲者の衣類から高い線量の放射性物質が検出された」とあれば、読者の頭には“宇宙人の関与”や“軍の極秘実験”、“未知の兵器”といったSFまがいの想像が次々に浮かんでしまうのも無理はありません。

こうした一つひとつの要素が、どれも現実離れしており、しかもそれらがすべて一つの事件の中で同時に起こっているのですから、事件はまさに“説明不能”としか言いようがありません。ましてや生存者が一人もいないとなれば、真相を語る声すら存在しない。状況証拠と物理的な痕跡だけで、何が起こったのかを推理するしかない――この事件が、世界中の研究者やジャーナリスト、そしてミステリー愛好家たちの関心を集め続ける理由がよくわかります。

そんな事件に挑んだのが、今回私が読んだ一冊の本。360ページにもおよぶ分厚い本でしたが、読む手が止まらなくなるほど惹き込まれました。著者は、当時の記録や捜査資料、法医学的な知見、さらには気象データや地形分析に至るまで、ありとあらゆる情報をもとに事件の再構成を試みています。そうしてたどり着いた“著者なりの結論”が語られるのは、終盤のわずか30ページほど。しかし、その30ページには、それまで積み上げられた考察のすべてが凝縮されており、まさに「集大成」と呼ぶにふさわしい内容でした。

なぜ彼らは極寒の山中で、テントを自ら破ってまで外に飛び出したのか。なぜ争いの痕跡もないのに、重度の損傷を負っていたのか。そして、なぜ衣類に放射性物質が付着していたのか。そのすべてに、著者はひとつずつ理詰めで答えていきます。特に、当時のソ連が抱えていた政治的・軍事的背景にまで踏み込んだ分析は、非常に興味深く、読み応えがありました。

ただし、著者の仮説がどれほど緻密で説得力のあるものであっても、最終的にはやはり“科学的な検証”が必要だというのが私の率直な感想です。すべての状況証拠がそろっているわけではなく、また機密情報や未公開資料がある可能性も否定できません。そうした前提がある以上、「これが真相だ」と断定するには、まだ時期尚早なのかもしれません。

それでも、本書を通じて事件の全貌に少しでも近づけた気がしたのは確かです。そして、この事件を語るときに大切なのは、“想像を広げること”ではなく、“想像に溺れず、可能性を一つずつ検証していくこと”なのだと、改めて感じさせられました。



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1964年生まれ。糖尿病を患ってから、自転車と歩くことを趣味にしています。毎日クスリ飲んでます。

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