私的評価
映画『ゾディアック』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
新しい作品だと思い込んでいましたが、実際には15年ほど前に制作された158分という長尺の映画でした。その長さにも関わらず、退屈することなく最後まで観られるのは、実在したゾディアック連続殺人事件という強烈な題材と、緊張感ある描写のおかげです。
映画は、実際の事件に翻弄される警察官や記者たちの葛藤を丹念に描いています。事件の不可解さや犯人特定の困難さ、日々増えていく犠牲者への焦燥感が、リアルに伝わってきました。原作がノンフィクションということもあり、映画の結末は事件同様、モヤモヤとしたまま終わります。解決されない疑問や、答えの出ない不安がそのまま残るラストは、観る者に深い印象を与える一方で、どうしてもスッキリとした満足感には欠けるのも事実です。
個人的には、もしフィクションとして脚本家の推理や想像を大胆に盛り込み、独自の結末を描く形にしていたら、もう少しカタルシスを感じられたかもしれません。それでも、史実に基づく冷徹な描写と、事件の不可解さを忠実に再現した点には評価すべきものがあります。
総じて、『ゾディアック』は長尺ながらも、連続殺人事件の恐怖や警察・記者たちの苦悩をじっくり味わえる重厚な作品です。事件の顛末を知りつつも、事件の謎に翻弄される登場人物たちと共に観ることで、現実の恐怖をリアルに体感できる映画でした。
★★★☆☆
作品概要
監督はデヴィッド・フィンチャー。脚本はジェームズ・ヴァンダービルト。
原作は ロバート・グレイスミスの同名小説です。
製作はジェームズ・ヴァンダービルト、マイク・メダヴォイほか。
主演はジェイク・ジレンホール、その他出演者にマーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワードほか。
2007年製作のアメリカのサスペンス・スリラー映画です。アメリカで実際に起こった連続殺人事件(ゾディアック事件)の真相を追い、解決に挑む男たちの物語です。監督は『セブン』、『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャーです。
作品の紹介・あらすじ
解説
アメリカ犯罪史上最も危うい連続殺人鬼と言われる“ゾディアック・キラー”を題材にした話題作。ゾディアックに関わり、人生を狂わされた4人の男たちの姿を描く。監督は『セブン』のデビッド・フィンチャー。『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが、事件の謎を追い続ける風刺漫画家を演じる。徹底したリサーチを基に練り上げられたサスペンスとしても、4人の男たちの生き様をリアルにつづった人間ドラマとしても楽しめる。
あらすじ
1969年、自らを“ゾディアック”と名乗る男による殺人が頻発し、ゾディアックは事件の詳細を書いた手紙を新聞社に送りつけてくる。手紙を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール(ロバート・ダウニーJr)、同僚の風刺漫画家ロバート(ジェイク・ギレンホール)は事件に並々ならぬ関心を寄せるが……。
シネマトゥデイ
感想・その他
物語の中盤で、事件から距離を置くサンフランシスコ市警察官ウィリアム・アームストロング役として、アンソニー・エドワードが出演しているのに気づきました。多くの方には「誰それ?」と思われるかもしれませんが、彼こそがあの『トップガン』(1986年)でトム・クルーズの相棒「グース」を演じた俳優なのです。そう、『トップガン マーベリック』の大ヒットに沸く中、その前作で鮮烈な印象を残したあのグースです。さらに言えば、私が大好きな海外連続ドラマ『ER緊急救命室』で主要キャストの一人、マーク・グリーン役をなんと8シーズンにもわたって演じていたのも彼、アンソニー・エドワードです。あのドラマは1994年から2009年まで続きましたが、彼の演技がドラマの重要な軸になっていました。

ちなみに、『ER緊急救命室』の最終シーズン8は2002年に放送されましたが、その頃には彼はすでにかなり薄毛が進行しており、視聴者の私としては「うわ、変わったなあ」と感じたものです(画像の真ん中に写っています)。ところが、この『ゾディアック』(2007年)での彼の姿は、あの頃の面影とはかなり違っています。年齢の影響でしょうか、だいぶ印象が変わってしまいました。
でも、いくら映画の中で別人のように見えても、長年『ER』のマーク・グリーンとして親しんできた私の目は誤魔化せません。ファンとしてはちょっとした驚きと懐かしさが交錯する瞬間でした。こうした発見もまた、映画鑑賞の楽しみの一つだと感じています。
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