私的評価
ねじめ正一著『ナックルな三人』を図書館で借りて読みました。先日読んだ『認知の母にキッスされ』がとても面白く、ねじめ正一ファンととなりました。現在も同氏の著作を図書館で二冊予約中です。
『認知の母にキッスされ』では、若年性認知症を発症したねじめ氏の友達が出てきて、その人を題材にした小説を書きたい、確かそんな記述があったので、まさしくこの本がそうなんででしょう。
ひょんなことから再会した中男性二人と、ナックルボールから繋がった中年女性のタマちゃんが織りなす大人の青春・恋愛ドラマです。認知症や介護を扱った本ですが重くなく、始めから終わりまで心が温まる心地よい話でした。
★★★★☆
『ナックルな三人』とは
出版社は文藝春秋、発売日は2017年10月26日。内容紹介
詩人兼絵本作家と若年性認知症の画家が、一人の女性をめぐり繰り広げる、遅れてきた青春。中年男女三人のかけがえのない時間が胸に響く。
著者紹介
ねじめ正一[ネジメ ショウイチ]
1948年東京都生まれ。青山学院大学経済学部中退。父は俳人のねじめ正也。阿佐谷パール商店街で「ねじめ民芸店」を営む。81年、詩集『ふ』で第31回H氏賞を、89年、小説『高円寺純情商店街』で第101回直木賞を、2008年、小説『荒地の恋』で第3回中央公論文芸賞を、09年、小説『商人』で第3回舟橋聖一文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
紀伊國屋書店
感想・その他
タイトルにもある「ナックル」という言葉から、野球の投手が投げる球種の一種なのは分かっていましたが、実際に読んでみて「ナックルボール」という球種について初めてしっかりと知ることができました。「ナックルボール」とは、簡単に言えば“無回転”のボール。普通の投球とは異なり、ボールにほとんど回転がかかっていないため、空気の抵抗で軌道が不規則に揺れ動く、非常に捉えにくい球です。投げた本人ですら、どこに行くか分からないという、まさに“魔球”。YouTubeなどで実際の映像を見てみましたが、確かにあのふわりとした奇妙な軌道は、見慣れたピッチングとは全く別物で、「これを打つのは至難の業だな」と素直に思いました。まさに「魔球」という表現がぴったり。見ているだけでワクワクしてきます。
物語の中で、この“ナックル”という球種が象徴しているのは、きっと人間の不確かさや人生の予測不可能さなのだと思います。主要登場人物である三人の男たちは、それぞれに人生や恋愛においてまっすぐには進めず、あっちに逸れたり、予想外の動きを見せたりしながら、自分たちの道を模索しています。その姿が、まさにナックルボールのように思えました。
とはいえ、読み進めるうちに、「ナックルな」日々を経て、彼らの思いや人間関係が少しずつ変化していく様子には、どこか希望のようなものも感じられます。石黒を除いた二人に関しては、最後にはナックルのような揺れからスッと直球に切り替わり、大人の恋がスバッと決まるのでは…と、そんな予感もしています。
ナックルボールを知ることができただけでも興味深い読書体験でしたが、それ以上に、揺れながらも前に進もうとする三人の姿に、思わず自分を重ねてしまうような、不思議な魅力を持った一冊でした。
ほぼ無回転で放たれたボールは左右へ揺れるように不規則に変化しながら落下する。その様は「氷の上をつるつる滑るような変化」「木の葉がひらひらと落ちるような変化」と形容される。右へ曲がったボールが左に曲がって戻って来るなど、常識的には考えにくい不規則な変化から、時として現代の「魔球」と呼ばれる。ただしその変化は打席に立っていないと分かりにくく、球速も遅い(100-110km/h前後)ため、スタンドの観客にとってはただのスローボールのようにも見える。ナックルの描く軌道は打者はおろか受ける捕手や投手本人にすら全く予想がつかないものであり、球種が分かっていても容易に打てる球ではない。そのため、ナックルだけを投げ続ける投球で打者を抑えることも可能である。
欠点としては同じように投げても、変化が小さいとただの遅い球になってしまう可能性があることや、不規則な変化のために緻密なコントロールは不可能で、相手の欠点をつく投球、状況に応じた配球というのは難しいことなどが挙げられる。そのため、ナックルボーラーには打者との駆け引きよりもナックルの投球に集中する事が要求される。また、自然条件の影響(風向き、風速、天候、湿度など)を受けやすく、投球内容に大きく差が出てしまうこともある。また捕球も難しく、ナックルボールを捌ける捕手に限定されてしまう。
Wikipedia
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