私的評価
喜多川泰著『運転者 未来を変える過去からの使者』をAmazonのPrime Readingで読みました。購入した本や、図書館で借りた本が無くなった時は、AmazonのPrime Readingで面白そうな本を探して読んでいます。そんな中でダウンロードしたのがこの『運転者 未来を変える過去からの使者』でした。この前にPrime Readingで読んだ近藤史恵さんの『昨日の海は』も面白かったし、プライム会員で無料で読めるPrime Reading最高です(もっと本の数が増えるといいけどな)。
なんだか心が温まり、ホッとする物語でした。「運」は良いや悪いではなく、貯めて使うこと。そして貯めた運は次世代に残しておける。そんな風に思うことができれば、ちょっとばかり運がなくても前向きになれるかな、そう感じることができました。それにしても私は、30歳くらいまでに借金をして運を使い果たし、それから使い果たした運を返済している感じの今現在です。
★★★★☆
『運転者 未来を変える過去からの使者』とは
内容紹介
「…なんで俺ばっかりこんな目に合うんだよ」思わず独り言を言った、そのときだ。ふと目の前に、タクシーが近づいてくるのに気づいた。累計80万部喜多川泰、渾身の感動作!報われない努力なんてない!
著者紹介
喜多川泰[キタガ ワヤスシ]
1970年生まれ。愛媛県出身。東京学芸大学卒。1998年横浜に学習塾「聡明舎」を創立。人間的成長を重視した全く新しい塾として注目を集める。2005年『賢者の書』(ディスカヴァー)にて作家活動を開始。『君と会えたから…』『手紙屋』『株式会社タイムカプセル社』(以上すべてディスカヴァー)など続々とベストセラーを発表する。2013年には『「また必ず会おう」と誰もが言った。』(サンマーク出版)が映画化され全国一斉ロードショー。他にも『心晴日和』(幻冬舎)、『書斎の鍵』(現代書林)など、意欲的に作品を発表。その活躍は国内にとどまらず、中国、韓国、台湾などでも人気を博す。
紀伊國屋書店
感想・その他
人生における「運」とは何なのか——この本はそんな、普段なんとなく口にしているけれど、深く考えたことのない問いを、物語を通して静かに私たちに投げかけてきます。主人公は、人生に行き詰まり、自分の不遇を「運のせい」にしていた男。そんな彼の前に、ある日突然「運転者」と名乗る不思議なタクシードライバーが現れます。彼の運転する車の中で、主人公は自分の過去と向き合い、他者の思いと向き合い、やがて「運」の本当の意味に気づいていく——という一種の“気づき”の物語です。
読んでいる最中、何度も出てくる「運がいい」「運が悪い」といった言葉に、私はなぜかさだまさしさん(グレープ時代)の名曲『無縁坂』を思い出していました。あの歌の中の一節——
「運がいいとか悪いとか、人は時々口にするけど」
このフレーズが、まるでこの本のテーマそのもののように、心の中に何度も繰り返し流れてきました。
『無縁坂』に描かれる母親は、貧しさと苦労を背負いながら、誰にも頼らず、強く生きた女性。自分のために「運」を使うこともなく、ただ息子のために尽くして人生を終えるような、いわば“薄幸”の象徴のような存在です。しかし、『運転者』を読んでいると、ふとこんなことを思ったのです。
——もし「運」は自分だけのものではなく、大切な誰かのために“貯める”ことができるものだとしたら?
——もし、自分が使わなかった「運」は、誰かの未来を照らすために残されるのだとしたら?
そう考えると、『無縁坂』の母親が人生で手にすることのなかった「運」は、すべて息子に託されたものだったのではないかと思えてきます。母親は、自分の幸せのためではなく、息子の幸せのために生きた。それは決して「運が悪い」人生などではなく、むしろ「誰かに運を残す」という最も尊い選択だったのではないでしょうか。
『運転者』もまた、そうした“目には見えない贈り物”の存在を描いた物語でした。人は一人では生きられないし、自分が受け取っている「運」には、過去の誰かの想いや行動が宿っている。そう思うと、自分の人生の見方が少しずつ変わっていくのを感じます。
ページを閉じたあとも、『無縁坂』のメロディがずっと心に流れ続けていました。読後感としてはとても静かであたたかく、気づかされることの多い一冊でした。
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