私的評価
浅田次郎著『わが心のジェニファー』を図書館で借りて読みました。図書館で浅田次郎コーナーをチェックしていて題名が気になり、本の裏表紙の内容説明を読んで「これは面白そうだ」となり、借りることにしました。
浅田次郎氏のユーモアたっぷりの文章は健在で、最後まで一気に読むことができました。しかし、小説としての私の評価は、晴れのち曇りでした。最初は面白く読めますが、だんだんと違和感を感じ、最後の件は感動するところなのでしょうが、何だか白けムードさえ漂い興ざめしてしまいました。
★★★☆☆
『わが心のジェニファー』とは
内容説明
日本びいきの恋人ジェニファーから、結婚を承諾する条件として日本への一人旅を命じられたアメリカ人青年ラリー。ニューヨーク育ちの彼は、退役海軍少将の祖父に厳しく育てられた。太平洋戦争を闘った祖父の口癖は「日本人は油断のならない奴ら」。日本に着いたとたん、成田空港で温水洗浄便座の洗礼を受ける。京都では神秘の宿に感銘し、日本女性のふたつの顔を知る…。異国の地で独特の行動様式に戸惑いながら列島を旅するラリー。やがて思いもよらぬ自分の秘密を知ることに…。圧倒的読み応えと感動。浅田文学の新たな到達地点!
著者等紹介
浅田次郎[アサダ ジロウ]
1951年東京生まれ。『地下鉄(メトロ)に乗って』で吉川英治文学新人賞、『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞、『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、『お腹召しませ』で司馬遼太郎賞と中央公論文芸賞、『中原の虹』で吉川英治文学賞、『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を受賞。2015年紫綬褒章を受賞。『蒼穹の昴』『シェエラザード』『わが心のジェニファー』『獅子吼』など著書多数。
紀伊國屋書店
感想・その他
この本は、アメリカ人の目から見た「日本再発見の旅」を、日本人である浅田次郎氏の目線で描いたエッセイ集です。とはいえ、単なる日本人の視点ではなく、外国人旅行者の取材や実体験から得た具体的な情報がふんだんに盛り込まれているように感じました。きっと浅田氏自身が多くの外国人と対話し、その感性を吸収した上で書き上げたのではないでしょうか。例えば、「顔をぶつけてしまいそうなほどピカピカに磨き上げられた窓ガラス」や、「文房具から下着まで、生活に必要なものが何でも揃ってしまうコンビニエンスストア」といった表現。私たち日本人にとってはあまりにも当たり前すぎて見過ごしてしまう光景ですが、外国人の目には驚きと感動を伴って映るのだということを改めて教えられます。日常の風景や仕組みも、見方を変えれば驚くほどユニークで魅力的なのだという事実に、思わずハッとさせられました。これはまさに、自分たちの「普通」を客観視できる貴重な体験です。
私は以前から、日本を旅する外国人を取材するドキュメンタリー番組や、「日本好きな外国人を日本に招待する」という趣旨のテレビ番組が大好きでよく見ますが、この本を読んでいても同じような感覚を覚えました。彼らが日本をどのように見て、どんな部分に感動し、どこで驚くのか。それを浅田次郎という筆致豊かな作家の視点を通して知ることで、日本の魅力がより鮮やかに浮かび上がってきます。「日本ってやっぱり素敵な国なんだな」と、ページをめくるたびに再発見の連続でした。
ただ一つ、どうしても残念だったのは、本の結末です。せっかくの旅路が最後に少し急ぎ足になったような印象があり、もう少し余韻を楽しみたかったというのが正直なところです。とはいえ、それを差し引いても、この本は「日本を見つめ直すきっかけ」として十分すぎるほどの価値がありました。
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