佐藤浩市主演、映画『サイレント・トーキョー』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『サイレント・トーキョー』を観ました。
レンタルDVDでの鑑賞です。

原作は秦建日子の小説で、舞台はクリスマスシーズンの東京。多くの人々で賑わう街を襲う連続爆破事件を描くということで、予告編を見た時から「スケール感のあるサスペンスが楽しめるのでは」と期待していました。特に渋谷の街頭スクリーンや駅前広場といった、日常的に目にする場所が舞台になっているだけに、その非日常感にはワクワクしました。

しかし、いざ視聴してみると、その期待はあまり満たされませんでした。確かに渋谷の街を舞台にした爆破シーンは迫力があり、「ここまでやるのか」と思わせる映像的な見応えはありましたが、印象に残ったのは正直そこだけ。犯人の人物像やトリックに意外性はなく、物語が進むにつれて展開が読めてしまう部分が多く、スリリングさに欠ける印象でした。

さらに、犯人が犯行に及ぶ動機が非常に希薄に感じられました。社会的なメッセージや個人的な怨恨など、もっと深く掘り下げられる余地はあったのに、それが描かれず表面的な印象が拭えません。キャラクター同士の関係性や心理描写も浅く、感情移入しづらいまま物語が進んでしまった印象です。

そして何より残念だったのがラスト。緊張感を高めて迎えるクライマックスのはずが、唐突で整理しきれない展開で終わり、「結局どういう結末だったの?」というモヤモヤだけが残りました。せっかくの豪華キャストや都市型サスペンスという題材を活かしきれず、もったいなさを感じてしまった作品でした。

★★☆☆☆

作品概要

監督は波多野貴文。
原作は秦建日子の『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(河出文庫刊)。
脚本は山浦雅大。
製作は在原遥子、川田亮、長谷川晴彦、小柳智則ほか。
出演は佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、勝地涼、毎熊克哉ほか。

2020年12月公開の日本映画です。原作は『アンフェア』シリーズなどの秦建日子。ジョン・レノンの楽曲「Happy Xmas(War Is Over)」に影響されて執筆した小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』を映画化したサスペンス映画です。

作品の紹介・あらすじ

解説
秦建日子の小説「And so this is Xmas」を原作に描くサスペンス。『SP』シリーズなどの波多野貴文が監督を務め、聖夜に東京で起きた連続爆破事件に巻き込まれた人々を映し出す。『64-ロクヨン-』シリーズなどの佐藤浩市が主演を務め、『マチネの終わりに』などの石田ゆり子、『MOZU』シリーズなどの西島秀俊のほか、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海、勝地涼らが脇を固める。

あらすじ
クリスマスイブの12月24日、東京・恵比寿に爆弾を仕掛けたという電話がテレビ局にかかってくる。半ば疑いながら中継に向かった来栖公太(井之脇海)と、ちょうどその場所に居合わせた主婦の山口アイコ(石田ゆり子)の二人は犯人のわなにはまり、実行犯に仕立てあげられる。朝比奈仁(佐藤浩市)がその様子を遠巻きに眺める中、爆発が起き、次回の犯行予告が動画サイトに投稿される。

シネマトゥデイ

感想・その他

「奇跡の50代」――そんなふうに形容され、雑誌やテレビで何かと神格化されることの多い女優・石田ゆりこさん。確かにその言葉どおり、年齢を重ねてもなお自然体で美しく、柔らかい雰囲気をまとっている彼女に憧れる人は多いようです。私の身近にも同世代の女性はいますが、正直、彼女のような印象を持つ人はそうそういません。それでも私は、その「奇跡の50代」という称賛を聞くたびに、「本当にそこまで?」と少し斜に構えてしまう自分がいるんです。もちろん、彼女に恨みや特別なわだかまりがあるわけではありません。ただ、どこか自分でもよくわからない距離感や引っかかりがあって、「なぜか素直に好きになれない」という感情を抱いてしまっているのだと思います。

そんな私が初めて石田ゆりこさんを知ったのは、1991年放送の大ヒットドラマ『101回目のプロポーズ』でした。武田鉄矢演じる不器用で優しい主人公・星野達郎と同じ会社に勤める受付嬢役で、今では別人となってしまった俳優・竹内力さんに恋心を寄せる女性を演じていました。主人公の恋模様を描く物語の中で、彼女の役は決して主役級ではなかったものの、出番は多く、その透明感のある存在感はしっかり印象に残りました。

ただし、その頃の彼女を今の目で思い出そうとしても、どうしても現在の洗練された顔立ちしか浮かんできません。気になってネットで当時の写真を検索してみると、30年以上前の石田ゆりこさんの姿は、今よりも素朴で少し野暮ったい印象さえありました。髪型やメイクも今とは全く違い、まだ垢抜ける前の“若さ特有の不器用さ”のようなものを感じます。

しかし、そこから時を経て、現在の彼女を見るとその変化には目を見張るものがあります。年齢を重ねるごとに柔らかさと知性が加わり、スタイルやファッションも洗練され、かつ自然体。歳を取ることで魅力が増すという稀有なタイプなのかもしれません。気づけば、私の心のどこかで「奇跡の50代」という言葉に少しうなずいてしまっている自分がいるのです。ちょっと悔しい気持ちはありますが、その進化を認めざるをえない――そんな複雑な感情を抱かせる存在、それが私にとっての石田ゆりこさんなのだと思います。

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