私的評価
映画『ロング・トレイル!』を観ました。レンタルDVDでの鑑賞です。
邦題の「ロング・トレイル」から、大自然の中を歩きながら景色を楽しむドキュメンタリーのような作品を想像していたのですが、実際にはまったく違いました。本作は、ヒューマン・ドラマとしての色合いが強く、二人の主人公が人生や友情に向き合いながら旅をする姿を描く物語です。壮大な自然の景観はもちろん登場しますが、それ以上に、登場人物たちの会話やちょっとしたトラブル、ユーモアや葛藤といった人間ドラマが中心でした。
とはいえ、飽きることなく100分間をゆったりと楽しめる作品でした。登場人物たちの個性や間合い、道中で起こるささやかなハプニングが程よいスパイスになっており、観終わったあとには、肩の力を抜いてほっこりとした余韻が残ります。
個人的には、原題の『A Walk in the Woods』(森の中を歩く)のほうが、映画の内容や雰囲気にずっとマッチしていると感じました。邦題の「ロング・トレイル!」からは冒険や過酷さが連想されますが、実際にはもっと柔らかく、人生の小さな旅路を描いた作品なのです。
★★★☆☆
作品概要
監督はケン・クワピス。脚本はリック・カーブ、ビル・ホールダーマン。
原作はビル・ブライソンの『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験 北米アパラチア自然歩道を行く』です。
制作はロバート・レッドフォード、ビル・ホールダーマン。
出演はロバート・レッドフォード、ニック・ノルティ、エマ・トンプソンほか。
ノンフィクション作家であるビル・ブライソンの紀行本『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験 北米アパラチア自然歩道を行く』が原作の、2015年にアメリカ合衆国で製作された冒険映画です。
作品の紹介・あらすじ
解説
作家ビル・ブライソンの実話を基にした著書を、ロバート・レッドフォードが主演と製作を務めて映画化。ルックスも性格も全く違うシニア男性二人組が、およそ3,500キロに及ぶアメリカの自然歩道「アパラチアン・トレイル」踏破の旅の中で、自身の人生を見つめ直すさまを映す。監督は『だれもがクジラを愛してる。』などのケン・クワピス。ロバートふんする主人公と一緒に旅する相棒を、『白い刻印』などのニック・ノルティが演じるほか、オスカー女優エマ・トンプソンが共演。
あらすじ
60歳を過ぎ故郷での平穏な日々に物足りなさを感じていた作家のビル(ロバート・レッドフォード)は、ふと約3,500キロ続くアメリカの自然歩道「アパラチアン・トレイル」の踏破を考える。旅の相棒に酒好きで型破りな旧友カッツ(ニック・ノルティ)が名乗りを上げ、 旅がスタートする。ところが体力の衰えや、自然の猛威という現実に直面し……。
シネマトゥデイ
感想・その他
以前観た映画に『WILD』(邦題「私に会うまでの1600キロ」)という作品があります。人生の岐路に立った若き女性が、パシフィック・クレスト・トレイルの1600kmを約三か月かけて歩き、自分自身と向き合いながら成長していく物語です。壮大な自然の映像と、主人公の内面に寄り添った丁寧な描写が心に残る感動作でした。今回観た今作にも、同じように自分を見つめ直すための冒険としての「歩く旅」が描かれていると聞き、期待してレンタルDVDを手に取りました。確かにテーマとしては似ており、友情や人生の再評価といった要素も含まれています。しかし、映像美や物語の深みという点では、どうしても『WILD』と比べると薄っぺらく感じてしまいました。雄大な自然の景観は登場するものの、そこに人物の感情や葛藤が絡み合うことで生まれる感動や説得力が、やや弱い印象です。
また、ロバート・レッドフォードは年齢を重ねた魅力で存在感を発揮していますが、ニック・ノルティ演じるカッツの体形を見ると、正直突っ込みたくなります。「それじゃ一日も歩けないだろう!」と。冒険の最初の数百メートルで息を切らしていたかと思えば、その後は何日も歩き続けているにもかかわらず余裕すら感じさせる歩きっぷり。しかも全然痩せていない…これは現実的にはありえません。そう考えると、リアリティという点でもやや物足りなさを感じました。
観終わった後、どうしても『私に会うまでの1600キロ』をもう一度観たくなりました。自然の美しさと人間ドラマの融合、そして主人公の成長が鮮明に描かれているあの作品には、やはり及ばないと実感します。
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