私的評価
イギリスの犯罪ドラマテレビシリーズ『埋もれる殺意』シーズン1,2を観ました。Amazonプライムビデオでの視聴です。
このドラマの特徴は、派手な演出や過剰なアクションに頼らず、非常に淡々と事件が描かれる点です。しかし、その落ち着いた進行こそが、かえって視聴者を物語に引き込む力になっています。事件の背景や登場人物の心理描写が丁寧に描かれているため、登場人物の一挙手一投足に自然と目が向き、ドラマの世界に没入できるのです。
さらに面白いのは、最初の段階で容疑者が数人に絞られ、視聴者自身も犯人を推理できる楽しみがあることです。伏線やヒントが巧妙に散りばめられており、次に何が起こるのか予測しながら観ることができます。そのため、一気に観進めたくなる中毒性があります。登場人物同士の微妙な人間関係や過去の事情が事件に絡むため、単なる推理劇以上の奥行きがあり、最後まで飽きることがありません。
淡々とした描写の中に緊張感とサスペンスがしっかりと保たれているこのシリーズは、じっくりと推理を楽しみたい方や、緻密な人物描写を味わいたい方に特におすすめです。シーズン1、2を通して観ても、その巧みな構成と心理描写の深さに引き込まれること間違いなしです。
★★★★☆
作品概要
監督はアンディ・ウィルソン。脚本・製作はクリス・ラング。
主演はニコラ・ウォーカー、共演者にはサンジーヴ・バスカー、トレバー・イブほか。
シーズン1『埋もれる殺意~39年目の真実~』(全6話)は2015年に放送。
シーズン2『埋もれる殺意~26年の沈黙~』(全6話)は2017年に放送。
イギリスの犯罪ドラマテレビシリーズです。2人のロンドンの刑事、キャッシー・スチュアートとサニル・カーンと仲間が、忘れ去られた失踪・殺人事件を解決していきます。
2020年度現在、シーズン3まで放送され、なんでもシーズン4も予定されているようです。
作品の紹介・あらすじ
『埋もれる殺意~39年目の真実~』あらすじ
取り壊された建物の地下室から白骨遺体が発見された事から始まる。容疑者は4人、牧師のロバート、認知症の妻と暮らす車椅子生活のエリック、実業家のフィリップ、夫婦でサッカーチームを支援するリジー。39年前の未解決事件の真相を探るべく、警部キャシーと相棒サニーを中心とした捜査チームが動き出す!
誰もが持つ秘密…その秘密を守ろうとする行為が捜査を遅らせる中、身近な人の秘密が明らかになった時、家族や周りの人はそれらを受け入れることが出来るのか…。苦悩や葛藤、後悔など、様々な感情が描かれている本作。はたして、キャシーたちは事件の真相にたどり着くことはできるのか…⁉
AXNミステリー
『埋もれる殺意~26年の沈黙~』
あらすじ
ロンドン北東部の川でスーツケースに入った遺体が発見され、キャシーとサニーは現場へ向かう。遺体は鹸化し保存状態はいいが、死亡時期の特定は難しい。遺留品の腕時計の内ふたに「W・スミス」という職人の署名と2つの修理日が刻まれてあり、遺体の胸腔にはさびた刃先とポケベルの残骸が残っていた。サニーはロンドン中心部の時計店を回り、W・スミスの関係者を突き止め、取引記録からD・ウォーカーという人物が浮上して……。
WOWOW
感想・その他
最初に、容疑者としておおよそ4人ほどが特定されますが、それぞれが非常に怪しい人物で、何かを隠しているのは間違いありません。その秘密は、現在の生活や立場を守るためのものであったり、過去の出来事に関わるものであったりします。ドラマの中では、それが殺人容疑に絡むことで緊張感が生まれますが、現実世界でも人々は大なり小なり、他人には言えない過去や秘密を抱えながら生活しているものです。しかし、殺人容疑と天秤にかけるほどの過去を本当に持っている人が、どれくらいいるのかと考えると、やはりフィクションならではの刺激的な設定だと感じます。また、このシリーズではLGBTの描写も目立ちます。特に男性同士の「G」の関係が描かれる場面があり、海外ドラマや映画では比較的よく見かけるテーマではあります。私自身はLGBTに偏見を持っているわけではありませんが、最近のドラマや映画でこのテーマがややトレンド的に扱われすぎている印象を受けることがあります。この『埋もれる殺意』シリーズでも、シーズン1、2ともに同様の描写が含まれており、ストーリーの本筋に比べると少し強調されすぎている感は否めません。
それでも、この描写も含めて、登場人物たちが抱える秘密や葛藤が物語に深みを与えている点は評価できます。容疑者一人ひとりの背景や心理状態が丁寧に描かれることで、ただの推理劇ではなく、人間ドラマとしての重みが加わっているのです。こうした複雑な人物描写があるからこそ、『埋もれる殺意』は単なる犯罪ドラマ以上の魅力を持っていると感じます。
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