群ようこ著『ついに、来た?』を読んだ感想

私的評価

群ようこ著『ついに、来た?』を読みました。

早く続きが読みたい。そんな私の希望を打ち砕いて、話は中途半端で終わってしまいます。それからが知りたいのに、それからが書かれていません。もっと踏み込んだ結末が欲しいところでしたが、「そういうのは介護記録書でも読んでください」ということなのでしょうか。
妻が好きでよく読んでいる「群ようこ」作品。親の「老い」をテーマにしていると聞いたので、初めての「群ようこ」作品でしたが読んでみました。軽い文体で、サクサク読めて面白かったです。

★★★☆☆

『ついに、来た?』とは

内容説明
父の死後、年下の男に奔ったサチの母。七十歳で出戻ってきたが、どうも様子がおかしい(「母、出戻る?」)。専業主婦のマリは義父のボケを疑い、検査を受けさせたいが、横暴な夫は断固反対する(「義父、探す?」)。働いたり、結婚したり、出産したりしているうちに、親たちの「老い」という問題がやって来た!?シリアスなテーマを、明るく綴る。

目次
・母、出戻る?
・義父、探す?
・母、歌う?
・長兄、威張る?
・母、危うし?
・伯母たち、仲良く?
・母、見える?
・父、行きつ戻りつ?

著者等紹介
群ようこ[ムレ ヨウコ]
1954年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。数回の転職を経て、78年、本の雑誌社に入社。デビュー作『午前零時の玄米パン』が評判となって、作家専業に。大人気シリーズ“無印物語”をはじめ、エッセイなど著書多数

紀伊國屋書店

感想・その他

なぜこの本を読もうと思ったのか。それは、私自身も「親の老い」という現実に直面し、切羽詰まった状態にあるからです。父は86歳、母は82歳(令和2年6月現在)で、特に母の物忘れの様子が気がかりです。認知症の一歩手前の状態ではないかと、日々不安を抱えています。実際に医師に診てもらったところ「脳の萎縮は認められない」との診断で、認知症とは言われませんでした。しかし、同じことを何度も繰り返し、何回聞かせても忘れてしまう――その繰り返しが、日常の中で大きな心配の種になっています。

こうした症状を単なる老化現象として受け入れられれば気が楽なのですが、私の場合、それはどうしても希望的観測に過ぎません。本の中でも、登場人物たちは記憶が一時的に戻ると「やはり気のせいだったのか」と喜び、またおかしな言動があると「やはりダメか」と落胆します。私もまったく同じ気持ちを抱くことがあり、その心理の揺れが手に取るように理解できました。

実際、1年前には「手がしびれる」「腕が上がらない」といった状態が続き、何もできない時期もありました。しかし今では、その症状も改善し、台所に立って料理を作ることができるまでに回復しています。物忘れは相変わらずですが、一年前から認知症的症状が大きく進行したようには見えません。「どうぞ、そのままでいてほしい」という、淡いけれど切実な期待を抱きながら、日々を過ごしています。
親の老いに直面することは決して容易ではありません。しかし、この本を通じて、他者の体験や心情に触れることで、自分の不安や戸惑いに整理がつき、少しだけ心が軽くなるのを感じました。

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