門井慶喜著『銀河鉄道の父』を読んだ感想

私的評価

門井慶喜著『銀河鉄道の父』を図書館で借りて読みました。

読後に、この作品が直木賞を受賞していることを知り、改めて「やはり良い作品だったのだ」と肯定してもらったような気がしました。400頁以上のボリュームがありますが、読みやすい文体で書かれており、時間さえあれば一気に読み進めてしまうほどの引き込まれる力があります。後半は、登場人物の葛藤や心の動きに胸を打たれ、思わず涙を流しながら読んだことは、誰にも言えない秘密です。

本書を通じて、宮沢賢治という作家や、その作品世界に触れることができたのも大きな収穫でした。これまで賢治の作品はあまり読んだことがありませんでしたが、『銀河鉄道の父』を読んで、詩集や童話なども手に取ってみたいという気持ちが芽生えました。門井慶喜の丁寧な描写と、賢治という人物の情熱や葛藤を通して、読者もまた心の旅に誘われる、そんな感覚を味わえる一冊です。

★★★★★

『銀河鉄道の父』とは

『家康、江戸を建てる』が面白かったので、借りて読んでみました。読後に知ったわけですが、この本で著者は第158回の直木賞を受賞していました。

出版社内容情報
岩手県をイーハトヴにしたユニークな国民作家・宮沢賢治の生涯を、対立と愛情が相半ばする父・政次郎の視点で描く気鋭作家の意欲作。明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。
賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。 地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。 父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。

目次
  1. 父でありすぎる
  2. 石っこ賢さん
  3. チッケさん
  4. 店番
  5. 文章論
  6. 人造宝石
  7. あめゆじゅ
  8. 春と修羅
  9. オキシフル
  10. 銀河鉄道の父

【著者紹介】
門井慶喜 : 1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2015年『東京帝大叡古教授』、翌年『家康、江戸を建てる』が続けて直木賞候補となる。2016年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)受賞。同年咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。2018年、『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞

紀伊國屋書店

感想・その他

「銀河鉄道の夜」や「雨ニモ負ケズ」で知られる詩人・童話作家、宮沢賢治の生涯を、賢治の父・政次郎の視点を通して描いた小説です。

質屋を営む裕福な家庭に生まれ育った賢治でしたが、祖父の喜助は「質屋には学問など不要」と考えていました。そこで政次郎は説得し、賢治は盛岡中学校へ進学します。しかし、卒業後に賢治がさらに進学したいと願っても、すぐには許されず、悶々とした日々を過ごすことになります。それを見かねた政次郎は、盛岡高等農林学校への進学を認めますが、卒業後も賢治は自分の進路をはっきり示すことができず、迷いと葛藤の中で日々を過ごしていきます。

父・政次郎は、賢治を冷たく突き放したい気持ちと、どうしても世話を焼いてしまう気持ちの間で揺れます。岩手県花巻の名士であり、明治生まれの家長としての厳格さを持つ一方で、鋭い観察力で子供のことを考え、時には厳しく、時には溢れんばかりの愛情を注ぐ人物です。私もこの本を読んだ後に子育てをしていれば、もう少しマシな父親になれたのではないかと思ってしまいました。今の時代だからこそ、理想的な父親像の一つだと感じます。

この作品は、ノンフィクションのようでありながらフィクションの要素も含まれています。しかし、描かれている賢治の人生は、悩みと苦しみに満ちたものだったことが伝わってきます。才能ある彼が、世間にその価値を認められてから生涯を終えられたなら、どれほど報われたことか――そう思わずにはいられません。

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