
私的評価
磯田道史著『日本史の内幕 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで』を読みました。図書館で借りました。
著者の磯田先生はテレビでもおなじみですが、NHKのBSプレミアムで放送されている「英雄たちの選択」は、毎週欠かさず観ています。コメンテーターの話や、磯田先生が熱く語る歴史のうんちくは、聞いていてとても楽しく、学びにもなります。特に、磯田先生の熱弁には引き込まれるものがあります。
また、この番組は、司会のアナウンサーが杉浦友紀さんに代わってから、一段と華やかになりました。目の保養にもなるというのは、共感していただける方も多いかもしれません。
一方、本書では、多岐にわたるテーマが取り上げられており、どの章も興味深く、楽しみながら読むことができました。「歴史って面白い!」と改めて実感させてくれる一冊です。
★★★★☆
『日本史の内幕』とは
磯田道史著、2017年に中公新書より刊行。過去に新聞や雑誌に連載、掲載した64話ほどを収録してあります。内容説明
西郷隆盛の性格は、書状からみえる。豊臣秀頼の父親は本当に秀吉なのか。著者が原本を発見した龍馬の手紙の中身とは。司馬遼太郎と伝説の儒学者には奇縁があった―日本史にはたくさんの謎が潜んでいる。著者は全国各地で古文書を発見・解説し、真相へと分け入ってゆく。歴史の「本当の姿」は、古文書の中からしかみえてこない。小説や教科書ではわからない、日本史の面白さ、魅力がここにある!
目次
第1章 古文書発掘、遺跡も発掘
第2章 家康の出世街道
第3章 戦国女性の素顔
第4章 この国を支える文化の話
第5章 幕末維新の裏側
第6章 ルーツをたどる
第7章 災害から立ち上がる日本人
著者紹介
磯田道史[イソダミチフミ]
1970(昭和45)年岡山市生まれ。歴史家。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。2018年3月現在、国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮ドキュメント賞受賞)、『天災から日本史を読みなおす』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『日本史の内幕』など著書多数。
紀伊國屋書店
感想
歴史学者である磯田道史先生が、古文書を一枚一枚丁寧に読み解き、日本史の裏側に隠された事実や意外なエピソードを浮かび上がらせる――そんな知的好奇心を刺激される内容でした。どの章も読み進めるたびに「もっと知りたい」と思わせてくれるほどの引力があります。特に印象的だったのは、江戸時代中期、五代将軍・徳川綱吉の治世下における人口の話です。当時の日本の人口は約3,000万人。それに対して、世界全体の人口はおよそ6億人だったそうです。つまり、計算すると当時の世界で暮らす20人に1人は日本人ということになります。これを現代に置き換えると、日本人はおよそ60人に1人程度。改めて数字で比べると、日本の存在感が当時いかに大きかったかがわかります。
さらに驚かされたのは、幕末期の経済力を示す試算です。ある海外の著名な経済史学者によれば、当時のGDPをアメリカを1とした場合、イギリスは約2.8、日本は1.8に相当していたとのこと。つまり、日本はアメリカよりも経済規模が大きく、世界の先進国に肩を並べていたのです。こうした数字を見ると、ペリー来航に怯える必要などなかったのではないか、とさえ感じます。もし仮に当時、列強と戦争になったとしても、最初こそ苦戦しても数年後には盛り返せたかもしれない――そんな想像すら膨らみます。
改めて感じるのは、歴史を数字で捉える面白さです。人口や経済の比較は、教科書の年号や事件とは違った角度から日本の姿を浮かび上がらせてくれます。磯田先生の本は、そうした「歴史の裏側のリアル」を知る面白さに満ちており、一度読み始めると止まらなくなる魅力があります。
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