私的評価
Amazonプライムオリジナルドラマ『BOSCH/ボッシュ』シーズン1~5を観ました。各シーズン10話で全50話、Amazonプライムビデオでの視聴です。
このドラマは、マイクル・コナリーの小説を原作としており、アメリカでは非常に高い人気を誇るシリーズです。主人公ハリー・ボッシュ刑事を中心に、複雑な事件や人間関係、警察内部の駆け引きなどが緻密に描かれており、いわゆる正統派刑事ドラマの醍醐味を存分に味わえます。50話を通して観ても、テンポやストーリーテリングのバランスが絶妙で、飽きることなく引き込まれました。
個人的には、こうした骨太でリアルな刑事ドラマが長く続いてくれることを願っています。『ER/緊急救命室』のように、シリーズを重ねながらキャラクターの成長や事件の複雑さを描き続ける作品になってほしいと期待しています。これからもハリー・ボッシュの活躍を長く見守りたいと思える、非常に完成度の高いシリーズです。
★★★★☆
作品概要
監督はアレックス・ザクシェフスキ、デイジー・フォン・シャーラー・メイヤーほか。製作総指揮/原作はマイクル・コナリー。
出演はタイタス・ウェリヴァー、アニー・ウェルシング, ランス・レディックほか。
2019年10月現在、シーズン5まで、Amazonビデオでプライム会員は無料で観られます。また、シーズン6の製作も決定しているようです。
作品の紹介・あらすじ
シーズン1のあらすじ
LA市警ハリウッド署殺人課に勤めるハリー・ボッシュは、容疑者を射殺した件で裁判にかけられる。虐待を受けた少年の白骨が発見され、相棒のエドガーと捜査する。死体を運搬中に逮捕されたウェイツと名乗る男は、白骨化事件を含む多数の殺人の詳細を自白する代わりに死刑を逃れる司法取引を申し出る。地方検事オシェイは取引に応じるが、ウェイツは現場を案内中に警官を撃って逃げる。市警本部長代理アーヴィングは市長選への野心を持つオシェイと取り引きし、昇進の約束と引き換えにオシェイの失態を撮影したビデオを隠す。逃亡したウェイツはなぜかボッシュに執着し、殺人を続けながらしばしば電話をかけて来る。ボッシュは元警官の元妻エレノアによるプロファイリングの助けを得てウェイツを追いながら、白骨化事件の捜査も続ける。白骨で見つかった少年アーサーは姉に虐待を受け、姉は父親に虐待されていたことが分かる。ボッシュは、交際していた新米警官のブレイシャーをめぐって警察内部にも多くの敵を作る。ウェイツの言動から自分と同じ児童養育施設出身であることを知って正体に迫り、人質を救い射殺する。アーサーを殺した当時の遊び仲間は犯行時に若年だったために罪を逃れるが、アーサーの父親が殺す。ボッシュは警察内部で暴力沙汰を起こして停職になる。
シーズン2のあらすじ
ボッシュは復職し、FBIの監視下にあったポルノ映画の製作者アレンの殺人事件を捜査する。アーヴィングの息子ジョージは悪徳警官の不正調査のため麻薬課に潜入する。アーヴィングは公式にオシェイを市長に推し、現市長を支持する本部長と軋轢を生じる。FBIは、アレンの親戚で、ラスベガスのアルメニア系マフィアのマークスをテロ組織に関係した容疑で捜査している。マークスの手下で実はFBI潜入捜査官のライコフがアレン殺人容疑で逮捕される。マークスはライコフを取り戻すため、ボッシュの元妻エレノアと娘マディを誘拐する。ボッシュが救出し、二人はLAでボッシュと同居する。エレノアはFBIに協力する代わりに処分された経歴を消してもらう。元警官でアレンの住宅地の警備員をするナッシュは悪徳警官たちを率い、潜入していたジョージを殺させる。アーヴィングはボッシュとともに、ひそかに息子を殺した犯人を捜す。アレンの妻ヴェロニカと関係のあったナッシュが、マークスの金をくすねたアレンを殺し、マークスに罪を着せたことが分かる。マークスの一味とナッシュ率いる悪徳警官らはアレンの金を求めて争い、銃撃戦を起こす。アレンの愛人レイラが金をもって逃げ、追うヴェロニカは殺人事件を起こして逮捕される。市警本部長は辞職し、アーヴィングは苦い思いで代行に就任して、ウェイツの逃亡におけるオシェイの失態のビデオを公開する。ナッシュは逃亡中に死亡する。ボッシュの売春婦だった母親を殺した男は、既に死んでいたことが分かる。
シーズン3のあらすじ
シーズン2から1年4カ月後、エレノアは現夫のいる香港に移り、マディはボッシュと同居する。ヴェロニカの裁判は評決に達せず不審理となる。市長選に敗れたオシェイは裁判での自分の評判を気にしてボッシュとたびたび衝突する。
息子の死を悲しむアーヴィングは妻に離婚され、引退を望む。強盗殺人事件の連続したコリアンタウンでパークという女性と出会い、変心して本部長の職を引き受ける。
ボッシュは映画監督ホランドを被告とする殺人事件の裁判の証人となり、担当のベニーテス検事と親密になる。以前から執拗に追っていた容疑者ガンが殺されて、ロバートソン刑事と相棒のピアス刑事はボッシュを疑い、ボッシュの証言の信頼性は傷つく。ボッシュが密かに設置していた監視カメラの映像から、ガンを殺してボッシュに罪を着せたのはホランドの手下の元刑事だとわかり、ボッシュの疑いは晴れホランドの有罪は確実に見える。
ホームレスの退役兵メドーズの死体が発見される。メドーズを殺した軍隊仲間は軍の請負をしながら大金を盗んでいたことが分かる。張り込み中のエドガーがその一人を射殺してしまい、仕返しに狙撃されて重傷を負う。ボッシュは部下を殺し大金を独占して逃げようとしていた隊長ドブスを逮捕する。
エレノアがLAに帰りFBIに復職しようとする。退職した元刑事が放火で死に、ボッシュの母の殺人を議会の警察委員長ウォーカーと結びつける手がかりを残す。療養中のエドガーは家庭が崩壊し、ガンが殺されるのを見過ごしたとボッシュを責める。
シーズン4のあらすじ
三か月後、ボッシュは母親の殺人事件を調べ続ける。マディはボッシュと同居し、エレノアはLAでギャンブラーをしながらFBIに協力し復帰を望む。療養の明けたエドガーは仕事に戻るとともに、崩壊した家庭を修復しようとする。警部の休暇中にグレイスが代理を務める。
ロス市警が、誘拐事件の容疑者である黒人のハリスを拷問し、無実と判明するブラックガーディアン事件を起こす。たびたびロス市警を訴えてきたことで著名な、ハリスの弁護士でやはり黒人のエライアスが殺される。警官の犯行が疑われ、アーヴィングはボッシュをリーダーとして特捜班を作り、ロバートソン、ピアス、それにかつてボッシュを調査した内務監査官のスナイダーとリンカーンも入れる。
特捜班はブラックガーディアン事件に関わり、エライアスを恨んでいた警官たちを捜査する。ボッシュは捜査状況を議会の警察委員長であるウォーカーに報告するが、ウォーカーはボッシュの母の殺人事件に関心を持つ。エドガーも特捜班に入る。捜査情報がメディアに漏洩し、容疑者で白人のシーアン刑事は雲隠れする。人種間対立もからんで警察への抗議行動が起きる。エレノアは、中国マフィアに関係するレジーとの結婚が破綻したことを伝えた直後、ボッシュの目前で射殺される。
ボッシュは母親を失ったときのことを思い出し、マディとともに悲しみに堪える。ロバートソンは、ブラックガーディアン事件に関わるドレイク刑事を調べる。シーアン刑事が逮捕され、ブラックガーディアン事件の関与は認めるがエライアス殺人は否認する。だが彼の銃の弾道はエライアス殺しの弾丸と一致する。腑に落ちないボッシュとロバートソンは捜査を続行する。
リンカーンがエライアス殺しの弾丸の証拠をすり替えたことがわかる。リンカーンは、ウォーカーをエライアス殺人犯として名指しする。リンカーンの内通情報を使ってエライアスがたびたびLA市警を訴えて得た示談金が、リンカーンとウォーカーに流れていたが、エライアスがブラックガーディアン事件に怒って示談を拒否したためにウォーカーに殺されたと言う。特捜班はウォーカーを逮捕するための証拠を探す。
FBIのためにエレノアが調べていた中国人がエレノア射殺の黒幕と分かるが帰国されてしまう。エレノアを使っていたFBIのグリフィン捜査官が、エレノアの撮った画像を中国に流していたことが分かる。ハリウッド署の二人の刑事ジョンソンとムーアが、ひき逃げ事件の捜査から偶然にコリアンタウン連続殺人事件を解決する。
ボッシュはウォーカーのアリバイを崩し、リンカーンがウォーカーに渡した、シーアンとドレイクがハリスを拷問した証拠画像を見つけて密かにハリスに渡す。アーヴィングは市長とウォーカーが結託していることを知り、メディアにリークする。ボッシュはウォーカーがエライアス殺しの凶器を始末しに現場に戻ったところを捕まえ、母親の殺人をも認めさせた後に逮捕する。
シーズン5のあらすじ
ボッシュは薬物事件の捜査と、過去の事件の冤罪審理に同時に直面する。ロバートソンはニュートン署に転勤し、代わりにヴェガが転任して来てピアスの相棒になる。ハリウッド署の殺人課をウエスト管区に統合する案が持ち上がる。
薬局が襲われて薬剤師が殺され、ハリウッド署から駆けつたジョンソンとムーアの乗る車両が事故を起こして犯人は逃げ、グレイスは二人を転任させる。退職するかに見えたジョンソンは定年延長を選ぶ。被害者の息子ホセは行方不明となる。ボッシュとエドガーは薬局につながる違法なオキシコドン売買を捜査し、大量に出された処方箋を持った患者たちが薬局を回ってはオキシコドンを買い集め、飛行機でどこかに連れていかれていることを知る。ロバートソンが調べる殺人事件も薬剤師殺人犯につながる。ヴェガとピアスはホセを保護して追手を逮捕し、薬物組織が犯した他の殺人を調べる。ボッシュはオキシコドン中毒の退役軍人を偽って潜入し、他の患者とともに飛行機で砂漠の中の薬物組織のアジトに連れて行かれる。ボッシュは中毒者の女性クレイトンと知り合う。
検事局でボランティアとして働くマディは、アーヴィングが指揮し若い頃のボッシュが担当したスカイラー殺人事件が、冤罪として再調査されていることを知る。ボッシュの元恋人で検事局CIU(誤判究明部)のクリスティーナ・ヘンリーは、恨みからボッシュが証拠を捏造したと決めつけて追及する。ボッシュは犯人ボーダーズの釈放を阻止するため、過去に対立した弁護士のハニー・チャンドラーに依頼し、調査員のボナーが背景を調べる。真犯人であることを自白して死んだ囚人のオルマーと、服役中のボーダーズと結婚した女テデスコと、ボーダーズの弁護士のクローニンとその妻、警察に保管された証拠を偽造した警官のスペンサーは結びつき、ボーダーズの釈放後に市を訴えて多額の賠償金を得ようとする。ボッシュは証拠から写真が一枚消えていることに気づく。クローニンは記者にリークして記事にさせる。
アーヴィングは市長選への出馬を考え、警官による過剰発砲事件を穏便に処理する。スカイラー事件の証拠から写真を一枚抜き取る。
グレイスは警察内の犯罪統計のごまかしに気づき記者にリークする。
離婚したエドガーは情報源のワイズが殺された事件を調べ、ハイチ移民の組織と警官が関与していることを知る。
冤罪事件の記事の写真から薬物組織に潜入中のボッシュの正体がばれ、砂漠から飛行機に乗せられて殺されそうになるが逃れてLAに戻る。イギリス人のウォルシュ率いる薬物組織はアジトを捨てて逃げる。ボッシュはクレイトンを保護し更生施設に入れる。ボッシュとチャンドラーは、姿を隠していたスペンサーを見つける。マディは検事局の内部通達をチャンドラーにリークする。ボーダーズを釈放するべきかどうかの審理が開かれ、チャンドラーはボーダーズらの陰謀を暴き、クローニンと妻は逮捕される。ボッシュはアーヴィングがボーダーズの犯罪の証拠を捏造したことを知る。ウォルシュと手下たちがボッシュの家を襲うが返り討ちにされる。ピアスとヴェガは切断された死体を発見する。
三日後、アーヴィングは殺人課の統合案を棚上げにし、市長選への出馬を発表する。
Wikipedia(BOSCH/ボッシュ)
感想・その他
このドラマの主人公ハリー・ボッシュは、どちらかと言えば定年間際のベテラン刑事という雰囲気です。決してイケメンでもなく、バリバリの肉体派でもないため、初めて観たときは「えっ、この人が主人公?」と少し意外に感じました。演じるタイタス・ウェリヴァーの出演作として私が知っているのは、映画『アルゴ』やドラマ『LOST』、『ザ・ラストシップ』くらいですが、正直どれも印象に残っていません。しかし、この『BOSCH/ボッシュ』を観進めるうちに、タイタス・ウェリヴァーが持ついぶし銀の魅力にどんどん引き込まれていきます。背も高くなく、少し出た腹もあるのですが、孤高の戦士ボッシュというキャラクターを演じる姿がとにかく格好良く、なぜか目が離せなくなるのです。今ではもう、胸を張って「タイタス・ウェリヴァーのファンです!」と宣言したくなるほどです。私自身、海外ドラマで一番好きなのは『ER/緊急救命室』シリーズなのですが、この『BOSCH/ボッシュ』には『ER』でおなじみの脇役俳優が3人出演しているのも嬉しいポイントです。特に、受付のジェリー・マーコビック役として準レギュラー出演しているアブラハム・ベンルービは、『ER』で癒し系キャラとして好きだったので、まだ元気に活躍している姿を観られて感激しました。残りの2人もシリーズを通して登場し、どこかで『ER』の名残を感じさせてくれるのがファンとしてはたまりません。
こうしてキャラクターや俳優たちの魅力を重ねて観ることで、『BOSCH/ボッシュ』は単なる刑事ドラマ以上の深みと味わいを持つ作品になっており、見終えた後も余韻が長く続く、非常に満足度の高いシリーズだと感じています。
コメント