ニコライ・コスター主演、映画『ブラッド・スローン』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『ブラッド・スローン』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

この映画、ストーリー自体は単純ながらも、刑務所という閉ざされた世界での人間関係や権力闘争が描かれており、なかなか緊張感があります。ただ、どうしても気になったのは、主人公が善良な市民でありながら、交通事故で人を死なせただけで、あんな悪党だらけの刑務所に収監される現実味です。日本の感覚だと、軽微な過失であれば交通刑務所や執行猶予になる場合も多く、ちょっと違和感があります。

もし自分があんな刑務所に入れられたら、初日で危険な目に遭いそうで、想像するだけでもゾッとします。慰みものにされる可能性すらあり、今からでも空手や護身術を習いたくなる気分です。

とはいえ、登場人物たちの心理戦や暴力的緊張感は見応えがあり、ハラハラしながら最後まで観ることができました。現実味の乏しさを差し引いても、スリリングな映画として楽しめる作品です。

★★★☆☆

作品概要

監督・脚本はリック・ローマン・ウォー。
製作はミシェル・リトヴァクほか。
出演はニコライ・コスター=ワルドー、ジェフリー・ドノヴァンほか。

2017年制作のアメリカ映画です。
エリートだった男が投獄され、獄中で生き抜くため別人のように変貌を遂げていくクライムサスペンス映画です。悪のはびこる非情な世界で、壮絶な獄中生活を送る主人公を、ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのニコライ・コスター=ワルドーが演じます。

作品の紹介・あらすじ

解説
エリートだった男が投獄され、獄中で生き抜くため別人のように変貌を遂げていくクライムサスペンス。悪のはびこる非情な世界で、壮絶なサバイバルに挑む主人公を、ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのニコライ・コスター=ワルドーが熱演するほか、『クーデター』などのレイク・ベル、ドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」などのジョン・バーンサルらが共演。『オーバードライヴ』などのリック・ローマン・ウォーがメガホンを取った。

あらすじ
エリートコースを進み順調な人生を送っていた男(ニコライ・コスター=ワルドー)は、事故を起こしてしまい投獄される。収容された監獄は殺し合いが当たり前のような世界で、生き抜くためには「殺られる前に殺る」を実践するしかなかった。男は全身を鍛え上げ、壮絶なサバイバルに挑む。

シネマトゥデイ

感想・その他

主演のニコライ・コスター=ワルドーは、海外テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』でジェイミー・ラニスターを演じたことで広く知られる俳優です。劇中では高貴な騎士にして、複雑な心情を抱えるキャラクターを見事に体現しており、その知名度と存在感は圧倒的でした。この映画でも彼は主人公を演じていますが、監獄に入る前と後とではまるで別人のような変貌を遂げています。

特に驚かされるのが、そのビジュアルの変化です。監獄に入る前の彼はまさに“ジェイミー・ラニスター”そのもので、整った顔立ちと洗練された雰囲気を漂わせています。しかし、囚人としての彼は髭を伸ばし、髪もオールバックにし、鋭い目つきをたたえた風貌で画面に現れます。その姿は、以前の面影をかすかに残しながらも、明らかに「戦いをくぐり抜けてきた男」の顔であり、同一人物だとは思えないほどの変貌ぶりです。俳優としての変身能力、演技の幅に驚かされます。

それにしても、この映画を観て改めて感じたのは、アメリカの刑務所制度の異様さ、いや、むしろ異文化ぶりとでもいうべき独自性です。日本の感覚で言えば、刑務所は「すべてを制限された懲罰と矯正の場」ですが、アメリカの刑務所は一歩間違えると“もう一つの社会”というべき自律した世界が構築されているように見えます。

もちろん塀の外には出られないという大前提はあるものの、その中ではドラッグの取引やギャングの抗争、果ては金融詐欺まで行われており、ある意味では“何でもアリ”の無法地帯にも見える。驚くべきは、その裏社会的な自由さの中で、多くの受刑者が“塀の中で金を稼ぐ”という逆説的な現実です。中には、塀の外よりも収入を得ている者もいるという話もあり、まさに常識を覆されるような世界です。

しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではありません。刑務所内での地位を確立するためには、暴力や忠誠の証、極限状態での選択が求められるのです。つまり、生き延びるためにはまず戦い、支配構造に適応し、場合によっては命を賭して仲間や敵と渡り合わねばならない。その試練の過程を、この映画は非常にリアルに、かつ衝撃的に描いています。

終身刑を言い渡された囚人の中には、すでに失うものがない者も多く、塀の中で新たな秩序を築くことが彼らにとっての“第二の人生”となっているのかもしれません。殺人を犯しても刑期が延びるだけで実質的な影響がない者たちが集まる空間。それが、アメリカの刑務所の恐ろしさであり、同時に映画的な魅力にもなっているのでしょう。

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