私的評価
WOWOWの連続ドラマ『きんぴか』を観ました。Amazonプライムビデオでの視聴です。
中井貴一さんのファンであることと、正月休みで時間があったこともあり、試しに観てみました。「原作本は読んでいないけれど、浅田次郎作品ならきっと面白いはず」という先入観もあり、ある程度の期待を持っての視聴でした。しかし、正直に言うと、少し期待外れの部分もありました。
私が浅田作品に対して抱く一番の期待は、いわゆる「お涙頂戴」の感動シーンです。例えば『壬生義士伝』のような、心にぐっとくる場面や登場人物の心情に胸を打たれる瞬間を楽しみにしていました。しかし、このドラマ『きんぴか』には、そういった泣ける要素がほとんど見られず、ちょっと物足りなさを感じました。
原作本であれば、私の目を潤ませるシーンが数多く描かれているのではないかと思います。ドラマと原作では表現の仕方も違うでしょうし、ここは一度原作を読んで確認してみようと考えています。原作を読んだら、ドラマで感じられなかった感動を味わえるかもしれません。
★★★☆☆
作品概要
原作は浅田次郎の『きんぴか』シリーズです。脚本は久松真一。
主演は中井貴一、その他出演者にはユースケ・サンタマリア、ピエール滝、綿引勝彦、飯島直子ほか。
2016年春にWOWOWで放送されました。全5話。悪党ではあるが、金よりも出世よりも「筋」を通して生きた3人。それが仇となり組織に裏切られる。その無念を見てきた老刑事の下に3人は集結し、彼らなりの方法で「筋」を通すために行動を開始する。
作品の紹介・あらすじ
あらすじ
天崇連合会岩松組の組員・阪口健太(中井貴一)が、敵対する銀鷲会組長を射殺。これは、組を想っての健太の単独行動だった。それから13年。“務め”を終え出所した健太を出迎えたのは、老刑事・向井権左エ門(綿引勝彦)ただひとり。大勢の組員の出迎えを想像していた健太に向井は、「バカが。捨て駒になりやがって」と現実を突き付ける。
一方、最強の肉体を持つ自衛官・大河原勲(ピエール瀧)は安全保障関連法案の撤回を求め“ひとりクーデター”を起こすが失敗。また同じころ、政治家・山内龍造(村井國夫)の優秀な秘書・広橋秀彦(ユースケ・サンタマリア)は山内の収賄容疑をかぶり逮捕され、離婚の危機に。そんな“崖っぷち”2人にも向井が声を掛け、健太、大河原、広橋がそろった。向井は「肚、腕、頭、三つぞろいの悪党がそろったんだ。理不尽を我慢するこたぁやめて、好きにやってみろ」と言い放つ。かくして、“3人の悪党”の快進撃が始まる!
連続ドラマW
感想・その他
最近はあまり読んでいませんが、浅田次郎作品の中では、『きんぴか』シリーズが出る前の作品をよく読んでいました。しかし、なぜかこの『きんぴか』シリーズだけは、ずっと手をつけずにいました。どちらかというと、私は『蒼穹の昴』シリーズや『壬生義士伝』、『終わらざる夏』などの歴史ものに惹かれる傾向があります。華やかな時代背景や人間ドラマの濃密さが、やはり好きなのです。また、短編集やエッセイ集もよく読みました。『鉄道員(ぽっぽや)』に代表されるような作品群は、どれも心に染み入るものがあります。特にエッセイ集『かわいい自分には旅をさせよ』の中に収められている短編小説「かっぱぎ権左」は、読むたびに思わず泣かされるほどで、まさに「これぞ浅田次郎!」と唸らされる作品です。人間味あふれる登場人物たちの描写と、温かくも切ない結末が心に深く残ります。
ちなみに、私の一番のお気に入りは、自衛隊を舞台にした連作短編集『歩兵の本領』です。著者自身が自衛隊に在籍していた経験をもとに描かれたこの作品は、リアルな描写と人間ドラマの厚みがあり、とても心に残る一冊です。戦場ではない日常の中で交わされるやり取りや、仲間との絆の描写に、読むたびに胸が熱くなります。
浅田次郎作品の魅力は、単に面白い物語を描くだけでなく、登場人物の人間らしさや、人生の哀歓を丁寧に描き出すところにあります。だからこそ、シリーズやジャンルを問わず、どの作品も読むたびに新たな発見や感動があるのだと思います。
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