私的評価
フジテレビ制作のスペシャルドラマ『北の国から '95秘密』を観ました。DVDでの視聴です。
今回の副題は「秘密」です。シュウ(宮沢りえ)がつぶやいた「過去を消せる消しゴムがあったらいい」がしみじみとさせます。多分、誰もがそんなことを一度は思ったことあるのではないでしょうか。自分にはあれこれと、消したい過去がいっぱいあります。
★★★★☆
作品概要
プロデューサーは山田良明、清野豊、笹本泉。原作・脚本は倉本聰。
出演は、田中邦衛、吉岡秀隆、中嶋朋子、宮沢りえほか。
1995年6月にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマです。富良野でゴミ収集の仕事をする純は、遠距離恋愛を続けているが、れいとの間はぎくしゃくしていきます。そんな時に出会ったシュウという女性に、純は次第に惹かれていきます。一方、札幌で看護婦をしている螢は、病院を辞めて妻子ある男性と駆け落ちしていました。
作品の紹介・あらすじ
富良野でゴミ収集の仕事をする純(吉岡秀隆)は、札幌のれい(横山めぐみ)と遠距離恋愛を続けているが、二人の間はぎくしゃくしていく。そんなときシュウ(宮沢りえ)に出会い、純は彼女に惹かれていく。シュウも五郎(田中邦衛)の生活がすっかり気に入り、度々訪ねるようになった。
一方、札幌で看護婦をしている螢(中嶋朋子)は、病院を辞め、妻子ある男性・黒木と駆け落ちしてしまう。ある日シュウが以前AV女優をしていたことを知った純は、過去を詮索するような口のきき方をしてシュウを傷つけてしまう。そして気まずい関係のまま、会えない日が続いていた。その頃五郎も、黒木の妻(大竹しのぶ)が訪ねてきたことにより、螢の不倫を知り純の車で螢の元へ向かった。「何をしようと、俺は味方だから…いつでも富良野に帰ってくるんだぞ」それだけ言うのが精いっぱいだった。ある日れいから純に、今日午後嫁ぐという電話があった。純は車に飛び乗り、れいのいる札幌に向かった。車のワイパーには、今夜会ってほしいというシュウからのメモが。木立の陰からウエディング姿のれいを見つめる純。アパートに帰った純に、五郎は、シュウに会いに行くよう告げるが…。
『北の国から '95秘密』BSフジ
感想・その他
胸にずしんと響くものがありました。今回の物語の軸は、純の恋人・シュウが、かつてアダルトビデオに出演していたという“過去”にあります。それを偶然知ってしまった純は、動揺し、戸惑い、そして深く悩みます。どんなに自分に言い聞かせても、どうしてもその事実を頭から追い出せない。彼女の今を見ているはずなのに、過去の映像が心にこびりついて離れない。
正直、今回ばかりは純の気持ちが痛いほど分かりました。
「今の自分」ならば、もう少し成熟した対応ができるかもしれない。でも、あの頃の、若くて不器用な自分だったら――きっと同じように許せず、心をかき乱されていたと思います。恋人の過去に目をつぶることは、「知らなかったことにする」ことではなく、「受け入れて飲み込む」こと。でも、それがどれほど難しいか、今回の純の姿に自分を重ねながら強く感じました。
物語の冒頭、シュウはこう語ります。
「そんな過去、消しゴムで消せるものなら、消したいんです」
その言葉には、彼女の精一杯の後悔と、今を生きようとする必死さがにじんでいました。人は誰しも、消してしまいたい過去を一つや二つ抱えているものです。誰にも言えないこと、なかったことにしたい記憶。それを「なかったこと」として扱ってほしいという願い。シュウのその一言は、とても人間らしく、切なく感じました。
そして、彼女から過去を打ち明けられた父・五郎が、純に対して語る場面。
彼の言葉は、実に五郎さんらしく、深くて、あたたかくて、そして現実的でした。
お前の汚れは、石鹸で落ちる。
けど、石鹸で落ちない汚れってもんもある。
人間、長くやってりゃあ、どうしたってそういう汚れはついてくる。
お前にだってある。
父さんなんか汚れだらけだ。
そういう汚れは、どうしたらいいんだ、えっ?
シュウから打ち明けられた五郎が、純に言った言葉。そうその通りなんです。でも、その通りなんだけど、理屈じゃないんだよな、こればっかりは…。過去のことだと分かっているから、余計に辛い。
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