田中邦衛主演、スペシャルドラマ『北の国から '92巣立ち』(再見)のあらすじ・感想など

私的評価

フジテレビ制作のスペシャルドラマ『北の国から '92巣立ち』を観ました。
DVDでの視聴です。

この『’92巣立ち』を観て、改めて気づかされたのは五郎さんの変化です。連続ドラマの頃と比べると、以前の颯爽として頼もしい姿は影を潜め、酔っぱらうと面倒くさい一面を見せることもありました。それがさらに年月を経て、このあたりのエピソードでは、どこか寂しげで孤独な男として描かれています。

また、子供たちに対する接し方も、以前より過剰に気を使いすぎている印象があります。純や螢の成長に合わせて自立させなければならないのに、なかなか子離れができず、逆に自分自身が孤独や不安を抱え込んでいるように見えました。五郎のそんな姿を観ていると、複雑な感情が湧き上がります。親としての愛情の深さは理解できるものの、どこかもどかしさも感じられるのです。

さらに、北海道の厳しい自然と相まって、五郎の孤独や葛藤がより際立って見えます。彼の変化は、家族の成長や時の流れを象徴しているようで、観るたびに人間ドラマとしての重みを感じます。『’92巣立ち』は、五郎の内面や親子関係の微妙な距離感を深く味わえる、印象的なエピソードでした。

★★★★☆

作品概要

プロデューサーは山田良明、清野豊。
原作・脚本は倉本聰。
出演は田中邦衛、吉岡秀隆、中嶋朋子、菅原文太ほか。

1992年5月にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマです。前編・後編の2回で放送されました。丸太小屋を失った五郎は、山にもう一度丸太小屋を作ろうと頑張っている。旭川の看護学校に行っている螢は、待ちわびる五郎の気持ちを知りながら、富良野には帰っていない。しかし、富良野の駅を通り過ぎ、帯広の畜産大学の恋人には会いに行っていた。一方、東京のガソリンスタンドで働く純は、ピザ店で働くタマ子と知り合い、いつしか深い仲になってしまう…。

作品の紹介・あらすじ

北海道富良野にも夏のヘソ祭りが近づいてきた。丸太小屋を失った五郎(田中邦衛)は、和夫(地井武男)の家の小屋を借りて住みながら、山にもう一度丸太小屋を作ろうと頑張っている。
旭川の看護学校に行っている螢(中嶋朋子)は、待ちわびる五郎の気持ちを知りながら、富良野には長いこと帰らない。実はひそかに富良野の駅を通り過ぎ、帯広の畜産大学の恋人勇次(緒形直人)に会いに行っているのだった。しかも、来春螢が卒業したら富良野の病院に勤めることを楽しみにしている五郎の思いとは別に、螢は勇次の伯父の札幌の大病院で正看の資格を取るつもりなのだ。
一方、東京のガソリンスタンドで働く純(吉岡秀隆)は、ピザ店で働くタマ子(裕木奈江)と知り合い、いつしか一線を越える仲になってしまう。

『北の国から ’92巣立ち』BSフジ

感想・その他

想像してくれ。蛍さんが同じ経験をしたとしたら
このドラマの中でも特に印象的なシーンの一つが、純が妊娠させてしまった裕木奈江演じる女性の叔父叔母に謝罪に向かう場面です。
普通なら、謝罪の手土産として無難に菓子折りを持参するのが礼儀であり、相手に対する敬意の示し方だろう。しかし、なぜか五郎さんはカボチャを持っていった。まさに「誠意の象徴」として選んだらしいが、これには誰しもが驚き、そして思わずイラッとするのではないだろうか。私がもし叔父さん役の菅原文太さんなら、間違いなく「何だこれは?」と眉をひそめるはずです(笑)。

それに対し、叔父さん側の対応は筋が通っていて堂々としています。謝罪を受け入れつつも、真摯な態度を崩さない。五郎さんの謝罪は果たして真剣だったのだろうか。あの時、五郎さんの表情はどこか軽く、甘く見ていたように感じられ、心からの謝罪とは思えなかった。もちろん、どうすれば正解だったのかは簡単に言えない。しかし、誠意とは何か、相手が本当に求めているものは何か、五郎さんにはその本質が伝わっていなかったのかもしれない。

さらに後日、五郎さんは叔父さんに100万円を送るが、叔父さんはそれを受け取らず、純が妊娠させた女性に返金させる。この一連の行動こそが、「筋の通った男」と呼ぶにふさわしい人物の姿であり、彼の芯の強さや責任感が感じられるシーンでした。

そして最後に、ずっと気になっていた五郎さんの借金問題について触れたい。物語の中ではなんとなく曖昧にされているが、正吉の母親みどりの借金700万円の保証人となった五郎さんは、その重圧から逃れられなかったはずだ。おそらく集落の仲間たちが肩代わりしたのだろうが、それで五郎さんの借金が完全になくなったわけではないだろう。にもかかわらず、新たな家を建てるために丸太を購入しているのはどういうことなのか。火事で焼けた小屋の再建にかかる費用すら賄いきれていないはずなのに。

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