私的評価
フジテレビ制作のスペシャルドラマ『北の国から '98時代』を観ました。DVDでの視聴です。
最後の結婚式。感動的な草太のスピーチ(生前のもの)が泣かせます。中島みゆきの「時代」ととに映し出される今までの映像。もうその辺でお腹いっぱい、と思うくらいいろいろ流れます。この回で最終回、それでもよかったと思える終わり方でした。
★★★★☆
作品概要
プロデューサーは山田良明、笹本泉。原作・脚本は倉本聰。
出演は田中邦衛、吉岡秀隆、中嶋朋子、宮沢りえほか。
1998年7月にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマです。前編・後編の2回で放送されました。落石に暮らす螢の元に正吉がやって来て、富良野の近況をいろいろと話し始めます。五郎は最近、炭焼きに凝って、純の友達のやっている有機農法の手助けしています。純といえば、今ではすっかりゴミ収集の仕事にも慣れ、恋人のシュウともうまくいっている様子。しかし…。
作品の紹介・あらすじ
1997年、初夏。落石に暮らす螢(中嶋朋子)の元に正吉(中沢佳仁)がやってきた。「仕事がこっちにあって…」という正吉は、富良野の近況をいろいろと話し始めた。
近頃、炭焼きに凝って完次(小野田良)のやっている有機農法の手助けをしているという父・五郎(田中邦衛)。一緒に暮らしている純(吉岡秀隆)は、今ではすっかりゴミ収集のベテランになって、恋人のシュウ(宮沢りえ)ともうまくいっているらしい。そして、近く結婚するという完次の相手ツヤ子(小池美枝)というのは、実は完次の弟・チンタ(永堀剛敏)の元彼女だった、という事など、富良野の近況を報告していった。
しかし、純とシュウの間は実際はうまくいっていなかった。純がシュウの家族に挨拶に行った直後、シュウは、実家に帰ってくるよういわれたのだ。自分の職業が気に入られなかったと思い悩む純は、すっかり落ち込んでしまう。その上、螢が金を工面するために、富良野に戻ってきているというのだ。和夫(地井武男)や正吉だけではなく、離婚して富良野に戻っていた雪子(竹下景子)のところにもやってきたという螢。しかし純と五郎の所に螢はやってこなかった。純はさらに落ち込んでしまう。
螢は一体何のために金が必要なのか、だれもその理由を知らない。しかし、最後に訪ね、金を用意してくれた草太(岩城滉一)にだけは、螢は本当のことを打ち明けていた…。
『北の国から '98時代』(前編)BSフジ
螢(中嶋朋子)と正吉(中沢佳仁)の結婚が決まった。螢が結婚の日まで、石の家で暮らすことになり、喜びを隠しきれない五郎(田中邦衛)。だがシンジュク(布施博)が、螢のお腹の子の父親が実は、正吉の子ではないことを和夫(地井武男)から聞いてしまう。
草太(岩城滉一)は、そんな事はともかく、今は螢の門出を盛大に祝ってやることが大事だというが、実は子供のことは、誰もが疑いを持ち始めていることだった。正吉のことを誰よりも知る純(吉岡秀隆)も、そして五郎さえも…。
ある日、五郎は螢のいない間に、母子手帳を見て真実を知ってしまう。そして、シュウ(宮沢りえ)のもとを訪ね、螢の結婚のことや、純が頻繁に来てくれるようになったことなどをシュウに話した。五郎は、今までになかったほど幸せを感じていることを伝え、シュウに自分たちのそばにいて欲しい、と伝えた。それからしばらくして、シュウは純へ久しぶりに連絡をとるのだった。
そんなある日の事だった。完次(小野田良)が行方不明になったという知らせが五郎と純のもとへ入った。資金繰りができなくなり、離農を迫られたという完次。純は、正吉、チンタ(永堀剛敏)らと一緒に必死で完次を探しはじめた。純は完次の離農を言い渡したのが草太だと聞き、ショックを受ける。
それからしばらくして、純は正吉から、草太が完次の住んでいた家に住まないかと持ち掛けてきたことを聞かされた。実は、純も草太から仕事を手伝わないかと誘われていた。ある夜、話があると草太にスナックに呼ばれた純は、また仕事の誘いをうけ、手始めとして、明日完次のところから引き取ったトラクターを運ぶのを手伝ってくれといわれたが、協力はできないときっぱりと断った。スナックにいた客からも非難の言葉を浴びせられた草太は、怒って店を出ていってしまう。
その翌日、純は雪子(竹下景子)の店へシュウへのクリスマスプレゼントを買うためにやってきた。忙しそうな雪子の代わりに鳴り響く電話を取った。それは五郎からで、受話器から聞こえてきた言葉に、純は呆然と立ち尽くすのだった…。
『北の国から ’98時代』(後編)BSフジ
感想・その他
長いドラマでした。前後編で5時間は優にあったと思います。けれども、その長さに比例するように、登場人物たちの人生の重みや選択の意味がじっくり描かれていて、観終えた後には深い余韻が残りました。 『北の国から '98時代』。やはり今回の一番のハイライトは、なんといっても螢と正吉の結婚でしょう。もちろん、草太兄ちゃんの突然の死など、胸を締め付けられる出来事もありました。でもやはり、黒板家にとって大きな転機となるのは、この結婚話だったと思います。草太が亡くなる前、正吉に向かって言った言葉が印象的でした。
「世話になっただろ」「家族だろ」――。
その言葉には、正吉への信頼と願い、そして草太自身の螢への想いが込められていたように感じます。
たしかに、正吉は幼い頃から黒板家に出入りし、家族のような存在でした。そして、螢に対してずっと淡い恋心を抱いていた。
でもそれでも、「じゃあ結婚してくれ」と頼まれるのは、ちょっと無茶ぶりですよね(笑)。いくら兄の遺志とはいえ、それを引き継ぐには相当な覚悟が必要だったはずです。
それでも正吉は、決心します。
過去に誰かと関係を持ち、子供を授かった螢。その過去をすべて受け入れ、その子を自分の子として育てるとまで決めた正吉の姿には、彼なりの成長と、深い愛情、そして覚悟がありました。
一度はその申し出を断った螢。彼女の心には迷いや葛藤があったのだと思います。そんな螢の心を動かそうと、正吉が打って出たのが――「100万本のオオハンゴンソウ作戦」。 花の名前の響きだけでもロマンチックですが、実際に花であふれる部屋の中で、螢がうっとりと花に囲まれるシーン。まるで夢のようで、「あれ?これ正吉の妄想なんじゃ…」と一瞬思ってしまうほどでした。
ただ、そこが惜しいところでもあります。
ドラマの中では、正吉の奮闘ぶりばかりがクローズアップされ、螢の心がどう動いていったのか、その内面の描写がほとんどありませんでした。
彼女がなぜ気持ちを変えたのか。正吉のどんな言葉に、どんな行動に心を揺さぶられたのか。それとも、ただ時間と共に、彼の真っすぐさに心が溶けていったのか。そのあたりを、もっと丁寧に見せてほしかったなという思いが残ります。
あの螢が、どうして正吉との結婚に至ったのか。
それは観る者に想像を委ねられた部分でもありますが、だからこそ、少し物足りなさも感じたのかもしれません。
とはいえ、二人が並んで立つ姿は、これまでの『北の国から』の長い歴史の中でも、静かであたたかい、ひとつの「答え」のようにも見えました。
時代は変わり、登場人物たちも年を重ね、関係性も少しずつ形を変えていく。だけど、それでもなお、誰かを信じること、愛すること、家族になること――それは決して色褪せないテーマだなと、改めて感じさせてくれた作品でした。
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