私的評価
1シーズン完結で観るべき面白いドラマ、ということで観てみた『ナイト・マネジャー』。Amazonプライムビデオでの視聴です。
何と言っても、全8話で終わりというのが良いですね。ダラダラ続くドラマもありますが、結局は毎回毎回同じことの繰り返し。このドラマのように、全6話(日本では8話に編集というのが良いですね。
★★★★☆
作品概要
監督はスサンネ・ビア。原作はジョン・ル・カレの1993年の同名の小説。
主演はトム・ヒドルストンで、その他出演者にはヒュー・ローリー、エリザベス・デビッキほか。
イギリスBBCとアメリカのAMCに共同制作され、Amazonが独占配信。全6話(日本では8話に編集)。原作のジョン・ル・カレは、映画化された『裏切りのサーカス』や『ナイロビの蜂』の原作者として知られ、自身は英国の機密諜報機関M16出身です。スパイ物ドラマですが、派手なアクションシーンはほとんどありませんが、ハラハラ・ドキドキの連続です。
作品の紹介・あらすじ
あらすじ
2011年のエジプト革命のさなか、カイロのネフェルティティ・ホテルでナイト・マネジャーを務めていたジョナサン・パインは、地元の有力者フレディー・ハミドの愛人ソフィーと親しくなり、武器業者リチャード・ローパーの違法な武器取引の情報を英国情報部の国際執行機関に通報する。だがソフィーの内通に関する情報が洩れ、ソフィーは殺される。
4年後、パインはツェルマットのホテルでナイト・マネジャーとして働いていたが、ある日特別な宿泊客としてローパーが訪れる。戦争の残虐さを知り、ソフィーの復讐を望むパインは再び国際執行機関にローパーの情報を渡し、アンジェラ・バーの勧誘を受けてローパーの身近に潜入するスパイとなる。
新たな身分を得たパインは、イギリスで故意に暴力事件を起こして経歴を偽装する。バーとアメリカ国務省のステッドマンは密かに協力してローパーを倒すための計画”リンペット”を実行する。マジョルカでローパーの息子ダニエルの誘拐が仕組まれ、パインは重傷を負いながらダニエルを救い出してローパーに恩を売る。回復したパインは、ローパーの右腕のコーキーに疑われながらもローパーの仲間に加わる。
バーはローパーの弁護士であるアポーストルに接近する。MI6とCIAはリンペット計画を妨害しようとし、バーの上司である英国外務省のメイヒューを脅迫する。パインは、トレードパス社による農業機械輸出に偽装した武器取引の情報をバーに伝える。ローパーは酒癖の悪いコーキーからトレードパス社の経営権を取り上げてパインに任せる。パインはローパーの愛人ジェド・マーシャルと親しくなる。バーは、MI6のドロムグールとCIAのヴァンドンがローパーから賄賂を受け取っていることを知る。だが外務次官はバーに収賄を知られたことをドロムグールに伝え、情報漏洩を疑われたアポーストルが殺される。バーは安全のためにパインを潜入工作から離脱させようとするが、パインは拒否する。
ローパーの一行はトルコに設けた基地で買い手たちに売り物である大量の武器を見せる。英米両政府の上層部はリンペット作戦をつぶそうとする。メイヒューは異動させられ、ステッドマンは帰国させられる。ローパーは情報漏れを疑い、基地にジェドも呼び寄せる。パインは夜中に基地を抜け出してバーに武器運搬の情報を伝え、それを見とがめたコーキーを素手で撲殺する。バーの奔走によりアメリカ軍がトラックの一団をシリア国境で止めて監査するが、積み荷に武器は見つからない。武器密輸の摘発に失敗した国際執行機関は閉鎖され、バーの夫が襲われて重傷を負う。
ローパーの一行はカイロのネフェルティティ・ホテルに移動し、ハミドの立ち合いのもとで武器取引をまとめる。パインから連絡を受けたバーはステッドマンとともにカイロに入り、ジェドが突き止めた金庫の暗証番号を使って武器密輸の証拠となる書類を盗み出す。パインはハミドから、ソフィーが自分をかばったために死んだことを聞き出し、ハミドを殺す。パインは書類を使って積み荷のありかを確認し、武器に爆弾を仕掛けたうえで購入の前金3億ドルをトレードパス社の口座から秘密裏に引き出す。ジェドの裏切りを知ったローパーはジェドを拷問させるが、バーが彼女を救出する。パインは買い手の目の前で輸送トラックごと武器を爆破し、3億ドルが口座から消えたためローパーは前金を返却できない。
窮地に陥ったローパーはドロムグールに助けを求めるが、内通の証拠を突き付けられたドロムグールはローパーからの電話を無視する。ローパーの一味はエジプト警察に逮捕される。警察も買収済みだとせせら笑うローパーだったが、護送の警察車を運転するのは3億ドルも武器も失って激怒した武器購入者で、それに気づいたローパーは自らの破滅を知り狂乱する。ジェドは息子に会うため、パインに見送られながらアメリカに戻る。
Wikipedia(ナイト・マネジャー)
感想・その他
原作は、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレ。彼はかつてイギリスの諜報機関MI6に所属していた人物で、その経験を活かしたリアリティあるスパイ描写に定評があります。冷戦時代の陰鬱な諜報戦や、人間の裏と表を丹念に描く筆致が特徴的で、これまでに多くの作品が映画化・ドラマ化されています。そういえば、以前に観た映画『裏切りのサーカス』も彼の原作でした。あの映画は、登場人物が非常に多く、名前も似通っていて、初見では誰が誰だかよく分からず……結局、理解を深めるために二度観た記憶があります。でも、観れば観るほど味が出てくるタイプの作品で、静かな緊張感に満ちた名作でした。
さて、本題の『ナイト・マネジャー』ですが、これもまた非常に完成度の高いドラマでした。全体を通して緻密な構成とスピーディーな展開があり、最初から最後までまったく飽きさせません。物語は、元兵士で高級ホテルの夜間マネージャーをしていた主人公が、あるきっかけから巨大な武器密売組織に潜入し、命がけの諜報活動に巻き込まれていくというもの。まさに「スパイサスペンス」の王道をいく展開で、スリルと緊張感が途切れることなく続きます。
一歩間違えば命を落とすような危機の連続に、観ているこちらも手に汗握りっぱなし。そして、クライマックスではこれまでの緊張が一気に解放されるような爽快感があり、まさに「観て良かった!」と思える一本でした。ジョン・ル・カレ作品にしては珍しく、ラストがとてもすっきりしている点も好印象です。
さらに注目すべきは、ジェド・マーシャル役を演じたエリザベス・デビッキの存在。とにかく美しい。長身でスラリとした佇まい、どこか憂いを帯びた表情、そして上品さと儚さを併せ持った雰囲気が圧倒的で、画面に映るたびに目を奪われました。個人的には、彼女の顔にうっすらと見える産毛が妙に印象的で、なんとも言えないリアルな魅力を感じました(あれ、あえて剃っていないのかもしれませんね)。男性視聴者なら、彼女を見ているだけでもこのドラマを楽しめるのではないでしょうか。
全6話と比較的短めの構成ですが、その中に詰め込まれた情報量と緊張感、そして感情の機微はとても濃厚です。スパイものが好きな方にはもちろん、骨太な人間ドラマを求めている人にもおすすめできる良作でした。今後、ジョン・ル・カレ原作のドラマや映画をもっと観てみたくなりました。
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