三浦しをん著『神去なあなあ日常』を読んだ感想

2018年3月8日木曜日

小説 読書

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私的評価

三浦しをん著『神去なあなあ日常』を読みました。
映画『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』を観て、面白かったので原作を読んでみました。

著者は、三浦しをん。都会のこと、田舎のこと、仕事のこと…。いろいろと考えさせられますが、それでいてユーモア溢れる内容です。主人公が高校卒業した若者なので、この若者を受け入れる「清一さん」側の小説も読んでみたいと思いました。

★★★☆☆

『神去なあなあ日常』とは

『神去なあなあ日常』(かむさりなあなあにちじょう、The easy life in KAMUSARI )は、三浦しをんによる日本の青春小説。『本とも』にて2007年7月号から2008年7月号まで連載され、加筆修正の後、2009年に徳間書店より刊行された。本屋大賞で第4位。2012年に続編『神去なあなあ夜話』が刊行され、発行部数はシリーズ累計で35万部を超える。
2010年にNHK-FM放送「青春アドベンチャー」でラジオドラマ化、2014年に『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』(ウッジョブ かむさりなあなあにちじょう)のタイトルで染谷将太主演で映画化された。
また、2014年9月12日から14日にかけてアメリカ合衆国・ロサンゼルスで開催されたLA EigaFest 2013では招待作品として上映された。

あらすじ
高校卒業後の進路を決めていなかった平野勇気は、卒業式終了後に担任から就職先を決めておいたと言われ、母親からは恥ずかしいポエムを暴露すると半ば脅される形で家を追い出され、どんな仕事をさせられるのかも分からないまま、三重県の神去村へとやってくる。
列車を乗り継いで着いた先は、見渡す限り山が続く、ケータイの電波も届かない田舎。勇気が就職することになったのは、中村林業株式会社。山仕事に関しては天才的な才能を持つ飯田ヨキの家に居候しながら、ベテラン社員に付いて現場に出た勇気を待っていたのは、広大な山の手入れ。過酷な山仕事に何度も逃げ出そうと試みるもあえなく失敗、ヒルやダニとの戦い、花粉症発症など、辛いことはたくさんあれど、それらを凌駕する雄大な自然に勇気は次第に魅了されていく。さらに勇気は、神去小学校の美人教師・直紀に高望みの恋心を抱き、玉砕しても諦めずに想い続ける。そして、神去村で48年に一度行われる神事オオヤマヅミに、勇気も参加することになる。

Wikipedia(神去なあなあ日常)

著者等紹介
三浦しをん[ミウラ シヲン]
1976年、東京生まれ。2000年、書き下ろし長編小説『格闘する者に○』でデビュー。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞。2012年、『舟を編む』で本屋大賞を受賞。2015年、『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。小説に、『風が強く吹いている』『きみはポラリス』『仏果を得ず』『神去なあなあ日常』『天国旅行』『木暮荘物語』『政と源』など。エッセイに『あやつられ文楽鑑賞』『悶絶スパイラル』『ふむふむ おしえて、お仕事!』『本屋さんで待ちあわせ』など、多数の著書がある。

徳間文庫

感想・その他

実はこの小説、映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜』を先に観てしまっていたため、どうしても登場人物のイメージが映画の俳優陣と重なってしまいます。主人公の勇気はもちろん染谷将太くん、そして親方の清一さんは光石研さん……なのですが、小説で描かれる清一さんの人物像は、映画の落ち着きある優しげな光石さんとはちょっと違って、もっと頑固で威厳のある“山の男”といった印象を受けました。

逆に「キヨ」こと飯田清一の息子、伊藤英明さん演じるあのキャラクターは、まさにピッタリ。豪快で不器用で、でもどこか温かく、山とともに生きる屈強な青年像がそのまま重なります。伊藤英明さんといえば、デビュー当初はどこか線の細い、爽やか系のイメージでしたが、いつの間にか完全に“ワイルド枠”の俳優に進化していて、この作品においてはその変貌が存分に活かされています。泥臭くて汗くさくて、でも妙に魅力的なキヨは、映画の中でも原作でも大きな存在感を放っています。

さて、この物語の舞台である「神去村」で描かれる林業の世界。チェーンソーの唸り、枝打ちのコツ、そして切った木が倒れる瞬間の緊張感……読み進めるほどに、都会暮らしとはまったく異なる「時間の流れ」と「自然との距離感」が心地よく感じられます。自然の厳しさも魅力もひっくるめて、山で生きる人々の暮らしが丁寧に描かれていて、「こんな生活もアリだな」とちょっと憧れを抱いてしまうほどでした。

ただ、その一方で気になったのがヒルやマダニの存在です。小説の中では、登場人物たちが「山にはヒルがいるからな〜」と軽く笑いながら語る程度で、深刻には描かれていません。しかし現実には、最近ニュースでもよく取り上げられるようになったマダニによるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、非常に危険な感染症。自然豊かな地域に住んでいる人たちは、実際にはもっと注意を払っているのではないかと疑問に思いました。もしかすると、山での仕事に長年従事している人たちにとっては、「そこにあるもの」として受け入れているのかもしれません。あるいは、小説という舞台だからこそ、深刻さよりも“なあなあ”な空気感を大切にしたのかもしれません。

都会の喧騒から離れ、自然の中で生きる人々の姿に、癒され、励まされ、笑わされる。そして何より、“なあなあ”という言葉の持つ、力を抜いて、でも誠実に向き合う姿勢に心を打たれました。

林業という一見縁遠い世界を、ここまで面白く、親しみやすく描いてくれた三浦しをんさんの筆力に改めて脱帽。映画も楽しかったですが、やっぱり小説ならではの深みや余韻が心に残ります。しばらくは、木を見るたびに「これは針葉樹か?広葉樹か?」と考えてしまいそうです。



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1964年生まれ。糖尿病を患ってから、自転車と歩くことを趣味にしています。毎日クスリ飲んでます。

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