福山雅治主演、映画『三度目の殺人』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『三度目の殺人』を観ました。
レンタルDVDでの鑑賞です。

率直に言うと、「結局どうなのよ」と白黒はっきりさせたいタイプの人にはあまり向かない作品だと思います。ミステリーのような謎解き要素はほとんどなく、物語は同じようなシーンの繰り返しで進みます。そのため、観ている間にハラハラする展開や衝撃のカタルシスを期待すると、少し肩透かしを食らった感覚になるでしょう。

映画全体の雰囲気はどこか静かで重く、登場人物たちの心理や葛藤を丁寧に描くことに重点が置かれています。そのため、劇的なアクションや派手な展開はほとんどなく、あっけなく物語が終わったような印象を受けました。しかし、その静けさや反復する会話、じわじわと重くのしかかる心理描写こそが、この映画の狙いなのかもしれません。

観終わった後には、モヤモヤ感が半端なく残ります。「なぜこうなったのか」「登場人物は本当に正しかったのか」と考え込んでしまうような、答えの出ない余韻です。このモヤモヤこそ、監督が観客に投げかけたテーマなのかもしれません。結論を急がず、登場人物たちの心理や人間関係をじっくり味わう覚悟がある人には、味わい深い映画と言えるでしょう。

★★★☆☆

作品概要

監督・脚本は是枝裕和。
製作は小川晋一、原田知明、依田巽。
主演は福山雅治、その他出演に広瀬すず、役所広司、満島真之介ほか。

2017年公開の日本映画です。是枝裕和監督のオリジナル脚本による法廷サスペンス映画です。主演は福山雅治。監督は『そして父になる』の是枝裕和で、監督のオリジナル脚本ドラマです。

作品の紹介・あらすじ

解説
第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。死刑が確実視されている殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が、犯人と交流するうちに動機に疑念を抱くようになり、真実を知ろうとするさまを描く。弁護士や検事への取材に加え、作品の設定通りに実施した模擬裁判で出てきたリアルな反応や言動などを脚本に反映。福山ふんする主人公が弁護を担当する殺人犯を、役所広司が演じる。

あらすじ
勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが……。

シネマトゥデイ

感想・その他

役所広司フリークとしては、これは観ないわけにはいかない作品です。やはり彼の存在感は別格で、画面に登場するだけで圧倒されてしまいます。どんな役柄であっても完璧に演じ切るその力量には、ただただ感心させられます。そんな役所広司さんの力強い演技の前では、主役である福山雅治さんでさえ少し気の毒に感じてしまうほどです。福山雅治さんも俳優としての貫禄はありますが、やはり年齢を感じさせる場面もあり、さらに活舌の悪さが気になってしまうことも。セリフが聞き取りにくく感じる瞬間があり、少し残念に思いました。

さて、映画そのものについて。福山雅治演じる弁護士が、法廷で大活躍する痛快なドラマを期待していると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。是枝裕和監督が描きたかったのは、そういうエンターテインメント的な法廷活劇ではありません。監督は「三度目の殺人とは何か」「司法とは何か」というテーマに光を当て、観客に問いかけるような静かで深いドラマを作ろうとしたのでしょう。

法廷のシーンは派手な攻防劇というよりも、心理戦や人間の葛藤に焦点を当てており、観る者に考える余地を残しています。答えをすぐに出すのではなく、モヤモヤとした余韻を残す演出こそ、是枝監督らしい静かで鋭い社会的視点の表現と言えるでしょう。役所広司さんの存在感と、司法というテーマが観終わった後も心に残る作品です。

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