私的評価
海外連続ドラマ『ニュー・ブラッド 新米捜査官の事件ファイル』を観ました。Amazonプライムビデオでの視聴です。
BBSのドラマは面白い作品が多いので好きです。この作品はBBSのドラマにしては珍しくコメディタッチではありますが、脚本がよくとても楽しめる作品でした。このドラマの面白さの一因でもありますが、主人公の2人が捜査官として新人であり、少しどころかかなり頼りなく、我々視聴者をハラハラ・ドキドキさせてくれます。推理力がよくて行動も早い2人ですが、最後の詰めが甘いのです。
最終話の第7話では「次回に続く」的な終わり方でしたが、なんでもこのシリーズで打ち切りとのこと。もっとずっと観たかった作品で、終わってしまうのがとても残念です。
★★★★☆
作品概要
監督はアンソニー・フィリップソン。脚本はアンソニー・ホロヴィッツ。
主演はマーク・ストレパン、ベン・タヴァッソーリ、共演者にはマーク・アディ、アンナ・チャンセラーほか。
全7話、アンソニー・ホロヴィッツによって作成され、2016年にBBC oneのEleventh Hour Filmsによって制作された、イギリスのテレビドラマシリーズです。
作品の紹介・あらすじ
あらすじ見習い刑事となったラッシュと、企業や役人等の不正を追う重大不正捜査局(SFO)の新米捜査官ステファン。ロンドンでキャリアを築く2人の若者は、それぞれ異なるルートで、1つの事件にたどりつき、協力して捜査に挑むが、そこには巨大な陰謀と危険が待ち構え、彼らに襲い掛かってくる…。
第一話
インドで行われた新薬の臨床試験が悲劇を引き起こした。その6年後、ロンドンで臨床試験に参加していた1人の教師が何者かに殺害された。殺人犯を追う見習い刑事ラッシュと、製薬会社の不正を追う重大不正捜査局の新米捜査官ステファンは、異なるルートで1つの事件に辿りつこうとしていた。
第二話
また1人、教師が命を落とした。ラッシュが追う事件は連続殺人事件の様相を呈し始める。一方、製薬業界のパーティーに潜入したステファンは危ない目に遭うが、現場に居合わせたラッシュに助けられる。
第三話
ヘンリーが事件の被疑者として捕まったことに納得できないラッシュと捜査を外されたステファンは、2人で力を合わせ真相解明に乗り出す。だが、その結果キャリア存続の危機に。名誉挽回をかけて真実を追求する新米捜査官コンビに事件裏で暗躍する2人の暗殺者の影が迫る。
第四話
ロンドンに建設される超高層ビル"シミター"の工事現場の爆発でポーランド人作業員が死亡。ラッシュは事故死説に異論を唱え、ステファンはビルをめぐる政治家の汚職疑惑を調べ始める。
第五話
酒を飲んだ揚げ句、見張り中に眠り込んで監視対象者のガリヴァーを殺されてしまうという失態を演じたラッシュとステファン。この一件とその後のケンカが原因で再び現場を追われた2人は、犯人を捕まえ自分たちのキャリアを守ることができるのか?
第六話
アフリカの子供たちを貧困から救うという崇高な目標を掲げる国際慈善団体"アワ・チャイルド"。しかし、その実態に気づいた主任会計士マイケルが自宅で強盗に襲われた。レイラが働く病院に運び込まれたマイケルは手術で一命を取り留めるが、突如容態が急変し不審な死を遂げる。
第七話
慈善団体アワ・チャイルドの主任会計士マイケル・フリーランドが襲われた事件を調べるラッシュは、不審な2人組の存在気づく。一方、正体不明の犯罪者ダニエル・ロルカを追うステファンは、彼の弁護士ジョン・マリクとマイケルのつながりを発見する。
Amazonプライムビデオ
感想・その他
放送していたのは、あのBBC one。イギリスの国営放送であるBBC(英国放送協会)の中でも、もっとも歴史があり、もっとも視聴者に親しまれている主要チャンネルです。BBC oneは、日本で言えばNHK総合テレビにあたる存在で、ニュースやドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなど幅広い番組を放送しています。その歴史は非常に古く、BBC oneは1936年11月2日に正式に放送を開始しました。しかしその前段階として、試験放送は1929年9月30日から始まっていたとのこと。実に驚かされるのは、その“1929年”という年。日本で言えば昭和4年――テレビのイメージなどまったくなかった時代に、イギリスではすでに電波に乗せて映像を送る試みが始まっていたのです。
ちなみにその1929年は、世界史的にも大きな転換点でした。同年10月には、アメリカのニューヨーク株式市場で株価が大暴落。これをきっかけに、世界中を巻き込む「世界恐慌」へと突入します。イギリスも例外ではなく、大きな経済打撃を受け、その後の政治の動揺と相まって、ヨーロッパは第二次世界大戦へと向かっていく流れになります。そんな激動の時代に、すでにテレビ放送が試験的にとはいえ開始されていたという事実は、当時の技術革新と情報発信への意欲の強さを物語っています。
そんな由緒あるBBC oneが制作・放送したのが、この『ニュー・ブラッド』というドラマ。タイトルからはやや硬派な印象を受けるかもしれませんが、実際には新世代の若手捜査官たちが、英国社会の奥底に潜む不正や陰謀に迫っていく、スピード感と緊張感あふれる刑事ドラマです。
物語の中心となるのは、まったく異なる背景を持つふたりの若手捜査官。ひとりはポーランド系移民の青年で、もうひとりはインド系の出自を持つ青年。彼らはそれぞれ異なる部署に属しながらも、共通の事件をきっかけにコンビを組むようになります。この設定が非常に現代イギリス的で、多民族社会のリアルを反映しており、それぞれが背負っている“生きにくさ”や“社会との距離感”がドラマに深みを与えています。
もちろん、ミステリーとしての構成も巧妙で、事件の背景には巨大な企業の不正、官僚の腐敗、政治的陰謀などが絡み、物語は一筋縄ではいきません。回を追うごとに明かされていく真実と、主人公たちの成長――「新米捜査官の事件ファイル」という副題にふさわしい、人間ドラマとしての要素もたっぷりです。
BBC制作のドラマというと、少し地味で重厚というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、『ニュー・ブラッド』はテンポがよく、スタイリッシュな演出も多く、若い視聴者にも受け入れられやすい作りになっています。それでいて、描かれるテーマは深く、社会の歪みや個人の葛藤にもきちんと切り込んでくるところが、さすがBBCのドラマだと感じさせられました。
テレビ放送の黎明期から進化を続けてきたBBCが、現代の社会に投げかける新しい“正義”の物語――。『ニュー・ブラッド』、なかなか見応えのある作品でした。興味のある方は、ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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