ローランド・ムーラー主演、映画『復讐者のメロディー』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『復讐者のメロディー』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

物語の主人公は、刑務所から出てきたばかりの男。過去に何か深い事情を抱えていることがすぐに伝わってきます。寡黙で冷徹に見えるその姿は、一見すると周囲を寄せつけない危険な人物のように映ります。しかし物語が進むにつれ、実際には心根の優しい、筋の通った人間であることがわかってきます。彼はただ真っ当に生きようとしているだけなのに、短気で感情を抑えきれない性格が災いし、望まぬ事件に引き込まれてしまうのです。まるで運命に翻弄される星の下に生まれてきたかのような、その哀しさが観客の胸に残ります。

全体として映画は派手なアクションや大きな展開を強調するのではなく、淡々とした調子で進んでいきます。しかし、その静けさの裏側に常に緊張感が流れており、不思議と飽きることがありません。カメラワークや音楽も控えめで、むしろその余白が主人公の孤独や葛藤を際立たせていました。そして迎えるラストは、過剰な盛り上げに頼ることなく、静かに、しかし確かに心に響く余韻を残してくれます。

一見シンプルな復讐劇のようでありながら、人間の弱さや優しさを丁寧に描いた佳作。じんわりと後を引く、記憶に残る作品でした。

★★★★☆

作品概要

監督・脚本はジェレミー・グエズ。
脚本はカール・ガイダシェク。
原作はダニー・M・マーティン
出演はローランド・ムーラー、フィーラ・バーテンス、ローラ・ル・ランほか。

2018年制作のベルギーとフランスのサスペンス映画です。監督は『15ミニッツ・ウォー』の脚本を務めたジェレミー・グエズ。主演は『ヒトラーの忘れもの』でラスムスン軍曹を演じたローランド・ムーラーです。

作品の紹介・あらすじ

解説
仮釈放で刑務所を出所した男性は安ホテルで暮らすようになり、女性主人やその若い娘と親しくなるが、悲劇が……。
仮釈放中の男性は仮宿にした安ホテルの女性主人やその若い娘と交流するようになるが、娘を見舞った事件をきっかけに意外な運命へ。前半はそんな3人の交流や主人公の社会復帰を描くが、中盤からは一気にアクションの見せ場が増えてスリルが高まる構成がユニーク。本作が初長編監督作品となったのは、「イヴ・サンローラン(2014)」の脚本に協力したJ・グエズ。犯罪小説の作家でもあり、シンプルなストーリーをリアルかつ的確に盛り上げた。ヨーロッパの各国からキャストが集結。

あらすじ
仮釈放で刑務所を出所した男性は安ホテルで暮らすようになり、女性主人やその若い娘と親しくなるが、悲劇が……。ベルギーとフランスの合作である犯罪アクションスリラー。
刑務所を仮出所したダニーは、女性主人ローレンスが営んでいる安ホテルで1カ月暮らすことに。ダニーはローレンスから壁の補修の仕事をもらうとともに近所の中華料理店でアルバイトをするように。ローレンスの娘クララは母親から、刑務所にいる父親に若い恋人ができて出所しても家に戻らないと知らされてショックを受ける。そんなクララはドラッグの売人にレイプされてしまう。直後にクララを救ったダニーは復讐の念を燃やしだす。

WOWOW

感想・その他

原題は「A Bluebird in My Heart」。直訳すれば「心の中の青い鳥」となり、寓話的な響きを持っています。おそらく、主人公クララが自分の幸せを探し求める姿を暗示しているのでしょう。そう考えると、邦題もそのまま『ブルーバード・イン・マイ・ハート』で十分伝わったのではないかと思います。配給会社が付けた邦題『復讐者のメロディー』は、いかにもアクション色を強調しすぎていて、本来の物語の余韻や詩的なニュアンスがやや削がれてしまった印象を受けます。

主演を務めるローランド・ムーラーは、デンマーク映画『ヒトラーの忘れもの』でラスムスン軍曹を演じ、その静かで誠実な演技で高い評価を得ました。彼が演じるキャラクターは、表面的には寡黙で不器用ながらも、奥底には人間味や優しさを秘めていることが多く、本作でもその魅力が存分に活かされています。さらに、ハリウッド大作『スカイスクレイパー』ではドウェイン・ジョンソンと対峙する悪役を演じ、国際的な舞台でも存在感を放っていました。こうして振り返ると、彼の役者としての幅広さと確かな演技力が、本作においても観客を物語へと引き込む大きな要素となっているのは間違いありません。

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