大沢たかお主演、連続ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』のあ らすじ・感想など


私的評価

Amazon Originalドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』を観ました。
Amazonプライムビデオでの鑑賞です。

もともと漫画版の『沈黙の艦隊』を読んでいたので物語の大枠は知っていたのですが、それでも映像化された本作は新鮮で、とても見応えのある仕上がりでした。物語全体に張り詰めたような緊張感があり、手に汗握る展開が続きます。全8話を観終えた時には、まるで一気に駆け抜けてしまったかのような感覚で、あっという間に時間が過ぎていきました。

さすがAmazon制作ということもあり、映像のクオリティは非常に高水準。潜水艦内の重苦しい空気感や、艦の巨大さを感じさせる迫力あるカット、そして海上での緊張した駆け引き――どれもが臨場感たっぷりに描かれていました。特に、メイキング映像を覗くと自衛隊からの協力が厚かったことが伺え、艦内での隊員たちの動きや所作がリアルに再現されていることに納得します。役者陣もその所作を自然に演じており、軍事ドラマとしての説得力を一層高めていました。

また、単なる軍事アクションにとどまらず、国際政治や日本の立場といったテーマが織り込まれている点も興味深く、娯楽性と社会性が絶妙に両立していると感じました。重厚でありながらも観客を引きつける脚本のテンポの良さは、原作を知っている私でさえ先が気になって仕方がなかったほどです。

題名に「シーズン1」とあるように、今後さらなる展開が描かれることを期待せずにはいられません。続編でどのようなドラマが繰り広げられるのか、今から待ち遠しく思える作品でした。

★★★★☆

作品概要

監督は吉野耕平、中村哲平、蔵方政俊、岸塚祐季。
脚本は高井光、鎌田哲生。
原作はかわぐちかいじの漫画『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」所載)。
製作はAmazonスタジオ。
主演は大沢たかお、その他出演者に玉木宏、上戸彩、江口洋介、水川あさみ、笹野高史、夏川結衣、ユースケ・サンタマリア、橋爪功、田中要次、中村蒼ほか。

1988年から1996年まで連載された、累計発行部数3200万部のヒットコミック『沈黙の艦隊』が原作です。大沢たかおが主演した2023年秋公開の映画『沈黙の艦隊』に、劇場未公開シーンをふんだんに加え、その後の東京湾で勃発する大海戦までを描いた全8話を完全版連続ドラマです。

作品の紹介・あらすじ

解説
かわぐちかいじのコミック『沈黙の艦隊』を実写化したポリティカルアクション。日本とアメリカが極秘開発した原子力潜水艦が、所属するアメリカ艦隊の指揮下を離れて姿を消す。メガホンを取るのは『ハケンアニメ!』などの吉野耕平。『AI崩壊』などの大沢たかお、『極主夫道』シリーズなどの玉木宏、『昼顔』などの上戸彩のほか、ユースケ・サンタマリア、夏川結衣、江口洋介らが出演する。

あらすじ
海上自衛隊の潜水艦がアメリカ軍の原潜と衝突し、艦長・海江田四郎(大沢たかお)ら全乗員76名が死亡したと報じられる。だが乗員は生存しており、事故は彼らを日米極秘開発の原潜シーバットに乗務させるための偽装工作だった。シーバット艦長に任命された海江田は、シーバットに核ミサイルを搭載し、潜航中に許可なくアメリカ艦隊の指揮下から離脱して姿を消す。アメリカがシーバット撃沈を決める中、海自のディーゼル艦たつなみの艦長・深町洋(玉木宏)はアメリカより先にシーバットを捕獲しようと動く。

シネマトゥデイ

感想・その他

原作漫画の『沈黙の艦隊』については、実はかつて読んでいたことがあります。ただし、どこまで読んだかがどうにも記憶にありません。作品の序盤、特に“やまと”が姿を消し、国家として独立を宣言するあたりまでは鮮明に覚えているのですが、その後の展開がどうにも曖昧。おそらく途中までしか読んでいなかったのだと思います。

というのも、実際のところ私はかわぐちかいじ氏の漫画が好きで、興味を持って読み始めるのですが、どういうわけか完走することがほとんどありません。『沈黙の艦隊』しかり、『ジパング』、『太陽の黙示録』しかり、すべて最初の数巻は自宅にあります。にもかかわらず、全巻揃えて読破した作品は一つもないという有様です。

それでもかわぐち作品には惹きつけられる何かがあります。政治、軍事、外交といった一見難解で地味にも思えるテーマを、圧倒的なリアリズムと緊張感で描ききる筆致。中盤以降の展開に頭が追いつかなくなりつつも、やっぱり惹かれてしまう。『空母いぶき』などは、近所の貸本屋で何巻かずつ借りて読み進めていたのですが、その貸本屋もとうとう閉店してしまい、6巻あたりで止まったままです。

今回ドラマを観たのをきっかけに、「そういえば漫画は最後どう終わったんだっけ?」と気になり、Wikipediaで『沈黙の艦隊』の最終話のあらすじを確認してみました。そしてその瞬間、ようやく確信しました。「あ、やっぱり最後まで読んでなかったな」と。

というのも、その結末があまりに衝撃的だったからです。ネタバレになるので細かくは書きませんが、あれだけの理想と信念を抱いて行動していた主人公・海江田四郎の最後が、まさかそんなかたちで描かれていたとは…。虚を突かれるというより、胸に重くのしかかるような衝撃でした。おそらく当時、最後まで読んでいたら、私はもっと深くこの作品の意味について考え込んでいたに違いありません。

ドラマ版は、原作の流れを踏襲しながらも、現代的な設定や視点をうまく取り入れており、今の時代にふさわしい形で再構築されている印象を受けました。特に大沢たかお演じる海江田は、知性と狂気、理想と孤独が共存する人物像を巧みに表現しており、見応えがありました。限られた話数の中で、東京湾を舞台にした“海上の頭脳戦”をここまで臨場感たっぷりに描けるとは思っていなかったので、かなり満足度の高い作品でした。

原作の結末を知った今だからこそ、続くシーズン2でドラマがどう描いていくのか、期待半分、覚悟半分で待っている自分がいます。原作に触れていたからこその感慨もあれば、実写でこそ浮き彫りになるテーマの重みもあり、この作品はまさに“読む”と“観る”の両方で味わうべきだと、あらためて思いました。

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