私的評価
ジャン・レノ主演の映画『バレッツ』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
全体として、大きなハズレもなく、安心して楽しめるジャン・レノ作品という印象です。彼の演技には独特の落ち着きがあり、アメリカの典型的なアクション映画とはまた違った趣があります。派手さだけではなく、緊張感や心理的駆け引きが感じられるため、観ていて引き込まれます。
映画の雰囲気は落ち着いていますが、アクションシーンは決して手抜きではありません。銃撃戦や追跡劇、格闘シーンなど、見応えのある場面が随所に配置されており、スリルと緊張感が持続します。特にラストに登場する有刺鉄線のシーンは、映像としては迫力十分ですが、少しクドさを感じる人も多いかもしれません。
それでも、ジャン・レノの安定した演技と、ヨーロッパ映画ならではの落ち着いた演出、適度に練られたアクションのバランスが魅力的な作品です。派手な演出や大袈裟なヒーローアクションを求める人には物足りないかもしれませんが、落ち着いたテンポの中でアクションとサスペンスを楽しみたい人にはぴったりの映画だと思います。
★★★☆☆
作品概要
監督・脚本はリシャール・ベリ。製作はリュック・ベッソン、ピエランジュ・ル・ポギャム。
製作総指揮はディディエ・オアロ。
主演はジャン・レノ、その他出演者にカド・メラッド、ジャン=ピエール・ダルッサンほか。
2010年制作、フランスのアクション映画です。『レオン』のジャン・レノが、愛する家族を守るために戦う主人公を演じるバイオレンス・アクションです。かつてマフィアのボスだったシャルリは、今では家族とともに穏やかな生活を送っていたが、ある日、何者かによって銃撃され…。
作品の紹介・あらすじ
解説
マルセイユの街を支配するマフィアのボスだった男が銃で撃たれるも一命を取り留め、愛する者たちを守るために立ち向かっていくバイオレンス・アクション。22発の銃弾を受けながらも奇跡的に生き残ったマフィアの実話を基に、『レオン』のジャン・レノが円熟味を増した存在感で裏社会の男を熱演する。監督は、『ぼくセザール 10歳半 1m39cm』のリシャール・ベリ。逃れられない因果に苦しむ主人公の運命と決断が深い感動を呼ぶ。
あらすじ
愛する家族と平穏な生活を送っているシャルリ(ジャン・レノ)は何者かに銃撃され、全身に22発の銃弾を撃ち込まれるが奇跡的に命だけは助かる。シャルリはマフィアのボスという過去を持ち、彼を襲ったのは古くからの友人ザッキアだった。シャルリは報復をけしかける仲間たちを止めるが、その矢先に息子が誘拐されてしまう。
シネマトゥデイ
感想・その他
映画の題名『バレッツ』とは、おそらく「弾丸」を意味しているのでしょう。冒頭から、ジャン・レノ演じる元マフィアのボスは、なんと22発もの“弾丸”を浴びることになります。劇中では8人の襲撃者が登場しますが、そのうち1人は意図的に致命傷を避けて撃っていたことが最後に明らかになります。では、残りの7人はいったい何をしていたのでしょうか。22発も撃たれれば、少なくとも1発くらいは太い血管や内臓に命中してもおかしくありませんし、頭を貫通する可能性だって十分にありそうです。それにもかかわらず主人公は立ち上がり、物語は容赦なく進んでいきます。一方で、復讐に燃えるジャン・レノは、冷静かつ的確に標的を仕留める戦術を実行します。まず頭部を撃ち、その後心臓を撃ち抜くという、徹底的で冷酷な手法です。殺しの場面は容赦なく、緊張感とスリルに満ちていますが、彼の人間性はそれだけではありません。家族や友人には深い愛情を注ぎ、時には優しさや思いやりを見せます。この映画の根底にあるテーマは、まさにその「愛」と「忠誠心」にあるのかもしれません。
また、本作には主要な女性キャラクターがほとんど登場せず、登場人物は男ばかりです。男同士の駆け引きや信頼関係、復讐心や忠義がストレートに描かれるため、派手な恋愛や感情ドラマがなくても十分に物語に引き込まれます。こうした男性中心の映画も、時には新鮮で悪くないですね。
全体として、『バレッツ』はスリルと緊張感が満載のアクション映画でありながら、主人公の人間性や愛情といった感情面も巧みに描かれており、ただの銃撃戦映画には収まらない魅力を持った作品でした。
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