吉岡秀隆主演、連続ドラマW『トクソウ』のあらすじ・感想など

私的評価

WOWOWの連続ドラマ『トクソウ』を観ました。
全5話、Amazonプライムビデオでの視聴です。

全体を通して、続編が観たくなるような引きの強いドラマでした。特にラストの終わり方は私の好みに合っており、余韻が長く残る締め方で、物語に対する満足感を感じさせてくれました。緊張感のある展開や、特捜部の内部の駆け引きなども見応えがあり、最後まで飽きずに楽しめました。

ただ、主演の吉岡秀隆さんについては、この役には少し合っていなかったのではないかと感じました。吉岡さんの演技は確かに上手なのですが、ぼそぼそとした話し方のため、セリフの音量を数段上げないと何を言っているのか聞き取りにくく、少しストレスを感じました。役柄としてもっと存在感や迫力が必要だったのではないかと思います。

また、三浦友和さんが演じる特捜部副部長・鬼塚の設定についても、個人的にはやや残念に感じました。鬼塚が悪い政治家を目の敵にする理由として、「故郷がダムに沈められた」という背景が描かれていますが、少し子供じみた設定に感じられ、物語のリアリティや重厚感を少し削いでしまっている印象です。それでも三浦友和さんの演技力や存在感は流石で、キャラクターとしての説得力は十分でした。

総じて、『トクソウ』は魅力的なキャストと緊張感あるストーリーが楽しめるドラマであり、ラストの余韻や特捜部の人間模様を含め、観終わった後も考えさせられる作品でした。

★★★★☆

作品概要

原作は由良秀之の「司法記者」(講談社刊)。
監督は河合勇人。
脚本は鈴木智。
主演は吉岡秀隆、共演には三浦友和、真飛聖、吉沢悠、でんでんほか。

2014年秋にWOWOWで放送されました。

作品の紹介・あらすじ

解説
これまで秘密のベールに包まれていた捜査機関「特捜検察」を描く社会派サスペンス。舞台は日本最強の捜査機関といわれる特捜検察。1976年のロッキード事件、1988年のリクルート事件といった大規模な汚職事件を摘発し、世界にも類がないほど権力が集中する組織といわれているが、近年、数々の冤罪事件や証拠改ざん、虚偽報告書作成など、信じがたい事件が次々と明らかになっている。
検察組織の論理、検事の葛藤、検察とメディアの関係など、決して公にされることのなかった検察庁内部の知られざる実態が、圧倒的な臨場感と迫力で描かれた、まったく新しい「検察小説」を映像化。権力闘争に明け暮れる特捜部、そして日本特有の構造である司法記者クラブの中で、それぞれが果たす“正義”や“使命”とは何なのか?今、日本の検察とマスコミの腐敗した「偽りの正義」が、暴走していく。
独自の捜査と信念の下、正義を貫いていく特捜検事役に吉岡秀隆、圧倒的なカリスマ性と統率力で特捜部の象徴として君臨する副部長役に三浦友和、そして特捜部に日夜取材攻撃を仕掛ける司法記者役を元宝塚花組トップスターの真飛聖が演じる。監督にはTVドラマ「鈴木先生」('11)で第49回ギャラクシー賞優秀賞を受賞し高い評価を得ている河合勇人・滝本憲吾。脚本には映画『金融腐食列島〔呪縛〕』('99)で日本アカデミー賞優秀脚本賞、映画『誰も守ってくれない』('09)でモントリオール世界映画祭最優秀脚本賞を受賞した鈴木智と、豪華キャスト・スタッフが集結。
地検特捜部によるゼネコン汚職事件の捜査と、やがて発生する不可解な殺人事件、2つの事件が交わるとき、日本の司法の闇が浮かび上がる―。

あらすじ
最強の捜査機関といわれる特捜検察。地検から異動となった検事・織田俊哉(吉岡秀隆)は、特捜部副部長・鬼塚剛(三浦友和)が指揮する直告班に配属となり、大日本建設と県知事の贈収賄事件を担当することに。大日本建設の一斉捜査で贈賄を示唆するメモを発見した鬼塚は、決定的な証拠がないまま、事件のシナリオを作ろうとする。一方、鬼塚の捜査に疑問を抱く織田は独自捜査から、ある下請け業者にたどり着くが……。

連続ドラマW

感想・その他

やり手の司法記者役として、元宝塚花組の真飛聖さんが出演しています。「まとぶせい」さんと読むそうですね。顔はどこかで見たことがあるような、ないような……。もちろん、名前については全く知りませんでした。しかし、ドラマを観ているうちに、その存在感と演技力に引き込まれ、気がつけばすっかり魅力にとりつかれていました。華やかさの中に落ち着きと芯の強さがあり、天海祐希さんほどの圧倒的存在感ではないにせよ、真矢ミキさんくらいの活躍を期待したくなる女優さんです。

原作の由良秀之さんは、東大卒で元・東京地検特捜部という経歴の持ち主です。そのため、ドラマ内で描かれる「決定的な証拠がないまま、事件のシナリオを作ろうとする」という描写も、単なるフィクションではない可能性があります。現実の特捜部の手法や、捜査の裏側をリアルに知っているからこそ、リアリティのあるシナリオが生まれているのでしょう。

もちろん、私自身が特捜部に目をつけられることはまずないと思います。しかし、警察に誤解される可能性はゼロではありません。たとえば痴漢冤罪のように、無実なのに犯人に仕立て上げられる——考えただけでも背筋が寒くなる恐ろしい状況です。こうした描写を通じて、ドラマは視聴者に社会の怖さや権力の危うさをも伝えており、単なるエンタメとしてだけでなく、現実の問題意識も喚起してくれる作品だと感じました。

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