ビル・ブライソン著『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験―北米アパラチ ア自然歩道を行く』を読んだ感想

私的評価

ビル・ブライソン著『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験―北米アパラチア自然歩道を行く』を読みました。きっかけは、ロバート・レッドフォード主演の映画『ロング・トレイル!』を観たこと。映画の原作に興味を持ち、図書館で借りて読むことにしました。

この本は全278ページ、上下2段組みで文字もやや小さく、なかなか読み応えがあります。平日の昼休み30分という限られた時間で少しずつ読み進めたため、読み終えるまでに3週間ほどかかりました。幸い、他に予約が入っていなかったので貸出延長もでき、じっくり楽しむことができました。

内容は、北米アパラチア自然歩道を旅する紀行文でありながら、通り過ぎる土地ごとにまつわる歴史や自然、文化についても触れられています。ブライソン特有のユーモアあふれる文体のおかげで、知識が自然と頭に入り、読んでいて飽きることがありません。

★★★☆☆

『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験―北米アパラチア自然歩道を行く』とは

内容説明
アパラチア自然歩道は、アメリカ東部のジョージア州からメイン州まで3500キロに渡る、連続した自然歩道としては世界最長のものである。途中、グレート・スモーキー・マウンテンズ、シェナンドア国立公園などアメリカ有数の景勝地を通るが、その険しさゆえに全行程を踏破する人間は年間300人に満たない。勇躍して出発したブライソンと、モーテルでX‐ファイルを見るのが唯一の楽しみというカッツの前途に待ちうけていたものは…。

(目次)
大装備に心はずむがゲンナリ感も
クマ来襲の本を読んで相棒を募る
由緒ある自然歩道への苦難の出発
森という特異な閉鎖空間の孤独感
変わった女性エレンとのくされ縁
春の大雪のなかで避難施設を確保
雨にたたられたハイカーとの交流
ガトリングバーグで“短絡”を決断
トレイルの変遷と全踏破の珍記録
人災・天災で激減・絶滅した植物群〔ほか〕

紀伊國屋書店

著者等紹介
ビル・ブライソン
ビル・ブライソン(William "Bill" McGuire Bryson、1951年12月8日 - )は、アメリカ合衆国アイオワ州デモイン出身のノンフィクション作家、随筆家。ユーモアたっぷりの旅行エッセーや、言語、科学に関する著作で有名。

Wikipedia

感想・その他

この本を題材とした映画『ロング・トレイル!』を観たのも、もともと私がトレイル歩きを趣味にしているからです。…とはいえ、そんなに本格的なトレッカーというわけではありません。全国の有名なトレイルを歩き尽くしたわけでもなく、近所の低山で軽くトレッキングをしたり、街中をのんびりウォーキングしたりする程度です。それでも、時折まとまった時間を取って熊野古道を歩いたり、山陰海岸ジオパークトレイルを訪れたりと、自然の中をゆっくり歩く時間は私にとってかけがえのない楽しみです。

特に印象に残っているのは山陰海岸ジオパークトレイル。私が歩いたのは当時開通していた区間の約40km、コース4からコース10までの区間を二日かけて踏破しました。コースは整備されているとはいえ、場所によっては道が分かりづらく、何度か迷ってしまったこともあります。さらに、イノシシの足跡を見つけてはドキッとしたり、「熊に注意」の看板を目にしては周囲の気配に神経を尖らせたりと、スリルもありました。それでも、晩秋の澄んだ空気と海岸線の美しい眺め、紅葉の山並みを楽しみながら歩いた時間はとても充実していました。現在は、このトレイルはさらに整備が進み、鳥取県鳥取市青谷町の青谷駅から京都府京丹後市丹後町の経ヶ岬まで、全長230kmが歩けるそうです。いつか改めて全区間を歩く計画を立てたい、と心が動かされます。

もちろん、日本にはアメリカのアパラチアン・トレイルのように全長3,500kmを超える大規模なトレイルは存在しません。しかし、東海自然歩道なら総延長約1,734km、11都府県にまたがる長大なルートがあります。現状、この道がどの程度整備されているのかは把握していませんが、キャンプ場や宿泊施設をつなぐ形で一気に歩き通せるようなルートがあれば、ぜひ挑戦してみたいと思います。体力と時間が許す限り、まだ自分の足で歩けるうちに、このスケールの大きな旅を実現してみたいものです。

コメント